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異世界でチート超人になったら人生とり戻せますか? 褒めて貰えますか?
深宙 啓
異世界ファンタジー冒険・バトル
2025年01月05日
公開日
3.1万字
連載中
『史上最強少女」登場!
その少女、本気の1秒間の連打の総エネルギー量は核爆弾に匹敵。ゲットしたチートは、パワーもスピードも『万倍』というもの。―――そしてこれ以上無い史上最強の兄妹愛の物語。
命よりも大切な存在を失った絶望から再起を目指して異世界で立ち上がる少女のバトル成長譚。

<あらすじ>
かつて命をかけて守り合い生きていた兄妹。兄は約束通り妹を守り切って他界。妹は自分にとっての全てを失って闇落ち。だが絶望の果てに再起を一大決心。
自慢の妹になってみせる。 その道半ばの誓いを胸に人生やり直しに奮闘開始。
人を救って役に立ち、壊れた自分を取り戻そうと足掻く中、運命の出逢いと異世界転生。

すると運命の歯車が大きく回り出した。あの人の放った【今できることをやり抜く】という言葉を胸に『人生取り戻し』へ、いざ始動。

異世界では街に潜む何万もの魔物退治の使命を授かる。そこでは数多の女子が日々拐われて行くという事件が百年以上続いていた。

【獲得能力】=万倍物理パワー = 最強

少女は、転生で得たチートの力を全開放。それは唯一の取り柄 = カラテを生かす為、【物理的な力を万倍以上】に引上げられるというもの。

少女は早速活躍に奮い立ち、不器用ながらも無理して明るく振る舞うが常に斜め上へ。新天地でもポンコツぶりを発揮。 更に不幸体質とも思える過酷な出来事にくじけそうになる。

だがそんな少女にも絶対的な相棒が現れて。

異世界の使命と冒険の中で、奮闘しながらも、友情、喜び、楽しみ、痛み、傷つき……それでもなお懸命に歩み続けると、まるで運命の糸に手繰られる様に数々の出会いにより導かれ、成長と気づきを得てその世界の大問題の核心へと近付いて行く。
 
剣と魔法の世界でそんな彼女を待ち受けていたものとは―――。

これは人の想いを時にコミカルに、時にガッツリシリアスに描く異世界ファンタジーの皮を被った人間ドラマ。
亡き最愛への恨みの念と成し得なかった恩返しの想いに翻弄されながらも『人生を取り戻す』為に歩み出した健気な少女の物語。

そして真の愛と友情を追い求める姿を描いた、そう、今までの異世界ものへのアンチテーゼの塊の様な作品。
テンプレ異世界に飽きた方、どうぞ世界最強の兄妹愛を応援してやって貰えたら。

※ 手元では完結済 文庫本1.5冊程度。

第1話 これは予知夢なのか~ 少女の決意





<プロローグ>



 紅蓮に染まる灼熱の世界の中、その少女は人智を超えたスピードで壮絶に戦っていた。


 人々の未来を懸けて、最高の相棒バディと共に。



 数時間に及んだ闘いにケリを付けるべく、残りの力を振り絞る。


 その敵の不可視の移動と攻撃。それを捉えるべく、感覚をに研ぎ澄ます。そうするほどに時の流れが恐ろしく緩んで感じる。

 全てが数万分の一のスローモーションのよう。


 だが、万倍速でも捉えきれぬ瞬間移動。


 その逆に、相棒バディとのテレパスでの脳内のやり取りは、全てが一瞬だ。

 祈る様な姿勢で背後から感覚加力する相棒バディ

 超絶スキルが流れ込みチャンスを探る。


 スゴイ! この敵ですら次第に動きが掴めてくる……この一手に全てをかける!

 ……お兄ちゃん、どうか見守ってて下さい!


