第一部☆アレク
第四章☆王位継承権
テクサク国の正妃には15歳の王女がいた。
アリスといい、気高い気質の少女で、誰もが次期王位継承を確信していた。
ところがこの年。
妾妃の1人が男児を出産した。
取り巻きの貴族たちの思惑が交錯し、この王子を次期王位継承者にしようという動きが出てきた。
ドラゴン騎士団の謁見の折りにも、どちらに敬意を表するのか態度を迫られて、統一感がガタガタになってきた。
「アリス王女の食事にナツメグを大量に入れるのです」
ナツメグを大量に摂取すると幻覚や失明、果ては死に至ることもあるという。
耳ざといアレハンドラはアレクを連れて陰謀の元の会話を聞かせた。
王族の食事の席に分け入って、アレクは、「アリス王女のお命を狙っている輩がおります」と謹んで申し立てた。
王は苦悩し、王女の反逆者を死罪にすべし、と宣託した。
アレクの額のしるしが濃く現れた。
王女は少しばかり優しさに欠けていて、自分にとって害になるものは全て排除しようという心づもりだった。
「王子は邪魔だ。王子を死刑にしたい」
アリスの心の声に、アレクは
「王よ。アリス王女は王位継承権にふさわしくありません。争いが起こる前に、彼女を追放なさってください」と言った。
「何ですって!」
真っ青な顔のアリス王女をアレクは当て身で気絶させて、彼女を抱えてアレハンドラの背に飛び乗った。
「王よ、アリス王女は行方不明になります。しかし、世界のどこかで元気に過ごされているでしょう」
「せめて従者を連れて行ってくれ」
「我ら第七ドラゴン騎士団全員が姫をお守りします」
「ああ、何ということでしょう!」
侍女たちが震えながらドラゴンが飛び立つのを見送った。