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第10話 リリアナ研究クラブ

「おはよう、ナズナ。今日は、その。部活、出れそう?」

「あ……おはよう。桂花けいかちゃん」


 週が明けた月曜日。

 下駄箱で声をかけられた。

 前にもこんなことがあったなと、ナズナはぼんやりと声の主を見つめる。

 大きな瞳が気づかわし気に揺れていた。

 ポニーテールの少々勝気に見える美少女。同じクラスの西野桂花だった。

 金曜日の放課後にショックなことがあったせいで、土日はほとんど泣いて過ごした。おかげで、まだ目が腫れている。両親にも散々心配をかけたが、友達とケンカしたと言って誤魔化した。

 きっと、桂花が心配そうなのもそのせいなのだろうと、ナズナは無理に微笑んで見せた。

 魔法少女となったナズナは、対外的には、リリアナ研究クラブに入部したことになっている。『リリアナ研究クラブ』=『魔法少女』だと、あれだけ派手に宣伝していたのに、今はみんな、すっかりそのことを忘れていた。

 当の魔法少女たち以外は…………。

 それも、すべては天使リリアナの力だった。

「ん、と。部活は、まだ、分からないかな」

 学校を休んだりしたら、両親がいじめにあっているのではないかと心配しそうだったので、学校には出てきたけれど、放課後のことはまだ考えられなかった。

「そう…………。じゃあ、また、放課後」

 ユラユラと揺れる瞳で、じっとナズナを見つめてから、桂花は下駄箱を去っていった。

 その背中を見送って、ナズナもノロノロと上履きに履き替えて、教室へと向かった。



☆ ☆ ☆


 あの後のことは。正直、あまり覚えていなかった。


 金曜日の放課後。

 カトレアたちのとのパトロール。

 東校舎二階の廊下。

 ヘビに襲われて、三階から駆け下りてきた一年生たち。

 その後を追って行ったキキョウとスズラン。

 三階へと走るカトレア。

 一人、取り残されたナズナ。

 天井から、二階の廊下に降りてきたヘビ。

 構えた銃を撃つことが出来ずに、震えてるだけだったナズナ。

 放たれた白い光。

 霧散していく赤い靄の向こうに立っていたユリハナ。

 裏切り者と呼ばれる、赤い髪の魔法少女。

 そして。

 そして…………。


「おまえだけは絶対に許さない! リリアナっ!!」

「知っているでしょう、ユリハナ。魔法少女の弾丸で、わたくしは撃ち抜けない」


 カトレアのことを、リリアナと呼んだユリハナ。

 その理由は、一晩経ったら、何となく分かった。

 魔法少女のリーダーであるカトレアは、天使リリアナの声を聞くことが出来る。リリアナと繋がっている、と言えなくもない。だから、きっと。ユリハナは、カトレアを通じてリリアナに告げたつもりなのだろう。裏切り者と呼ばれていても、ユリハナだって魔法少女なのだから、そのことを知っていてもおかしくはないのだ。

 分からないのは。

 なぜ、ユリハナはあんなにリリアナを憎んでいるのか、ということだ。

 憎しみに歪んだユリハナの表情。低く、地を這うような声。

 キキョウとスズランが、ユリハナを嫌っているというのも理解できる気がした。ユリハナの優しさに触れたことのない人間がアレを見たら、確かに、裏切り者としか思えないだろう。

