そう、『可愛い妹』のままで居たい想いと、『強い漢』に成りたいとの矛盾にいつも振り回されていた。
そんなルナが遂に一年近く前に一大決心。
――― 失った人生を取り戻すために。
「だからもっとちゃんと元気系女子にならないと。……でもちっとも上手く出来てないなぁ」
ああ、やっぱ何をやっても不器用だ……
放課後、とあるライフワークの為に着替えに帰宅し、机で軽く仮眠をとって夢を見ていたのだ。
気を改め立ち上がり、制服を脱いで身支度する美少女。
外に出て大きく息を吸うと、その瞳に光が灯り遥か彼方へと目を運ぶ。若干上がった眉がパチリとした
でも、成るんだ。あなたのように弱い者を助け、守る人に。そしてやらなきゃならない……
『恩返し』を。
いつか人生を取り戻せたと思えるまで……。
きっとお兄ちゃんに誉めて貰える位になるから。
そしたら少しは恨まずに居られるのかな。
「だから見ててね。今日も行くよ!」
少女は決意を固め立上がる。
きっとお兄ちゃんに誉めて貰える位になるから。
そしたら少しは恨まずに居られるのかな。
「だから見ててね。今日も行くよ!」
少女は決意を固め立上がる。
そのとあるライフワークとは――――
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『そのいじめ、解決します――――秘密厳守。
通りすがりのおせっかいとして無関係を徹底して装い、速やかに解決! しかも無料!』
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クラウド型簡易ホームページの見出し。
そしてWeb掲示板にも掲げたそのタイトル。
イジメ撲滅活動。
少女は舞い込む依頼に今日も応じて颯爽と出向いてゆく。
「そんなヤツら、まとめてお仕置きだっ!!」
得意の空手による成敗。
イジメ加害中の現場を押さえると、有無を言わさずフルボッコ。『やられる側になってみろ』と完膚無きまでに叩きのめし、再犯する意欲ごと粉砕して去って行く。
毎度、帰途では夕空に向けて兄へと成果を報告。
「今日も人助け頑張ったよ。褒めてくれるかナ……」
すると奇妙な老婆がどこからとも無く現れて話しかけてきた。
「おお、アンタ、死相が出てるよ!」
「ん? えっ……ボ、ボクの事っ?」
「そうじゃ。アンタ、日々善き事をしてるね、エラいが道中ばで終わるよ。多分恩返しか何かのつもりだろうがそれは近い内に頓挫するじゃろ。人生を取り戻せぬまま」
「な、何を根拠に」
「信じぬのは自由。足掻くのも自由。ま、それでも予言は当たるじゃろうて……可哀想に。道中ばでな」
「それはイヤだっ! 」
……お兄ちゃんに恩返しすると決心したのに運命の事故に断たれた。だからもうそんな事は!
「じゃが一つ回避の方法がある。アンタ、異常にカワイイ者が好きじゃろ」
肩を
「アンタは色々あったせいで心も頭も壊れてるようじゃ」
「今、
「ヒヒ、スマンの。ま、でも心が壊れて価値観も混乱しとる。だから女子に声かけとるじゃろが」
「え……って知ってるの? しかも29回連続で失敗してるのを ?!」
「さあ。ならそのままカノジョを作るコ卜じゃ……とにかく彼氏だけは作ってはならぬ。そうなれば即、あの世行きさね」
……えっ……マジ ?!……
「な、なら大丈夫。ボク……今は男の人、そう言う目で見れないから」
……だって、ボクの心には……兄さんしか……
「どうだか。ま、警告したゾ」
そう言って老婆は去って行った。『ヘンなの』とボヤいたルナ。
……確かに壊れてしまったボクは色々と倒錯してる……けど『可愛い』モノに異常に執着してしまうのは仕方ないんだよ……。
はぁ……と溜め息と共に気を取り直して顔を上げる。
「ま、明日も人助け頑張るぞぉ」
とそう言って、ランニングで家路についた。