侵略者から守る……あの人がしてくれた事に意味を示せるなら……
「やりますっ!」
「うむ。因みに場所は前世とは異なる云わば
そうして神官は転生先への準備の事、チート能力の事等の説明をしていった。
――――だが続く様々なやり取りは神官の想像の斜め上を行き……
何とか定まると、ヤレヤレと神官が立ち上がる。
「はぁ……こんな『ダブルジェンダー』を選ぶ者など初めてじゃわい。状況に応じて男女入れ替え等とは……全く」
「有り難う! 想いが溢れた時にチェンジ、でいいんダヨネ ?!」
無邪気に特殊能力ゲットで嬉々とするルナを横目に思わず溜め息を洩らしながら、大きく息を吸う神官。
「が、準備は整った!―――――
最後に今一度〈大事な事を言う〉から心して聴け!
次の世界はきちんと徳を評価され、その分だけ力を授かる。だが都合良くそれで報われる訳では無い。
『力を得た分、何を為すかをより問われる世界』じゃ。寧ろしっかり自分と向き合う世界とも言える」
「自分と……向き合う……でも思い出したくない事もある……」
『そのトラウマ!!……それを封印するのでなく解き放つのじゃ!!』
「だって……そんなの……ムリ……」
「いや、兄との事故はソナタをいたずらに苦しめる為の物でなく意味がある! だから前を向いて乗り越えるのじゃ。
それに今や自分の命と引換に人を救った事で逆の立場になったのも忘れるでない」
「……逆の……立場……」
「しかしだからこそ見えて来る事もある。そして全てが終わった時、何もかもが無駄ではなかったと思える様、悔いなくやり抜くのじゃ。
さあ、既にその世界がソナタを待っている。臆せず存分に活躍して来るが良い!」
そういって錫杖の様な棒をやにわに振りかざして宣告した。
「――――ではいざ、転生せよ~……―――」
その瞬間、突如視界が光の渦に飲まれ、何処かへ転落して行く様な感覚に見舞われた。
* * *
* *
*
「―――――う……うう……ここは……」
窓の無い
村の命運を賭けた召喚の儀。床に光る魔法陣の中心に霧の様に現れ眠りから醒めるルナ。
前世同様、整った輪郭にその瞳は愛らしくパチリとして人目を引く。若干タレ目だが目尻と眉はキリリと少し上がって凛々しさも兼ねる。
転生で変わった点は瞳の色と長い髪は
「おお何と愛らしい少女! お告げ通り月の女神(ルーナ)の化身の召喚、神の子降臨だ!」
村の窮状から期待は甚大であり、それを表す様に暗がりの奥からも歓声が上がる。
「神の子、バンザ――イ、バンザ――イ」
「ボクはここで……人生をやり直すのか……みんな、ボクはルナ。ここで困っている人の話を聞いて送られて来た。先ずは皆のこと、教えて欲しい」
「ホォ、名前まで
「ルナ様と申されましたか。まあ
早速村の要人と供される歓迎の宴。山盛りのご馳走が期待の大きさを物語る。
「えっと、ボクは何をしたらいい? 何か侵略者がどうとか、皆を護る使命があるとか……」
「百年の災厄……一言で言えば、魔物の侵略と
ルナの翡翠の様に輝く瞳に一気に眼力が入る。やっつけるだけかと思ったら、人さらいも阻止するのか、と一筋縄にいかなさそうな緊張が走る。
「大昔、この世界は愛に満ち徳の好循環の世界だった。それによる魔法や超能力を活かしてそこそこ幸せに暮らしていました……」
だが地上の豊かさを邪魔に見ていた魔物はそれを嫌う。それでも地上と地下で住み分けが出来ていて争いはほぼ起きていなかったという。ところがある頃からその均衡は破られ、魔に少しずつ侵食されていった。
「奴らは徳を持つ者を悲しみの瘴気で覆い、力を奪ったのです。そして瘴気に囚われた人は次々と魔に取り込まれて行った」
……瘴気に囚われないようにしないといけないのか……
「そして不思議なのは地上を根絶やしに出来る程の規模と力を持ちながら何故か遠回しな遣り方をして来るのです」
「追っ払えば良いの? なら得意だと思うよ」
「それが既に約半数の国がほぼ乗っとられて……転生者なら一般人よりも何倍も強いのですが、被害は減るどころか……この増加ペースだとあと数年で全土がやられてしまう」
「急ぐ必要があるんですね」
「はい。ともあれこの世界を
だからどんどん魔と戦って少しでも多くの人を救って貰えればと。ルナ様には是非ともそのお役目を果たして頂きたい」