話を終え、私は少し物思いにふけっていた。
なぜ、ここまでフランツ達は死にかけるような目に遭っているのだろう?
そんな事を考えていると、フランツが私のそばにやってきた。
「あの……今日は一緒に寝てもいいでしょうか?」
「え?」
フランツの言葉に、驚いて思わず問い返してしまう。
「その……もうタカヒロさんが無事なのはわかっているのですが、まだ自分で起き上がるのも辛いでしょうし。何か、手助けできることがあればと思いまして……」
下を向いてもじもじしながらそう告げるフランツ。
なんというか、その恥ずかしがっている姿がめちゃくちゃかわいい。
とはいえ、あのフランツがこんなことを言い出すくらいには心配をかけたし、今も心配されているということなのだろう。
「ありがとう。もちろん構わないよ。今の状態だと、トイレにも一人では行けないかもしれないから」
「僕が支えます。なんなら、おぶって連れていきます。タカヒロさんが不自由ないように力になりたいんです」
前のめりにそう告げてくるフランツ。
そこまでされると恥ずかしい気もするが、実際洞窟から村まではフランツがおぶってくれたのだろうと思う。
「ありがとう。本当に助かるよ」
私は感謝の言葉をフランツに伝えると、少し横にズレてフランツが寝られるスペースを開ける。
フランツは少し逡巡しているようだったが、そのスペースに身体を横たえた。
緊張しているようで、ベッドギリギリまで身を引いて距離を開けている。
「フランツ、私と一緒に寝るのは嫌?」
「そんなわけないじゃないですかっ」
あえて意地悪な質問をすると、フランツは私の言葉に被せるように否定してくる。
「私も嫌じゃない。むしろ、嬉しい」
そう言いながら、腕を伸ばして頭を撫でてやる。
フランツは顔を真っ赤にして目を見開いていた。
そのまま、フランツの手を握る。
一瞬、ビクッと手を引いてしまったが、恐る恐ると言った感じでフランツから手を繋いできた。
「フランツの手は、がっしりしているね」
「毎日、槍を振るっていますから。タコになっていると思うので、触り心地が良くないと思いますが」
「そんなことないよ。それだけ頑張っているフランツの手は、とっても安心感がある」
小柄だからか手の大きさもまだ私より小さいのだが、あえてフランツにはそう伝える。
守ってあげたいかわいい少年に変わりはないが、フランツの場合は自分も守りたいという気持ちも強いだろうと思うから。
一緒のベッドに入りながら、ただ手を繋ぐだけという甘酸っぱい距離感に、逆にドキドキしながら眠りにつくのだった。