「ユリハナはリリアナを裏切った」

 誰かのセリフが思い出されて、唇を噛みしめる。

 あんなに激しい憎悪を目の当たりにしたのは、初めてだった。自分に向けられたものではないのに、身がすくんだ。

 一体、何があったのか。

 ユリハナへの誤解を解くというのなら、それを確かめないわけにはいかない。けれど、ナズナは。自覚のないままに、それを知ることを恐れた。


 それに。

 それよりも。

 ナズナを打ちのめしたのは――――。


 あの時。

 舞台に立っていたのは、ユリハナと、リリアナと繋がるカトレアの、二人だけだった。

 ナズナは、観客ですらなかった。

 そこには、確かにナズナもいたのに。

 それなのに。

 別の部屋で、二人の舞台映像を見せつけられているだけのような疎外感。

 そう、疎外感。

 あの時、ナズナはただの部外者だった。

 ナズナのことなど、まるで目に入っていない風だったユリハナ。

 絆を感じているのはナズナだけで、ユリハナはナズナの名前も、もしかしたら顔すら覚えていないのかもしれない。ユリハナに助けられたことがあるのは、ナズナ一人ではないのだ。ただの生徒だけじゃなく、魔法少女の中にさえ、ユリハナに助けられたことのある者がいるのだ。


(あたしだけじゃない。あたしは、ユリハナの、特別なんかじゃない……)


 その事実に、現実に、またしても深く胸を抉られる。

 ならば、これから特別になればいいと一度は吹っ切ったはずだった。

 けれど…………。


 小さい頃に夢中になった、魔法少女アニメを思い出す。

 魔法少女ホーリーフラワーズ。

 闇の王に心を奪われて敵となったローズと主人公のアイリスは、前世で、固い絆で結ばれていた。仲間たちが、ローズを裏切り者だとなじっても、アイリスは最後までローズを信じ続け、ついにはローズを取り戻した。

 そのアイリスとローズに、自分とユリハナを重ねていた。

 自分とユリハナの間にも、前世からの絆があるような気になっていた。


(あたしが、一人で勝手に、そう思っていただけなんだ……。いつから、そんな風に思っちゃったんだろ? 魔法少女になれたからって、いい気になってたのかな。まだ、一人前になれてすらいないのに。あたしだけが、まだ……)


 胸が締め付けられる。

 涙が、止まらなかった。


 自分なんて特別ではないのだと、他ならぬユリハナ自身に突きつけられたこと。

 念願の魔法少女になれたのに、自分だけが、一人では戦えない半人前だということ。

 自分より後に魔法少女となったプリムラにも呆気なく追い抜かされてしまったこと。

 自分一人だけが、置いていかれてしまったこと。


 あの時、何もできずに置いていかれてしまった現実と、魔法少女としての実力的な意味で置いていかれてしまった現状がリンクして。

 底のない沼にはまって、抜け出せなくなってしまっていた。

 真っ暗で冷たい場所で一人蹲って、重たい何かに絡めとられて、抜け出せないでいる。


 …………そのうち、カトレアの言っていた大切な人というのはユリハナなんじゃないかとまで邪推し始めた。二人の間にこそ絆があるのではないかと考えて、その考えに傷つけられる。

