第一部☆アレク
第5章☆アリス王女
「ここはいったいどこ?城はどっち?」
はあはあ、あえぎながらアリスは森の中をさまよっていた。
気がついたらドラゴンの背で横たわっていた。
騎士がいたが、その目を盗んで逃げ出した。
「なぜ?私がこんな目に遭わなくてはならないの?」
どう考えても彼女には理由がわからなかった。
「きゃあ」
木の根につまづいて転ぶ。
ひざを擦りむいて、血が滲んだ。
ぎゃーす!
大きなかげが舞い降りてくる。
アリスは恐怖で立ち上がり、逃げ惑った。
「姫さん!落ち着いてください」
「お前は誰?」
「第七ドラゴン騎士団団長アレク」
「お前は私をどうするつもりなの!」
「どうもしやしません。食事と休憩がとれる場所へ行きましょう」
アリスは逃げるのをやめた。ひざがズキズキ痛む。泣きたいのを我慢して、降りてきたドラゴンの背中に騎士からひきあげてもらった。
くらくらするほど高い空中を飛んでゆく。
「団長ー!」
他のドラゴンたちと騎士たちが小川のそばにテントを張って、火をおこして大鍋でなにか料理を作っていた。
「はい、どうぞ」
木の器に温かいスープ。
「このような得体のしれないもの、食べれない!」
アリスは器をひっくり返した。
「食べ物を粗末にするな!」
アリスと年の頃がそう変わらない少年が怒って怒鳴った。
「クラウド、まあ、そう怒らんでやってくれ」
アレクが大剣を傍らに置いて座りながら言った。
「姫さん。これから先、ずっとこんなだ」
「なんですって!」
「ドラゴンの心眼で姫さんが王家を継ぐのは駄目だと出たんだ」
「ドラゴンの心眼?」
「国を治めるのに、弟を殺したいくらい邪魔だと思っていただろう?よく考えてみるといい。あなたが治めたら国が滅ぶ」
「随分な言い様ね!」
「事実だ」
アレクの言葉にアリスはぐうの音も出なかった。
「どこか怪我をしているのか?」
なんでもお見通しのようだ。
アリスは擦りむいたひざを手当てしてもらった。