柚月ひなた
異世界恋愛人外ラブ
2025年01月04日
公開日
2万字
連載中
時は平安。都を守護する神々に仕える巫(かんなぎ)・煉夜(れんや)。
世の秩序を乱す不浄なるものを祓うのが煉夜に与えられた使命だ。
これまで数多の妖を無情に屠って来た。
ある晩、いつものように妖の討滅に出向いた際、煉夜は出会う。
金毛の妖狐の幼子に。
手負いであったが、妖に掛ける情は不要。
粛々と祓おうとするが——金色の瞳で自分を見つめ「助けて」と懇願した妖狐の言葉に煉夜は思い留まる。
……手を下す事が出来なかった。
理由は明確だ。
妖狐の色がそうさせた。
しかして出会った二人。
金色(こんじき)と名付けられた妖狐は自分を救った煉夜を恩人と慕い、煉夜は金色の無邪気さに絆されて行き——。
いつしか、煉夜は金色を愛でるようになる。
それはもう、周りが呆れ返るほどに。
果たして、二人の行き付く先には何があるのか——。
此れは不死の呪いを受けた巫と妖狐の異種族恋愛奇譚。
人間と妖、そして神の御心が絡み合う和風バトルロマンスファンタジー。
第一話 神の罰
遥か昔——。
一介の巫であった煉夜は神より神威を賜り、朽ちぬ容姿に死ねぬ体となった。
(これは、呪い。
かつて過ちを犯した私へ神が下した罰。
許しを乞う私に、神は告げた)
〝妖を滅せよ。そして来たる終末の日に目覚める、災禍を祓え。
さすれば、汝の罪を許そう〟——と。
(選択肢は、ない。私は神の言葉に従い、戦った)
血を流し、どれだけ酷い怪我を負おうとも死ねず、痛みに悶えながら蘇り。
妖と呼ばれる不浄のものと戦い、戦って、殺し、コロシ、ころし——。
数十年、数百年。
来る日も、来る日も、煉夜は妖を浄化し続けた。
しかし、未だ終わりは見えず。
時の牢獄の中、闘争に明け暮れた煉夜の心は摩耗し、人間らしい感情は失われていった。
(……嗚呼、いつになったら私は安らぎを得られるのか)
もはや過去は曖昧な記憶の底。
自分の犯した過ちが何だったのかすら、思い出せはしなかった。
(けれども一つだけ。記憶に焼き付いて離れぬ色、情景がある。
それは、満ちた月や稲穂のような……黄金色。
暖かくて柔らかなそれに包まれて眠る、優しい夢の情景だ)
いつか永遠の安らぎを得られる日が来るならば、あの暖かい色に抱かれて眠りにつきたい——と、焦がれて煉夜は手を伸ばす。
だが、その手が夢の情景に届く事はなく。
代わりに妖を屠るための得物が握られていた。