「今日はオレが看病してあげるよ」
次の日、今度はレイが私に付きっきりになってくれた。
いつもはツンツンしているレイだが、この日はかなり献身的に対応してくれた。
食べ物や飲み物を持ってきてくれたり、トイレに行くときは支えになってくれたり。
華奢なレイだが、フランツよりも身長があるから肩は借りやすい。
「今日はオレと一緒に……寝るぞ」
レイがふてくされたように、照れくさそうにそう言う。
別に添い寝までしてくれなくても大丈夫なのだが、丸三日眠っていたのでまた昏倒しないか心配らしい。
心配してくれる気持ちが嬉しいし、ショタと添い寝できるのも嬉しいし、断る理由はない。
心配してくれているのによこしまな気持ちを抱いてしまっているのは申し訳ないが。
「身体、本当に大丈夫なの?」
「うん。まだ全快はしていないけれど、食事もちゃんと摂られるようになったしね」
レイが横で寝ながらかけてくる問いに答える。
すると、レイが確認するように私の腕を掴んでくる。
「筋肉ないね」
「それは元々だよ。私も魔法職だし」
そんな他愛のない話をする。
ずっと寝込んでいると筋肉量も低下するが、三日くらいならそう変わらないだろう。
「それって、オレに貧弱だって言いたいわけ?」
「そんな言い方はしてないでしょ?」
なぜかいきなり絡んでくるレイ。
最近は優しい言動が多かったので、ちょっと懐かしい気分だ。
「オレだって冒険者だから、それなりに筋肉はあるはずだよ」
レイはそう言いながらくっついてくる。
単にくっつくための口実だったのかもしれない。
私はレイの筋肉を確認するように腕や肩を触ってみる。
しかし、案の定というかエルフでメイジのレイには筋肉はあまりついていない。
ただ、お肌はすべすべですごく触り心地が良かった。
「お返しだよ」
レイはそう言うと、今度は抱きしめるように腕を背中に回し、もう片方の手で胸のあたりを触ってくる。
自然とレイの身体が私の腕の中に包みこまれるような形になる。
思わず、私もレイの背中に手を回してしまう。
「何? オレのこと、こども扱いしてる?」
「そんなことないよ。レイがくっついてきたから思わず……」
「思わず抱きしめるとか、やっぱりこども扱いしてるでしょ」
そう言いながらも、その表情は少しはにかんでいるように見える。
そんなレイがかわいくて、そっと頭を撫でる。
以前は大人の手を怖がっていたレイだったが、今はされるがままになっている。
それだけ私のことを信用してくれたということだろうか。
結局、レイは私から離れることはなく、私の胸に顔を埋めたまま眠ってしまうのだった。