黒魂の城の広間――
数千万もの雷球が、広間全体を埋め尽くしていた。
それらは拳ほどの大きさに過ぎず、その破壊力で言えば、十三傀皇にとっては脅威とは言い難い。
実際、至近距離で爆発しても、致命的なダメージを与えるほどではないだろう。
しかし、宮本は一切の躊躇なく、自身の体内に蓄積された雷霆の力を解放し、次々と雷球を生み出していく。
その密度は急速に増し、広間を埋め尽くす雷球の雨はいよいよ激しさを増していた。
王座の前で堂々と立つ霊巫王は、その光景を冷徹な目で見つめていた。
どれほどの知恵を持ってしても、宮本がなぜこのような行動に出たのか理解できなかっただろう。
だが傲慢な霊巫王は理由を探ることなく、ただ静かに唇を動かし、難解な呪文をつぶやく。その目には鋭い殺意が宿り、決意が漲っている。
やがて杖の先端に光が灯り、宝珠から眩い輝きを放った。
次の瞬間、十三本の黒い光線が放たれ、それぞれが十三傀皇に命中した。
光線は身体に深く食い込み、その凄まじい力を肌で感じさせる。
黒い光線が体内に突き刺さると、傀皇たちの体から圧倒的なエネルギーが沸き上がり、全身を覆う不気味な赤黒い炎が燃え上がった。
「宮本次郎…。これが、私が一時的に生命力上限を代償にしてまで傀皇たちを狂暴化させる技だ。まさかここまで追い込むとはな…。だが、もう終わりにしよう。貴様はすぐに引き裂かれ、死後にはその肉体を再構築し、別の傀儡として作り直す。生前の力をもってすれば、傀皇にはなれぬまでも、十分な力を与えてやることができるだろう」
霊巫王の言葉とともに、狂暴化した十三傀皇たちは何倍もの力で宮本に襲いかかる。
わずかな時間で、宮本の防御は次々と突破され、全身には数えきれないほどの傷が刻まれていった。
その戦場での宮本の苦境は、配信を通じて視聴者にもはっきりと伝わり、観客たちの間にも緊張が走る。
:霊巫王、傀儡に狂暴化バフを掛けられるのかよ
:おじさんがどんなに強くてもこれには耐えられないんじゃ…!?
:無事でいてくれ!!
:あんなに優位だった状況が一気に絶望に変わった
:無敵だと思っていた宮本おじさんがこんなに押されているなんて
:酷い傷を負ってない!?大丈夫??
:数で圧倒するなんてふざけんな!
宮本は狂暴化した十三傀皇に押され、極めて危うい状況に追い込まれたが、その強靭な肉体を駆使してなんとか踏みとどまった。
やがて一斉の攻撃が止み、わずかな間隙が生まれる。
その瞬間、宮本は疾風のごとく動き、空中にいたジーナの襲撃を一撃で弾き飛ばした。
そのまま地面に両足が着くと、即座に力を込めて体を反転させ、再び空中へと跳び上がる。
宮本は広間の天井――
30メートルの上空まで舞い上がり、傷だらけの体を浮かべながら鼻で笑って言った。
「ったく、変哲もない戦いだな。お前が言った通り、そろそろこの茶番を終わらせてやる」
宮本の言葉が終わるやいなや、空中で彼の体から放たれる雷霆の力が爆発的に広がり始めた。
ビリビリビリビリ――――
数千万個もの雷球が一斉に動き、十三傀皇を目掛けて炸裂する。
雷球の爆発って狂暴化した傀皇に直接的なダメージを与えられなかったが、連続する衝撃によって、傀皇たちの体には一瞬の麻痺が生じることが明らかになった。
たとえそれが一秒にも満たない僅かな麻痺であっても、数千万の雷球による絶え間ない攻撃が重なれば、傀皇たちは完全に動きを止められてしまうのだ。
宮本はその好機を逃さず、一気に包囲網を突破する――
そして空中で背後から反動の爆風を起こしながら、霊巫王のいる位置に向かって力強く突進した。
一方、その様子を見つめる会長室では――
ライーン会長が口元に微笑を浮かべ、画面を注視しながら素早くキーボードを叩いている。
:小僧、霊巫王という伝説級のモンスターは、防御は弱いが命を保つ手段を他にも持っている。君が一撃で決着つけるつもりだろうが、留めのために少し余力を残しておけ。
突進する宮本の視界には、そのコメントがハイライトされた状態で飛び込んできた。
(会長からのアドバイスか…!)
(命を保つ手段…。なるほど、わかった…!)