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第27話 雷空斬


山崎は目を見開き、口元をわずかに引きつらせながら、目の前に現れた「救世主」を見つめていた。


上半身を裸にした、筋肉が爆発的に発達した野生的なおっさんが、興奮した表情で、他の人を避ける暇もなく、食屍鬼の群れに突っ込んでいった。

拳、足、頭突き、肘打ち、膝蹴り、ヒップドロップまで繰り出し…


その肉体を駆使した近接戦闘の一撃一撃は、どれも恐ろしい威力を誇り、食屍鬼の命を容赦なく奪っていった。

しかもこのおじさん、戦いながら口を動かし、何やら解説を加えている。

「みんなーー!昨日はモンスターを倒すところをお見せできなかったけど、今日はたっぷり見せてあげるさ!」


:なんか多くねー!?

:こんなモンスター、初めて見たけど、すごい見た目だね…

:打たれ弱いけど、数多いね


宮本の配信同接数は次々と増えていく。

23665人…31047人…43995人…

:いっつもいきなり配信して、いきなりヤバいところにいるw

:わぁ、なんだこれ。あんなにブサイクなモンスターいるんだ

:数多すぎ!何百、何千体もいるんじゃない?

:スリル満点!ってかまた服破れたの?

:(5000円の投げ銭)素晴らしい腹筋!

:グロっ! 

:狂戦士おじさん、やっぱ肉体能力おかしいって!

:称号試練中だよね? 難しそうに見えるけど、おじさんには余裕っしょ

:あのモンスターたち、どんどん増えてきてない!?


食屍鬼を無差別に倒していた宮本も、モンスターの数が増えていることに気づいていたが、全く慌てることなく、むしろますます興奮していった。

なぜなら、戦闘中に自分の視聴者数が驚くほどの勢いで増えていることに気づいたから。


(もっと伸びろー!)

(でも、遅すぎるのもダメだよな。零ちゃんが追い付いてきちゃう…)

(彼女は俺を守ろうとしてるし、断るわけには……)

(よしっ!)


宮本の同接数が再び最高記録を更新した。

69333人…75120人…79228人…


「雷よ——」

紫色の稲妻が拳の先端に集まり、ますます楽しくなった宮本は、空中に拳を放った。

その拳から発せられた紫色の稲妻はさらに集まり、雷球として凝縮され、一発で前に迫る食屍鬼の群れに向かって飛び出した。

雷球は激しく爆発し、波紋のように美しく、同時に死神のような殺意を秘めた電火が広がり、瞬く間に数十体の食屍鬼を葬った。


(雷爆ってこんな風に使えるのか!)

(拳で雷球を作れるなら、手のひらを使ったらまた違う形が現れるはずだ。試してみよう!)


戦闘中、宮本は自分の最初の遺伝子スキルの奥深さと変化に気づき、右手をまっすぐ伸ばし、体内から雷霆の力が湧き上がるのを感じた。

そして、右手を高く掲げ、掌を刃として空中を斬り下ろした。


「雷——空——斬!」


その瞬間、宮本の中二病魂が燃え上がった。小さい頃から熱血アニメを見て育った宮本は、その勢いで新しく作った技の名前を大声で叫んだ。


すると、近くの2メートルほどの大きさの浅紫色の雷刃が空を切り裂き、その暴力的な力で前方にあるものすべてを粉砕していった。

雷刃が地面に触れると、長さ10メートルにも及ぶ焦げた亀裂を引き起こし、その周りには輝くガラスのような粒子が散らばり、紫色の稲妻の余韻が反射して美しく輝いていた。


まるで長年欲しかったおもちゃを手に入れた子供のように、宮本は「雷空斬」を繰り返し放ち、四方八方から襲い来る食屍鬼を次々と倒していった。


その時、山崎を囲んでいた食屍鬼たちはすべて宮本に向かって突撃していった。

ほとんど体力を使い果たした山崎は、力なく片膝を地面につけ、左手で地面を支えながら、ぼんやりと草を刈るように食屍鬼を倒していく宮本を見つめていた。

山崎は無意識に喉を鳴らし、ぼんやりと言った。

「このおじさん強すぎる…!いったい…」


宮本の配信:同接数——

88711人…92353人…96216人…100066人…


「雷空斬」の爆発的な効果が配信で狂乱を巻き起こし、同接数がついに10万人を突破した。


:(2000円投げ銭)あまりの強さに興奮してマウスがびっしょびしょ

:(5000円投げ銭)くそ! 長年眠ってた中二病魂がおじさんに火をつけられたぜ! 俺も使えるかな!

:雷空斬、ネーミングセンスはちょっとアレだけど、すごいカッコいい!

:(3000円投げ銭)おじさんの技の視覚効果、完璧だな。地面に残る跡がガラスみたいで綺麗

:化学講師として説明します!雷の瞬間熱は2万℃を超えることがあります。ここは砂漠だから、瞬間的に周囲の砂が融解して溶け、その後急速に冷却されて砂の分子構造が変化し、ガラスの粒子になるのです

:キラキラしてて、めっちゃ綺麗!

:(2000円投げ銭)さすが、配信映えをよく分かってる!

:(5000円投げ銭)宮本の配信観るたび、少年時代の熱い気持ちが蘇るな

:こんなに密集したモンスターたち、何千体もいるんじゃないか…全部倒せるのか?

:(3000円投げ銭)やばっ! ほぼ裸のおじさんがモンスターの群れで無双してる!

:(5000円投げ銭)こんな熱い戦闘、初めて見たわー

:(6000円投げ銭)尊敬してます!

:これ、食屍鬼だ! 死を全く恐れないモンスターの一種だ。にしてもこの数はヤバいだろう!

:(10000円投げ銭)がんばれー!!!

:(50000円投げ銭)ガチ恋になりそう



この日は、宮本が正式にY社と配信者契約を結んでからの2回目の配信であり、同時に彼がダンジョン配信者ランキングでトップ50にランクインした日でもあった。

最終的なランキングはNO.39となり、Y社のダンジョン配信ランキングにおける最速の増加記録を更新した。


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