第三部☆竜姫
第五章☆祭
「アレハンドラ?」
メロディが声をかけると、アレハンドラは、ぎゃーす、と鳴いて、メロディが背中に乗るように身体を傾けた。
「どこへ行くの?」
空高く舞い上がり、あっという間に山々を越え、今まで行ったことのない国へ降りた。
国を縦横に走るメインロードに人だかりがしていて、張り子のドラゴンを行列が運んでいた。
からくりで動く仕掛けらしく、時々口や鼻から煙を出した。
「よくできているけれど、やっぱり作り物ね。本物の方がどれほどいいか」
ぎゃーす!
「あっ!ドラゴンだ!」
裏道から人が寄ってきた。
「このドラゴンは本物よ」
と、メロディが言うと、人々はおっかなびっくりで取り巻いてアレハンドラを見た。
「ドラゴン、ドラゴン、雨降らせ!」
人々が唱和した。
「我らに糧を、五穀豊穰を!」
「祭りだ祭りだ!」
ぎゃーす!
不意に、頭上に大きな影がかかった。
「みんな!」
メロディは集まってきた他のドラゴンたちに呼びかけた。
「ドラゴン、ドラゴン、雨降らせ!」
「風よ雲を運び、雨を連れてこい!」
メロディが念じると、ポツポツと雨が降り始めた。
人々は歓喜の声を上げたが、すぐに土砂降りになり、蜘蛛の子を散らすようにみんな建物の中へ避難した。
「ああ、気持ちいい」
メロディは雨に打たれて全身ずぶ濡れだった。
ぎゃーす!
アレハンドラがメロディを促して、彼女はアレハンドラの背に乗った。
「本物よ!本物のドラゴンと竜姫さまよ!」
建物の窓に人が鈴なりでひと目見ようと押し合いへし合いしていた。
「また来てねー!」
人々に見送られてメロディたちは帰路についた。
風で徐々に濡れた髪が乾いてそよいだ。
「アレハンドラ。大好き」
メロディが抱きついてそう言うと、アレハンドラは、ぎゃーす、と鳴いた。
他のドラゴンたちもそれぞれの鳴き声をあげて、アレハンドラの周りを旋回していた。