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第13話 ある少女と出逢えば生死に関わると





「今治癒してやるっ! (たしか最大級の治癒魔法を授かってるハズッ!)」


 何でもいい、治ってくれ、と被弾した父と兄の創部へと治癒魔法を念じながら二人へ同時に両手をかざして魔威を込めると、掌から莫大な量の眩まばゆい光芒が



《ブワワァァァァァァァ―――――――ッッッッ》



 っと大放出、その間約2秒。アッという間に治り、服まで元に修復されて意識を取り戻す親子。

 血糊さえ体に還る完璧な治癒・修復力。むしろ自分の手を不思議そうに見つめるルナ。


 我ながらその力に驚嘆と得心をしつつ、


『さっきの男性化は何?! バグ? 何であのタイミングで?! 』


 と不思議がるも、すぐ傍らでアングリと硬直している妹に気付き、軽く笑んで優しく声をかけた。


「良かったね。治ったよ。もう大丈夫だからね」

「お父さん! お兄ちゃん !!」


 激しく喜んで二人に抱き付く妹。 抱き返す兄と父。自分の兄を思い瞳が潤むルナ。


「おい皆! ついさっき神の子召喚された正にそのお方だゾ――ッ」



『ウォ――!』



「助けて頂いて有難うございます! この命、あなたに捧げます! 何なりと!」


 頭を下げる父と少年。その少年の頭に優しく手を置き、身を屈めて覗き込むルナ。


「お兄ちゃんかい? 妹の為によく頑張ったね。でも死ぬのは残された人も辛いんだよ。だからこれからは死なずに守れるように努力しよ。トレーニングなら付き合うよ!」


 兄の死後、武道に邁進まいしんした自分を思い浮かべるルナ。そして妹に優しく目を移すと、


「それから妹ちゃん! これからは守られるだけじゃなく、お兄ちゃんを守れるようにね」


 一般人に……ボクは何を無理なことを……それでもあの人を……守りたかった……


「うん!ありがとう! お姉ちゃん!」


「さあ怪我人の状況を急いで教えて! 酷い順に治すから。死んだら戻せないからねっ」


「こっち、瀕死です!」 『よっしゃ』

「こっちも今すぐ!」 『ハイハイ!……』


 超速で飛び回るそれはほぼ瞬間移動。早々に治癒を終え、安堵と歓喜に包まれてゆく。


「あの状況から全員助かった……ヤッパリあなたは凄い! 神の子だ、救世主バンザ~イ」


「ルナ様ぁ、バンザ――イ! ぜひそのお力でこの地上を安全な世界に戻して下さい!」


「う、うん、(こんなに喜ばれて役に立てるなんて!)これからも頑張るね!」






 その歓迎ム―ドで囲う人々を押し分け入る村の長老らしき人物が近付き口を開いた。


「おお、そうじゃ、大事な事を忘れておった!」


 一段落した所で村長が一つ重要な情報を思い出しルナへと伝える。


「あれは転生の前日、ミニスカートの軍服を着たそれはそれは美しい妖精エルフが現れて、ルナ様を大事に扱うようにと」


「ミニスカ軍服妖精エルフ~?! ククッ!何それ~!」


「そしてできる限り活躍の場を与えて忙しくして、とある少女と出逢わせない様にと。……裾で巻いた栗色の髪の少女と」


「え……で、出逢うとどうなるの?」


「生死に関わる何か最悪な事になると……『最終手段』を取らざるを得なくなる、と予言を残しておかれました。


 そう言う訳でルナ様は家や食糧等、栄誉市民として優遇される代わり、明日からはこの辺一帯を警護する任務、そして敵の拠点潰し等の任に就いて頂きます」





 こうして捕虜達から聞き出した密売組織のアジト数箇所を地図に記す村人。ルナも複製を預かり、転生した事を改めて噛み締め直していた。


 新たな使命を胸に、あの人の面影を天に映して仰ぎ見る。



 お兄ちゃん……ボク、ここでやる事になった。今度こそ自慢の妹になってみせるよ……




  ***




 栄誉市民として特別永住権と住居を与えられたルナ。


 村『ラクシア』から依頼され、その見回り警護から任務を開始。しかしあの一件以来の数日間、村は至って平和だった。


「ルナ様、私達はこれから隣国『モイラ』へと買い出しに行くところですが、この世界の案内と言う事で護衛も兼ねてになりますがご一緒願えますか?


 実は他国ではもっと被害が顕著に増えていて危険がいっぱいなのです。とくに最近は何とも酷くて」


 召喚された村から国境は比較的近かった。


 このラクシア村は大陸の極東に位置する『アストゥロ』国の更に辺境の地の為、物流に難があり定期便を駆り出す。


 一行は入国の手続きを済ませ、その首都へと向かう。買い出しのため再び馬車を利用したが、街では古風なデザインのバッテリーカーが主流だった。

 意外と電気が発展している世界らしい。


「キレイな街……それに結構カワイイ子も居る様だし! フフ……これは楽しみだな……」


 失った理解者を無意識に求めるも、鬱屈した過去と無理に作った元気女子ぶりとで常に斜め上へ行ってしまうポンコツのルナ。


 この世界での別の遣り甲斐―――煉獄界での神官との妙な悶着もんちゃくを思い出していた。



 そう、転生で選ぶ 『性別』 についてのドタバタ劇を……



 ボクはモテなかった思春期をやり直したいから14才からの転送型にしたいな……あ、その世界はカワイイ女子とかいるの? あと転送型の場合、言葉とかは?」

 転生直前、煉獄界での取り決めの中で―――




 * * *




 「では次の選択、転生先へは召喚村へ好きな年齢での『転送出現型フォアード』とするか、希望する家庭へ赤子として出生する『輪廻転生型リ・バ―ス』とするかじゃ」


「そうだな……

 神官はあご髭に手をやり得意げに言う。色んな女子がいて、言葉は脳内に言語パックがインストールされるから心配ないと。



 そして見た目と性別の好みを聞いてきた。



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