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目が覚めたら夢の中
目が覚めたら夢の中
説那
異世界恋愛ロマファン
2025年01月01日
公開日
3.1万字
連載中
真っ白な空間で目を覚ました水色の髪を持つ女の子。
彼女はそこに至るまでの記憶を失っていた。
そこに彼女のことを知る青年が現れる。
青年は、彼女が魔王に身体と魔力を奪われており、そのために幼くなっていると言うが・・・。

第1話 第一夜の1

目を開くと、真っ白な空間にいた。

「ここ……どこ?」

来たことのないところだ。それどころか見覚えもないところだ。

ここはどこなんだろう?そして私はなぜここにいるのだろう?

床に寝ころんでいたようで、ゆっくり体を起こしてみる。


顔の横に水色が見えた。

視線を向けてみると、それは髪だった。

自分の髪にそっと触れてみる。さらさらとした髪質は触っていてとても好ましい。


自分の髪に触れた手の大きさにぎょっとした。

認識していたよりも明らかに小さいのだ。

「えっ?」

顔や身体を見まわし、ペタペタと触れてみる。


服は真っ白なワンピースのようだ。飾りなどやボタンもないシンプルなもの。

靴も靴下も履いていない。

顔は頬がふっくらしているかなとは思う。でも小さくなった両手で覆えるのだから、顔も小さくなっているのだろう。


姿見がなく、外から見られないので、実際どうなっているのかはわからない。

でも多分私は幼くなっている。


自分の周りをキョロキョロと見まわしてみた。

床に触れるとふかふかとした敷物が引いてあるようだ。

敷物は白く、床に同化するかのように、一面に引かれている。

四方は壁に囲われており、一面だけ黒くなっている。壁には窓も扉もないようだ。

しかもかなり広い。


その時遠くから人が歩いてくるのが見えた。

私の前までくると、片膝をついて、顔を覗き込んできた。

男の人のようだ。

黒い髪、両目はグレーの布で覆われていて、これでは目が見えないのではないかと思う。

でも顔を覗き込んできたということは、彼は前が見えているのだろうか?

顔の造作は整っており、いわゆる美形だ。鼻筋も通っているし、目の覆いがなくとも、その辺りを歩いていたら人が振り返るような男性。


「はじめまして?」

とにかく初めての人だ。何か聞けるかもしれない。

声をかけられて、相手はぴくっと身体を震わせた。

驚かせてしまっただろうか?


「はじめまして、ではない」

声には親しい者に向ける優しさが含まれていた。でもこの人に会った覚えはない。

「姿は変わっているが、テラであろう?」


テラというのが、私の名前だろうか?

そもそも私の名前は……なに?

ここにいるまでに至った経緯も名前すらもわからない現実に、私は血の気が引く思いがした。



「何も覚えていないだと?」

私の話を聞いた彼は、そうつぶやいて、大きく息を吐いた。こめかみに指先を当て、うなった後、私を見やった。


「君の名前はテラスティーネ。普段はテラと呼ばれている。確か、齢は15だったか。今の君はどう見ても3歳くらいだが」

「テラスティーネ」

まったく聞き覚えがない。

「ここはどこですか?そしてあなたは誰?」

「ここは私の夢の中。私はカミュスだ」


彼が手を払うと、何もなかった空間に大きな姿見が現れた。

姿見にはカミュスと、水色の髪を足首くらいまで長く伸ばした3歳くらいの幼女が写っていた。

「これが私……」

姿見の前に進むと、自分の顔をしげしげと眺めてみる。

白い肌に青い大きな瞳。長いまつ毛。お人形さんみたい。血色が悪いせいかより人形めいて見える。


横に立ったカミュスを振り仰ぐ。

「あなたはその状態で目が見えるの?」

ああ、と答え、カミュスは口の端をあげた。

「ここは夢だから、これは必要なかったな」

カミュスは両目を覆っていた布を外した。布を外すときに両目を片手で覆い、ゆっくりとその片手も外す。閉じられた両目が開かれると、赤い虹彩がこちらに向けられた。


彼は赤い瞳を凝らすように細めた。

「君は身体を奪われたのか?それは実体ではないようだ」

「は?」


カミュスはかがんで、私の頬に手を伸ばす。近づけられた手は私の頬に触れそうになって、そのまますり抜けた。

カミュスの顔が不服そうにゆがむ。私はその様子を見て、首を傾げる。

私は先ほど自分の頬に触れている。そのふっくらした様子も手に感じた。

自分では触れるのに、他の人には触れないらしい。


「せっかくやわらかそうな頬なのに」

ボソッとカミュスは呟くと、仕方ないとばかりに私の前に片足をつき、私の頬に手をかざした。

うっすら掌が光って、かざされた頬が温かく感じる。

掌の光が消えると、カミュスはそのまま私の頬をつまんだ。


「いひゃい」

「やはりやわらかい。つかみごこちがいい」

手はすり抜けず、私の頬をぐにぐにとつまんでいる。私の目尻にうっすらと涙がにじんできたのを見て、カミュスは手を離した。

「なかなかない手触りに夢中になってしまった。すまぬ」

カミュスはにやりと笑んで、先ほどまでつまんでいた頬にそっと口づけた。

柔らかい感触がじんじんとした肌にあたる。


「!」

カミュスの顔が離れたので、私は頬を抑えて、彼から距離をとる。

口づけされた?なんで?


口をハクハクさせていると、カミュスは頬をつまんでいた方の手をひらひらとふる。

「身体とともに魔力も奪われたようだな。だから身体が小さくなっているのだろう」

いくら私の夢の中とはいえ、身体を元に戻すことはできぬようだ。とカミュスは言う。


「目を離したすきにこれだから……。まったく厄介だ」

カミュスは手を払って、ソファーとテーブル、その上に紅茶とお菓子を出現させる。

「話も長くなりそうだし、そこに腰を下ろせ」

顔が赤くなっている私を無視し、カミュスはソファーを視線で指し示した。


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