プロローグ☆ドラゴンの祝福
「アレハンドラー!」
アレクは自分の相方であるドラゴンを探していた。
「どこ行っちまったんだよ」
アレクは第七ドラゴン騎士団の団長だった。額にうっすらと紋章が浮かび上がっていて、有事の際には、これがくっきりと現れる。幼少の頃にドラゴンから贈られた祝福のしるし。
どこかで赤子の泣き声が聞こえる。アレクはそちらへ向かって歩いて行った。
「きゃー、やめて!来ないで!!!」
若い母親が必死に我が子をかばっていた。
アレハンドラ……、つまりドラゴンは、その母子に近づいて、その恐ろしい鉤爪を伸ばすと、おさなごの額に触れるか触れないかのところで何やら力を注いでいた。
うわああああん!
子どもが一層ひどく泣き出すと、アレハンドラは心外そうにまばたきをして、前脚を引っ込めた。
「アレハンドラ!」
アレクがその場に来た。
「騎士様!そのドラゴンは、我が子に危害を加えようとしました!」
母親が蒼白の顔で訴えた。
「ドラゴンはなにも理由なしに危害を加えたりしません」
アレクは丁寧に話しかけ、母親から赤子を受け取って抱いてあやした。子どもは途端に機嫌が良くなり、アレクの額に手をのばす。
「ああ、これは!この子はドラゴンの祝福を受けました。この額のしるしをごらんなさい。私と同じしるしがこの子にも」
「まあ!」
母親は子どもを再び受け取ると、額のしるしを確認した。
「騎士様?この子も騎士様のように勇敢な青年に育つでしょうか?」
おそらく、将来的にドラゴン騎士団の団長クラスまでのぼりつめるだろう。
アレクは母親を安心させ、「私のこの身に誓って、立派な青年に育つことを保証いたします」と言った。