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第17話 媚薬


 最初はうなされていた伊月だったが、薬を与えたからだろうか少し落ち着いてきたようだった。それでも呼吸が荒く、息遣いが激しい事には変わらない。薫は伊月のボタンを外すと頭を撫でながら見つめている。


 「そばにいるよ」


 自分に言い聞かせるように呟く。ふと伊月の頬が赤くなっている事に気づく。呼吸をする度、ピクンピクンと体が反応している。無意識に布団を足で退けると、もぞもぞと腰が動き始めた。


 夏樹が言うには全ての感覚を遮断し、その後に耐え難い快楽に襲われてしまう媚薬の一種と教えてくれた。人によって幻覚は様々だが、その人の心の奥に隠された欲望が露出しやすいらしい。あまりに強すぎて壊れてしまう者も出ている強力なものだった。薫が飲ませたものはその効果を半減させる事が出来る代物だ。まだ研究段階なものらしく、それしかなかったらしい。


 「ふぅ……あぁっ……ん」

 「伊月」


 名前を呼ぶと、微かに瞼が動いた。薫の声を探すように揺らいだ世界に足を踏み入れた。ゆっくりと目を開けると、薫がいつも以上にきらきら輝いて見える。伊月は唇に指を咥え込み、ジュボジュボと音をたてながら舐め続ける。自分が何をしているのか、理解出来ない伊月を見て、ぷっつんと何かが壊れていく。


 「伊月、伊月!」

 「あっ、あっ、ああっ」


 身体中が性感帯になっているみたいだ。何処を触っても、名前を呼んでも、叫びに近い声で悦びをあげている。乱れた伊月を触るたび、見るたびに薫自身も壊れていく。


 シャツを脱がすとピンク色に熟れた突起が顔を出す。薫は舌先で転がしながら、左は指先で弾き始めた。待っていたと言わんばかりにムクムクと大きくなって、固くなっていく。余程、我慢出来ないのか、伊月は腰を浮かし、薫の足に絡みつくと腰を動かし始めた。ズボンの上からでも勃起しているのが、分かる。すぐにでも、楽にしてやりたい気持ちが出てくるが、まだまだ自由にする気はなかった。


 いい香りがする──


 甘い洋菓子のような匂いが、鼻を刺激する。スンスンと匂いを楽しむと、頭がクラクラしてしまいそうになった。今の伊月を他の奴が見たら、理性を崩し襲うかもしれないと思うと、余計興奮し、いつの間にか我慢汁がトロトロと湧いていく。


 「時間をかけて、媚薬を抜いた方が反動が少なくなる。その代わり、薫の理性が保つのか心配ではあるけど……」


 夏樹の言葉が頭の中でぐるぐる舞いながら、渦になり、奥底へと堕ちていく。どうなってもいい、何も考えられなくなった薫は、伊月と共に快楽の世界へと迷い込んでいった。





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