生まれ変わりの条件、見た目などの好みを聞かれて答えるルナ。
「ボクはジェンダー的にずっと苦しんだからその問題に悩みたくない」
「私は膨大な世界への転生を司っておるが故、
「え、と確か社会的な性別?…… だから当人が女でも男として生きたければ男だと言える社会? だっけ? だから結構〈逆の性別〉を指すことも多いってカンジ……かな」
「なら簡単に言えば『ソナタなりのジェンダー』とは〈逆の性別〉ということか」
――― これは極めて重要な質問であった。
「う~ん、そんなとこかな? よく知らんけど。ま、とにかくカワイイことが正義。 だからボクは見た目と性別は『女装男子風女子』がいいんだよ」
「はい? なんだって?」
女装男子風女子。また訳の分からぬ事を言い始めるルナに呆れ顔の神官。
「だから~、『女装男子風、の女子』だよ! 前もそうだったし、見た目は結構気に入ってた……のかな……でもあれじゃなきゃダメなんだ」
急に深刻な顔になるルナ。
「普段は可愛い女子で……あとそう、明るい元気系女子になるんだった!
そして―――いざ、何かを賭けてでも抗うべき時、『本物の男』の様に強くならないと……」
「囚われとるの、前世の事に。まあ、あそこまで酷い人生なら仕方ないがの。……なら最初から可愛い女装男子でどうじゃ」
「ああ、ルカがそうだったな……でもカワイイのは良いけど普段男になりたい訳じゃ……」
「……女子が好きなら結ばれれば深い仲にもなれるぞよ!」
う、捨て難い……確かにルカみたいになれたらって……でもあの子はモテなかったって言ってた様な……だけどカワイイ女子と付き合えて幸せになれるなら……ン、待てよ、
「いや、でも自分もカワイイ女子になりたい~!……チョット考えさせて」
「では女子が良いなら『カワイイ男装女子』ではダメなのか?」
「男装でしょ? それだけで女子のカワイさ半減。男っぽいって事なんだよ?」
「いや、歌劇団とかの中性的イケメン美形ならどうじゃ? さぞかし女子にモテるぞよ」
「モテる! 捨てがたい!……あ、でもカワイくなきやダメ~! 可愛いこそ絶対!」
「なら最初から単なるカワイイ女子で良いではないか」
「ダメだ……それじゃダメだったんだよ! お兄ちゃんを……守れなかった……。
結局……女の子じゃ守られる存在になっちゃう……
だからボクはお兄ちゃんみたいに強い男の人になりたい……」
突如失意に満ちた顔になるルナ。引きずる過去に囚われた持論をぶつける。
「モー、どっちにしたいんじゃ!」
「ンー……、必要なときだけ強い男、後は可愛い女子がいい」
呆れて肩をすくめる老聖者。眉間に寄るシワ。
「だから前世では鍛えて強くなったんだ。でもカワイさの追求も捨てなかった。だけどどうしても美少女なだけじゃ女を越えられない! だから『女装男子風女子』!」
「ウ~ム、女子にモテたいのじゃろ? 結局男子ではないと意識された瞬間にガッカリされて、モテないんじゃないかのう。告白しても『友達としてなら』って言われるのがオチじゃろ」
「メチャクチャ言われてきた! え、良く分かるね ?! オジサン恋愛の達人?」
「フォッフォッ。生物学的に当然のこと。それじゃ永遠に浮かばれんぞよ」
「なら相手の望む様に都度性転換出来たら……それなら最強、ってボク、バカ?」
「いや、任意切り替え型なら可能じゃぞ。なんなら両性具有とかも選べるぞよ」
「ククッ! マジィ~?! 言ってみるもんだなっ♪」
やや呆れ顔の神官。だがすぐに神妙な面持ちとなり、
「じゃがこの世界ではそれらは巨大なリスクがある。そう、そこでは両性はエラく重要な存在、『絶対的強者』 に命を狙われる。推奨はせぬ」
「両性は危険? 狙われる?!」
「そうじゃ。ただし似て非なる、『一定条件での自動切替え型』なら大丈夫じゃろ。例えば〈相手を物凄~く意識した瞬間〉とか、つまりソナタの『想いがガッツリ溢れた瞬間』をトリガーにして勝手に切り替わるというヤツじゃ」
「想いが溢れた瞬間……切り替わる……」
「いかにも」
「してどんな切替条件とするか?」
「ズバリ、ボクが女と分かって離れてく人の時なんかに性別だけ男になれるとか!」
「もう何だか……早くこの話は終わらせよう、要するにツガイとなれる様、自動的に意識した相手のジェンダー〈逆の性別〉になりたいのじゃな?」
「ん? 意識した相手のジェンダー(社会的性別)じゃダメだよ! 意識した相手がボクに望むジェンダー(社会的な性別)になりたいんだよ!」
「ほう、相手がソナタに望むジェンダー〈逆の性別〉にしたいのか ?! 変わっとるの~。わかった。因みに一度決めたらもう変えられないぞ。良いな!」
ボタンの掛け違いはこうして発生するもの。
ワオ!……スゴいのを手に入れた! このダブルのジェンダーなら理解者を求めてさまよう事も無くなる!―――ああ、転生って良いかも! じゃ、行ってきマ~ス!
はやる気持ちを隠そうともせず、勇み足となるルナだった。