 想い合っているからこそ、憎しみ合う二人。

 勝手にそんなフレーズを思い浮かべて傷つくという、どうしようもない悪循環。


 そこから抜け出せないまま、二日の休みは終わった。



☆ ☆ ☆


 放課後になると、再び桂花に声をかけられた。

「どう? 部活、出れそう?」

「あ、うん。今日は、ちょっと用事があるから、これで帰ろうかなって」

 同じ部活なわけでもないのに、どうして桂花はナズナの部活のことをこんなに気に掛けるんだろうと不思議に思いながらも、ナズナは質問に答えた。

 用事など何もなかったが、まだに出る踏ん切りがつかなかった。

 出たところで、銃の練習にもパトロールにも身が入りそうにない。それに、今カトレアの顔を見たら、とても平静を保てそうもなかった。

 何か、余計なことを言ってしまいそうで、怖かった。

「そっか。じゃあ、また明日」

「うん。また明日。あ、桂花ちゃんは、どの部活に入ったの?」

 ナズナの答えになぜか肩を落とした桂花が気になって、立ち去ろうとする桂花をつい引き留めてしまった。

 桂花の大きな瞳が、ユラユラと揺れながらナズナを見つめる。

「……………………リリアナ研究クラブ」

「そうなんだ。引き留めて、ごめんね。部活、頑張ってね」

 何とか笑みを浮かべて手を振ると、桂花は何か言いたそうに唇を動かしたけれど、結局何も言わずに、頷きだけを返して教室を出て行った。

「…………てゆーか。あたしたちもいるんだけど。ナズっち以外はガン無視か……」

「まあまあ。それよりも、いつの間に西野さんと仲良くなったの? 名前呼びしてるし」

 ずっとナズナの隣にいたのに空気扱いされたルカが渋面を作ると、睦美がそれを取り成した。

 二人にも、赤く腫れた目を心配された。放課後の活動のことを二人に話すわけにはいかないので、徹夜でホーリーフラワーズのDVDを観たせいだと説明してある。信じたのかどうかは分からないけれど、二人ともいつも通りにナズナに接してくれた。

「うーん。仲良くなった……のかは、よく分かんないんだけど。この間、下駄箱で話しかけられて、名前で呼び合うことになったっていうか。まだ、挨拶くらいしかしたことないんだけど」

 桂花に対するのよりは幾分か気を抜いて、ナズナは睦美に答えた。

 魔法少女とは関係のない二人と話していると、少し気がまぎれる。家で悶々としているよりも、学校に来てよかったとナズナは思った。

「ナズっちと仲良くなりたいのかな? 西野さん、まだクラスに仲のいい友達いないみたいで、いつも一人で居るし」

「うーん、どうなんだろ? でも、なんか。孤高の美少女って感じがするよね、桂花ちゃんって。人を寄せ付けないっていうか」

 桂花に声をかけたそうにしている子はいるのだが、桂花の方で一線を引いているようにナズナには見えた。

「あー、あたし。クラスは違ったけど小学校、一緒なんだよ。その時から、あんなだったような……。まー、あの美少女っぷりだし、もしかしたら男子がらみの女子同士のいざこざとかがあったのかもな」

 ルカが腕組みをして頷きながらしみじみと言う。ナズナと睦美は、ほぇーと目を丸くした。

「…………そう言えば、霊感少女っていう噂もあったような?」

「「霊感少女!?」」

 ナズナと睦美の声がハモった。

 目だけでなく、口も丸く開いている。

「うん。なんか、寺の娘らしいんだよ。たぶん、それでだと思うんだけど。寺の娘だから霊感少女って、小学生って単純だよな」

 ルカは噂を信じてはいないようで、あっけらかんと笑い飛ばしていた。

「しかし、西野さんって魔法少女であってもおかしくない美少女っぷりだよな。西野さんが魔法少女なら、霊感魔法少女ってことになるのかな? それは何か、カッコいいような、そうでもないような?」

「重ねればいいってもんじゃないと思うなー……」

 睦美が人差し指で米神を押さえながら、呆れた声を出した。

「霊感……魔法少女…………」

 顔を引きつらせながら、ナズナは呟いた。といっても、睦美と違って、ルカに呆れたからというわけではない。

 そんな子が現れたら、ますます自分の立場が無くなってしまう、と思ってしまったからだった。


(はっ。ま、まさか。プリムラが西野さんで霊感魔法少女だったりとか、そんなことないよね?)


 プリムラの顔を思い出そうとして。した、途端。頭の中に霞がかかった。


(あれ? あたし、今…………?)


 そして

 霞が腫れた時には。

 プリムラのことも、霊感魔法少女のことも、すっかり忘れていた。

「あ。あたし、もう帰るね。校舎の中にまだ人がいるうちに、外に出なくちゃ」

「あ、そうだな。引き留めてごめん」

「また、明日ね!」

 思い出したようにナズナが帰宅を告げると、ルカと睦美が笑顔で手を振った。

「また明日ね、二人とも」

 ナズナも手を振り返し、教室を後にする。

 廊下へ出て、階段に差し掛かったところで、ため息をつく。朝同様、重い足取りで、ナズナは下駄箱へと向かった。


(あたしは、これからどうしたらいいんだろう?)