《ねえ、お願い! キミの全部の力を貸してっ!! 》


 求められたその美しき相棒バディが応える。

《任せて! その光速級の攻撃力に私の超知覚読心と予知力が加われば無敵なハズッ!》


《今だっ!!》

《いっけぇ―――――っっ! 》



 その放たれた究極の一閃。 そして確かな手応え。

 見事な的中と敵の散る姿。


 その瞬間、脳内で二人の歓喜の念が衝突し、花火の様に炸裂した。



《やった――――――っ!!》



 だがその想いは天国から地獄へ。

 完全に予想外の眩い閃光。

 空間を歪める程のエネルギー。


 それは敵の撃破により巻き起こった巨大爆発。



《え?!……そんなっ ?! 今すぐ逃げてっ !! 》



 テレパスで懸命に乞い願うも無視され、その愛しき相方バディは瞬間移動で身を盾にしてかばってきた。それだけは何があってもやらない約束のはず。


《裏切り者―――っ》



 そう全力でなじったが聞く耳を持たず満足気に抱えられた。庇い返そうにも自分の体は体力尽きて動かない。迫りくる爆圧と死の覚悟。そして絶望。



 ああ、また一番大切なものを守れない……。

 この悔いだけはもう二度と受けたくなかったのに。


 失意の中、巨大なエネルギーに二人して呑まれてゆく。


 バラバラになる間際、冥土へと移りゆく意識の中で光の塊が飛び込んで来て自分と相方バディを包み込んだ。



 その一瞬、光の中に垣間見えた幻影。



 えっ !! お兄ちゃん?!

 今度こそ迎えに来てくれたの?

 もうお兄ちゃんの所へ行ってもいいの?……



 刹那、消え行く微かな意識と共に全てが真っ白な光の中に溶けていった――――




   * * *




 新緑を楽しむ様な小鳥のさえずりが聴こえる。


 ん? 鳥?……死後の世界?……


 揺れる春の木漏れ日にまぶたをくすぐられ、うたた寝から目覚める少女。長い睫毛と二重の瞼をゆっくり持ち上げ、伏した体を机から起こす。


 愛らしく整った小顔の頬に伝う雫。




 それをあご先から手の甲へ落としてぼんやり見つめた。



 ――― 夢か……


 あれ? 涙……泣いてた?


 『……やっぱりボクは……壊れてる……』


 にしてもすっごくヘンな世界だったな。

 妙にリアルだったし。

 それにあのラストシーン……。


 机上の少女は完全に夢から覚めて涙を拭う。そして兄が小学校の工作で作ったペン立てを見つめながらボヤく。



「でも、仕方無いよね。お兄ちゃん……。

 このは決して晴れる事は無いんだよ……それでも……」




―――助けないで欲しかった。

 ボクなんて助けないで欲しかった……

 ……どうしてボクが生き残ってしまったんだ……  




 アクリル製のペン立てには月と星のマークが彫刻されていた。それを愛しそうになぞりながら、



 ……ボクは一星いちせお兄ちゃんを恨んでいる。全てを失った4年前のの日から。

 そう、ずっと……。


 高1になった今でも、あなたを忘れた日なんか一日だってない……

 ボクの命より大切だった人……。





 この少女、ルナは中学時代の大半を引きこもりに費やし闇落ちしていた。


 ……ボクが弱い女の子じゃなければ、お兄ちゃんを守ってあげれたのに……



 ルナはその弱さを自分が女子であるせいにしていた。自分を事故から守った兄の中に強き『おとこ』を見出し、そんな存在に成りたいと固執していた。


とは言え女子である事を完全否定するのもはばかられた。か弱き存在だったからこそ、兄は心底大切にしてくれたのだから。


 そう、『可愛い妹』のままで居たい想いと、『強い漢』に成りたいとの矛盾にいつも振り回されていた。


 そんなルナが遂に一年近く前に一大決心。


 により粉々に壊れた心とトラウマを封印して、生まれ変わる事にした。




 ――― 失った人生を取り戻すために。






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