第一部☆アレク
第六章☆勘違い
「姫さんって美人だよなぁ」
野営のテントから外の空気を吸いに出てきたアリスは、どきり、とした。私のこと?いつもクラウドは私なんか気にもかけていないと思っていたけれど、本音は良く思っていたのかしら?
「うるんだ瞳、白い肌……」
そんな?そんなふうに思っていたの?アリスは身悶えしそうだった。
「燃えるように赤い爪」
!!!
アリスはテントの陰から飛び出して、野営の焚き火の前に躍り出た。
「あれ?アリス」
クラウドがキョトンとして言った。
彼のそばには、白いドラゴンがたたずんでいる。
「姫さん、って誰のこと?」
アリスは両手をわななかせて言った。
「ああ、このドラゴンだよ。1匹だけメスで綺麗だし、ほんと、良いよなあ」
白いドラゴンはまんざらでもないようにクラウドから背中を撫でられていた。
「私だって、姫ですよ!」
「えっ?ああ」
クラウドは今気づいたようだった。
「私のことは?どう思っているの?!」
「アリスは、」
「?」
「アリスだなぁ」
「もういい!クラウドの大バカ!」
走り去るアリスを、クラウドはぼけっと見送った。
「なんだい、姫さん」
白いドラゴンがクラウドを見て肩をすくめる仕草をした。