 もうすぐ、長い連休がやってくる。

 このまま。“部活”をズル休みしたまま連休を迎えたら、たぶん、もうに出ることは、出来ないだろう。

 そうしたら、もう魔法少女には戻れないのだろうなと思った。

 …………それでもやっぱり、踏ん切りがつかなかった。

 何のために魔法少女になるのか、その意味を、見失いつつあった。

 シャツの下にこっそりつけているペンダント。服の上から、蕾のチャームをそっと抑える。

 天使リリアナは、何も答えてくれなかった。



☆ ☆ ☆


「ナズナ。私と一緒に部活に行こう」

 掃除を終えて、教室でルカと睦美と三人でおしゃべりをしていると、桂花に声をかけられた。

 なんだか、昨日もこんなことがあったような気がするが、何を話したのかまでは思い出せなかった。

「え、と。一緒に行くって言っても、あたしはリリ研なんだけど。桂花ちゃんは?」

 戸惑いつつ、そう答える。に出る決心は、まだついてはいない。

「私も、リリアナ研究クラブだから」

「あ、そうなんだ」

 ナズナが相槌を打つと、ルカと睦美が笑顔で手を振った。

「ナズっち、もう部活行くんだ」

「それじゃ、二人ともまたね」

「ええ、また」

 二人に頷きを返して、桂花はナズナの手を引いて廊下へと向かう。

「あ、あの。桂花ちゃん? どこへ……」

 なぜ自分が連行されているのか分からずに問いかけるが、桂花は答えない。

 廊下まで出ると、桂花は足を止めて振り向いた。ナズナの手首はまだ掴んだままだ。

「リリアナ研究クラブの部員が魔法少女だって、忘れたわけじゃないよね?」

「え?」

 ナズナは驚いて瞬きを繰り返す。

 桂花は険しい顔をして、一歩詰め寄ってきた。

 何を言っているんだろう?

 真剣な桂花の様子に気おされて、一歩後ろに後退る。背中に壁があたった。

「ユリハナのことは? 忘れちゃったの?」

「な!? 忘れたりなんて、しない!!」

 その名を聞いた途端、頭の中でスイッチが入った。

 モヤモヤしていたものが、一気にクリアになる。

 弾かれたように、桂花に向かって自分から足を踏み出し、怒鳴りつけるように叫ぶ。

 桂花は全く怯まなかった。真っすぐにナズナの目を覗き込む。

「だったら、ちゃんと部活に出てきなよ」

「っ!?」

 桂花の大きな瞳に映り込んだ自分がたじろいでいるのが見えた。

 桂花の言葉を素直に受け止めて純粋に反論できないと思っている自分と、何故桂花から部活の出欠を問い質されているのか分からない自分がいて、混乱する。

「このまま、部活に出てこなかったら、きっと。ナズナは魔法少女ではいられなくなる。魔法少女の資格がないって思われて、天使リリアナにチャームを取り上げられちゃうかも。そうしたら、自分が魔法少女だったことも忘れちゃうんじゃない? でも、その時は、きっと。すぐに代わりの魔法少女が現れる。そして、ヒナゲシのことなんて、きっと、みんなすぐに忘れちゃう。…………そうなっても、いいの?」

「な、なんで、そんな…………」

 さっきまでの勢いは消え去り、ナズナの顔が泣きそうに歪んだ。声が震えている。声だけじゃない。桂花に掴まれたままの腕も、足も。全身が震えていた。

 そんなはずない、とは言い返せなかった。

 震えていただけで何もできず、結局、ユリハナに助けてもらったことを思い出す。ヘビと戦うこともできない、弱虫で役立たずな魔法少女ヒナゲシ。天使リリアナに愛想をつかされてチャームを取り上げられても、文句は言えそうもない。

