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第6話 告白


 「なんで家知って──」

 「ライバルの事はリサーチするでしょ、普通だ普通」


 桐也がどこまで調べているのか不思議に思いながら目の前の光景に圧倒されてしまう。見た感じ普通の家に見えない。壁に隠れて様子を伺っているが、黒塗りの車が数台止まっていて、ガタイのいい男達が出入りしている。勿論家も大きい、どこからどう見ても薫の知っている世界とは程遠い異空間に入り込んだようだった。


 「こんな所で見てても時間の無駄だな、行くぞ」

 「そうだな」


 同意はしてみたものの、少し勇気が必要だ。ゴクリと唾を飲み込むと、ゆっくりと近づいて行った。


 「すみません。夏樹くんいますか」

 「坊ちゃんに何の用だ」


 伊月と呼びそうになりかけたが、夏樹と呼ぶ約束を守る為に、ここは踏ん張った。その様子をジロジロと見てくる黒服の男は怪訝な顔で睨んでいる。蛇に睨まれるとはこの事かと納得しながら、噛み付こうとした瞬間、異変を感じ取ったかのように、伊月が門から出てきた。


 「遅い、何して──薫?」

 「来ちゃった」

 「マジか」


 いつものふんわりとした可愛い伊月はいない。どちらかと言うとカッコイイ。スーツを着ているのもあるかもしれないが、前髪を上げてビシッと決めてる姿が堪らない様子。ポケーと見惚れている薫を小突くと、桐也が守るように二人の間に割り込んだ。


 「薫が心配してんぞ、伊月・・

 「なんでお前が」

 「俺は薫の騎士ナイトだからね。この家を教えたのも俺だし」


 そう言って薫の頬にキスを落とすと、伊月に煽り出した。一体何がどうなっているのか分からない薫はそんな事よりプチパニックになっていて、周りが見えなくなっている。


 「天田、何してんの? 薫は僕のだから」

 「何も言わずに行方くらますお前が悪いだろ」

 「ちょっと……2人は知り合いなの?」


 言い合いをしている2人の間に割り込み、力強く聞いてみる。すると桐也はにこにこして口を動かそうとしたが、それを阻止したのは伊月だった。


 「なんでもかんでも話すな。巻き込みたくないだろ」

 「へぇ〜恩人に対してその態度はダメだな」

 「2人とも!」


 仲良さそうに戯れているように見えて仕方なかった薫は見えない絆があるような気がして、2人の会話を強制的に止めた。


 「桐也くんは俺の従兄弟なんだよ。俺にとって兄みたいな存在だから、俺が好きなのは伊月だけ」


 咄嗟に告白をしてしまった事に気づかない。それより2人の会話を止めて誤解されたくない気持ちと伊月は自分だけのものだと忠告として気持ちを表に出した。じゃないと遠く感じてしまいそうで仕方なかったからだ。


 「薫……」


 突然の告白に感激を覚えた伊月と、その光景が気に入らない桐也。複雑な空気の中で時が止まった。


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