その日は澄んだ青空でした。
フィラネモはそんな青空に負けじと咲き誇っていました。
フィラネモの丘の一角に大きな木がたっており、その木陰に身を置き、美しい丘を眺めます。
「あの、カミュスヤーナ様」
「なんだ?」
「本日、アルスカイン様はご一緒されなかったのですね」
「……誘ってはみたのだが、二人の逢瀬を邪魔するつもりはないので、遠慮します。と断られた」
「二人の逢瀬ですか……?」
カミュスヤーナ様は私に見つめられているのに気づくと、わずかに顔を赤くして視線をそらしてしまわれました。
「アルスカインは聡くてな」
カミュスヤーナ様は私の水色の髪を優しくなでてくださった後、大きく息を吐いて、私を見つめました。
「テラスティーネ。話がある」
「はい、なんでしょう?」
私は小首をかしげて、カミュスヤーナ様のお言葉を待ちます。
カミュスヤーナ様は言葉を続けることをためらわれているようでした。自分のこめかみに手を当て、うーんと唸っています。
ようやく決心したように私を見つめられます。その視線の強さに私の鼓動も高まるのを感じました。
「私は、テラスティーネ、君が好きだ」
「!」
私を見つめるカミュスヤーナ様のお顔が赤くなり、私の顔も合わせて赤く熱を持つのを感じました。のどの渇きを覚えます。
「ずっと私のそばにいてくれないだろうか。君のことは私が幸せにする」
「……はい。喜んで」
カミュスヤーナ様は私の言葉にそれは幸せそうに笑って、私の背中に手をまわし、自分の胸元に身体を引き寄せられました。
カミュスヤーナ様の早い鼓動を感じます。きっと私の鼓動も同様に早くなっていることでしょう。
「テラスティーネ」
カミュスヤーナ様のかすれた声が、私の耳元で響きました。
「はい」
「そなたに口づけてもいいだろうか?」
「……はい」
恥ずかしくてカミュスヤーナ様の顔が見られません。
目を伏せていると、カミュスヤーナ様の身体がわずかに離れ、私の頬から頤に沿って、彼の手が当てられました。頤を上に向けられてしまい、私はカミュスヤーナ様と目を合わさざるを得なくなりました。
目尻に赤みが差し、赤い瞳には強い光が宿っています。
なんて、きれい。
赤い瞳に視線が吸い寄せられ、緊張から私は身体をこわばらせました。
近づく目が軽く伏せられました。長いまつ毛。鼻先が触れ合うほどに近づいて、私は唇にかさついた柔らかい感触を感じたのです。