「ユリハナの真実を、明らかにするんじゃなかったの?」

 俯きかけたナズナが、ハッと顔を上げた。

 その通りだとは言えなかった。

 そうしたい気持ちは、まだ、ある。

 でも。自分にその資格があるのか、そんな力があるのか。迷いがあった。ユリハナとの絆を、信じて疑ってなかった頃のように、何の根拠もなく胸を張って答えることが出来ない。

 脳裏に刻まれた、あの時の二人の姿が。

 お互いがお互いしか見えていない、ユリハナとカトレアの姿が。

 ナズナを底なし沼に叩き落すのだ。

 もう、以前のように、根拠のない未来を信じることは出来なかった。

 涙が零れそうになって、それを誤魔化すようにナズナは目を伏せた。

 逃げるナズナを、桂花は許さなかった。

「あなたがやらないなら、私がやる」

「…………え?」

 決して声を張り上げているわけではないのに、力強い声だった。

 それは宣言……いや、宣戦布告だった。

 考えるより先に、目線が動いていた。

 桂花の、目線を捕らえる。

 零れ落ちそうに大きな瞳が、真っすぐにナズナをとらえていた。

 強い信念が込められた瞳が、ハッタリではないとナズナに告げる。

 必ずそうするという、強い決意がナズナを射貫く。

「あなたがやらないのなら、私がやる。私が、ユリハナの真実を解き明かす。永遠の放課後に捕らわれているユリハナを、私が助け出す。私がその呪いを解く。私が、ユリハナをこの学園から救い出す。ナズナでもヒナゲシでもなく、私が。それで、いいんだよね?」

「そ、そんなのっ! そんなの、イヤだっ!」

 叫んで桂花を突き飛ばした。桂花は少しよろけたけれど、何とか転ばずに踏みとどまる。

「そんなの、イヤっ!! ユリハナは、ユリハナはっ……! あた、あたしが、あたしが助けるの!」

 頭の中で何かがはじけ飛んだ気がした。

 ぐちゃぐちゃと悩んでいたことが、すべて吹き飛んだ。


 ユリハナの真実を解き明かして、ユリハナを救い出す。

 その役目は、誰にも渡したくない。誰にも譲りたくない。

 その役目は自分のものだという、燃えるような想いが、腹の奥底から湧き上がってくる。


 リリアナの声が聞こえたわけではないし、廊下にはまだ桂花だけでなく他にも生徒がいるのは分かっていたが、そんなことはもう構わなかった。

 制服の上から、チャームに手を触れる。

 湧き上がる感情のままに、呪文を唱える。


開花オープン! ヒナゲシ!!」


 ヒナゲシを模したチャームから、白い光が溢れだす。

 天使リリアナを思わせる、眩い白い光。

 光が消え去ると、チャコールグレーの制服を着た少女は姿を消し、純白のブレザーに身を包む魔法少女ヒナゲシがそこにはいた。


(リリアナ様。今度こそ、本当に、本当に誓います! あたしはもう、絶対にあきらめません。何としても、一人前の魔法少女になって、あたしがユリハナの真実を解き明かしてみせます。他の誰かじゃなく、このあたしが!)


 たとえユリハナがナズナのことを覚えていなくても。

 ナズナがユリハナの特別じゃなくても。

 それでも。

 その役目は、誰にも渡したくない。

 奪われたくない。


 それに。

 ナズナがユリハナの特別ではなくても。

 ナズナの特別がユリハナなことに変わりはない。

 だから。

 ユリハナの特別には、これからなればいい。


(そうだよ。最初から、そうだったじゃない。魔法少女になって、ユリハナを守る。誤解を解いて、ユリハナのパートナーになる。それが、あたしの願い。何度だって誓う! あたしは、もう諦めない!)


 消え去ったはずの炎が、ナズナの胸に再び灯っていた。

 以前よりも、ずっとずっと、熱く強い炎が。

 激しく燃え狂った――――。


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