闘いで体が
そうしていると、
「——
小走りする足音の後に、背中へ軽い衝撃を受ける。
振り返ると、
「大丈夫ですか? 痛いところは? どこも怪我していませんか!?」
この
(恩人だから——にしてはあまりにも過分よな)
「ああ、私は大丈夫だ」
「ほんとですか?
「この通り、かすり傷一つないよ」
少し離れて全身を見せると、
安堵のため息を付かれた。
「良かった……無事で。僕のせいで
「案ずることはない。さっき見たであろう?
私はな、この身に
老いる事も、死する事もないのさ」
「だとしても、痛みを感じないわけじゃないでしょう?」
「んん……まあ、そこは慣れたものよ」
「……そんなことに、慣れないで下さい」
俯いた
まるで、
(
これが、演技で出来ようものか。
どのような思惑があるにしろ、この子が私へ向ける感情だけは、噓偽りのないものと感じる。
……ただの直感、だがな)
やはり
「心配をかけて、すまぬな。
なれど、本当に私は大丈夫だよ」
「大丈夫じゃない人ほど、そう言うんですよ?」
「……確かにな。
だが、
「僕、ですか?」
稲穂のように輝く、
何度となく夢に見て、焦がれた美しき色。
永き
「ああ。
痛みも苦しみも、おまえという存在がすべて癒してくれる。
だから、私を案じるのならばどうか。
……傍にいて、笑ってくれ」
「帰ろう、
腹も空いたし、色々あってくたびれた。
美味しい
何が出て来るのか、楽しみだな」
と、
このような笑顔を作るのは久方ぶりなので、可笑しなところがあったのかもしれない。
「慣れぬことをするものではないな」と思いながら待っていると。
「
音もなく
その肩には
どうやら、戦いの中で気を失ったらしい。
「人聞きの悪い事を言うな、
それに、責任とはなんだ?」
「あー……そこからですか。
妖退治の日々であったのは承知の上ですが、長生きしてるわりに無知と言うか、純粋と言えばいいのか……」
「……よくわからぬが、おまえが無礼であることだけはわかるぞ。
昔は寡黙で従順であったというのに、ここのところ随分と口が回るな」
「主様の影響でしょうねぇ」
人を小馬鹿にしたような態度である。
式神がこのような変化を見せたのも、
時に驚かされる事はあるものの——
むしろ、嬉しいとさえ思ってしまう。
(それもこれも、
出会えた奇跡を噛み締めながら、
「ほら。帰るぞ、
そうすると、今度こそ。
「はい、
帰ったらすぐ、夕餉の準備の続きに取り掛かりますね。期待していて下さい!」
「楽しみにしているよ」
月明かりに照らされ、微笑み合いながら、二人は歩く。
帰るべき〝家〟を目指して——。
この夜、
繋いだ手を、離したくない。
それが叶わぬ願いで、いつか神の怒りを買うであろうと知りながらも。
願わずにはいられなかった。