……初めてありのままを認めてくれた………諦めてた私に希望をくれた……なのに護身のプロの私は何なの……
この子は人助けの約束を身をもって果たしてくれたのに………約束を破ったのは……私の方……
「ルナさんっ! ルナさんっっ! ルナァ――ッ! ……イヤ―――――ッ!」
只々茫然自失。
ほんの今そこにあった偽り無き笑顔。
―――やがて襲い来る度し難い狂気。
「有り得ない……有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ない有り得ないいいィィィィィぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ……あぐうぅっっ」
その場で舌を噛み切って自害する
ルナに重なって崩折れる赤袴。
* * *
* *
*
ん……んん……
虚空に浮かび、ふと自分を認識するルナ。
不思議そうに天を仰ぎ虚しげに呆けている。
―――お兄ちゃん、ごめんなさい。命を捨ててまで救って貰ったのに……せめて成長した所を見せて恩返ししたかった。でも、それすらも……
やっぱりボクは不幸だ……
広がる宇宙空間。視界には宙から見下ろす老聖者の姿。それが実体か幻影かも不明だ。
「いや、ソナタは幸福だったではないか。今しがたもかけがえのない人を救えたしの」
「あんな自己満足……きっと望まれない事をした……てか誰?」
「私はこの煉獄界で転生を司る煉獄神官じゃ」
そう名乗るいかにも荘厳な衣をまとった滋味深き眼差しと温もりのある声。
「ソナタにとって自己満足だろうと大切なものを救った。それで満たされないなら人を救う価値に気づいていないだけじゃ」
「相手が求めてないなら意味がない! いや、むしろ迷惑なんだよ! だから……」
ゆっくり首を横に振る神官。
「いや、結局は自分の価値に気づけぬからそうなる」
「自分の価値?……あんな人生……あの不幸の連続で何に気づけと?」
「そう思うのも仕方ない。あれだけの事があったらのぅ……精神崩壊寸前まで行ったがよく踏みとどまったのう」
「命を救われて……裏切れなかった……」
「故にその隠しきれぬ壊れっぷりも痛々しいのう。じゃがそのままでは成長は望めぬ。魂の修行のやり直し。やはり転生じゃ」
「―― え……転生?」
「ウム。そう、転生じゃ。しかも徳を積んだソナタは記憶を持ち越して転生する権限がある。どうする?」
「じゃあ来世でも恩返しのリトライが出来るって意味? ……なら勿論……ハッ……ちょっと待って! それなら兄は ?! 兄さんはどの様に転生したの?」
「記憶を持ち越したようじゃな……さらなる高みを目指してのぅ」
「本当 ?! なら会いたいっ! お願い! 会わせてっ!」
確かに前世の記憶をリセットされて普通の輪廻で生まれ変わってしまえば、再び巡り逢おうとそれは完全に他人になってしまう。恐らくこれが最初で最後のチャンスと悟るルナ。必死の形相で喰らいつく。
「ねえっ絶対に会いたいっ!! 兄さんは……どう……かな……」
「知りたいか? では少し待て―――ウム、今、宇宙意識を介して読み取ったがそう、実のところ会いたがってはおらんな」
「うそ、そんな!……世界で唯一の理解者だと……あんなに……優しかったのに……」
ガックリと地に膝をつくルナ。その余りのショックに言葉を失い肩を落とす。
「ソナタよ……命と引換えに救った人間と早々に転生先で会いたいと思う者がおるのか?」
「えっ!……そ……そう言う意味で会いたくない……のか……何だ!……ハ……ハハ、はぁ―っ良かったぁ。……ずっと恨んでばっかだったから、もうキラわれてるのかと」
「ではない。……もう良いか?……余程会いたかったのじゃな」
想いに
『…………』
僅かに間を置いた後、微かに
すると満天がグルリと回り、何かが流れ込む。
『?????』 (ナ、ナニコレ?)
「与えられたのじゃ。やり直しの機会を。そして自らが望み、挫けずにやり抜けば、ソナタにとって途轍もなく大きなものを
魂に来世への力が漲るのを見計らう神官。
「では、準備に入る!」
そうして生命のエネルギーが宿って行くと、スックとルナは立ち上がった。
「命が吹き込まれたようじゃな。では先に進めるぞよ。
ソナタは生前の善き行いにより、幾らかを選び与えられる。今からそれを決めるぞよ。先ず、記憶は持ち越すか? 恩返しがどうとか言ってたが」
「もちろん持ち越す! チャンスがあるなら今度こそ……ところで選び与えられるって何を?」
「魂の修行の場、そして能力などが多少選べるぞよ」
「それなら……カラテ以外ホント不器用だから、才能とか人格も選べる?」
「いや、記憶継続なら
では転生先を言い渡す。ソナタは神の評価に強い不満を持っておる……よって『より徳に応じて評価される世界』……そこへの転生を候補とする!
そう、望んでた世界じゃろ。これで不満ならもうソナタの問題じゃ」
「より徳に応じて評価される世界……」
「そう。善き行いにより徳が増せば評価され、実力も増大する。そう言う世界じゃ」
「それなら……」
「そして生前の強さと正義感、向上心を
侵略者から守る……あの人がしてくれた事に意味を示せるなら……
「やりますっ!」