(直接生命エネルギーを流し込むために添い寝するんだな)
私がレイとリカードを回復していると頭の中に邪神の声が響く。
回復魔法を止めて添い寝しろとはどういうことだろう?
(以前、小僧共を助けたときも抱きしめただろう。我のエネルギーを流し込む範囲を大きくするために、抱きしめながら添い寝をするのだ)
身体を温めるのに添い寝をするのと同じような理屈のようだ。
しかし、実際過去にそれでフランツ達が助かっている以上、邪神の言うことは確かなのだろう。
生命力の低さから順番に考えるとレイ、リカード、フランツの順番か。
私は回復の手を止めて、気を失ったままのレイのベッドに入り込んで優しく抱きしめる。
「おいっ、あんた何やってんだ?」
突然の私の行動にダイが驚きの声を上げる。
しかし、レイに添い寝した私の身体から回復エネルギーが溢れ出し、それがレイの身体を包み込む。
「なんだそれ? 全身から魔法力が溢れ出してる?」
ダイが信じられないといった表情で私とレイを見つめる。
「そうだよ。ちょっとした特殊スキルで、こっちのほうが回復力が高いんだ」
ダイの問いかけにとりあえずそう答える。
神は神でも邪神なわけだが、神の奇跡ということで間違いはない。
「フランツのほうは、このままおれが回復してれば良いのか?」
「いや、生命力を考えるとリカードのほうが危険だから、無理をしない程度にリカードを回復してくれると助かるよ」
私の言葉でダイは対象をリカードに変えて回復を続ける。
といっても、ダイの精神力もそろそろ限界なはずだから、そう長くは続けられないと思うけれど。
しばらくすると、精神力を使い切ったのかダイがベッドに倒れ込む。
私は一旦レイのベッドから抜け出すと、ダイをベッドに横たえる。
「疲れていたね。ダイもゆっくり休んで回復してね」
私はダイの頭をなでながら、優しく声を掛ける。
(さて、人目もなくなったところで本気を出させてもらおうか)
レイのベッドに戻ると邪神の声が頭に響き、さらに回復エネルギーが増す。
邪神の力を借りているから私の疲労感も相当なはずだが、意外とそこまで疲れを感じていない。
(今回はもう、小僧はお前の眷属になっているからな。お前が小僧の生命力を回復させるのと同時に、お前も小僧から精神力を回復させてもらっているのだ)
なるほど、つまりは抱きしめ合っている限り、ほとんど永久機関で回復ができてしまうのか。
(そういうことだ。お前が生きている限り、小僧共が死ぬことはないだろう)