三人はしばらく抱きついたまま離れてくれなかったが、夕食の時間になって開放してくれた。
そうは言っても、三人とも私と同じ部屋に料理を運び込んで食事を取っていたのだが。
「すみません。タカヒロさんはまだ満足に食事ができない状態なのに、僕達だけが食事をしてしまって」
「気にしないで。むしろ、しっかり栄養をつけてみんなも回復してもらわないと」
「そのことなんだけど、オレの記憶だとあのアコライト魔族に殺された気がするんだよね」
「おいらも、すごい力で攻撃されて死んじゃった気がする」
「それに関しては僕も、なんとか反撃したけれど返り討ちにあってしまったと思うのですが」
三人の瞳がまっすぐにこちらを見つめてくる。
はてさて、どう説明したものか。
正直に『邪神の力でアコライト魔族を撃退した』とは言えないよなあ。
「う〜んと……あの時、私ももうアコライト魔族に殺されると思ったんだよね。攻撃手段もないし、ただ神に祈ることしかできなかったんだ。すると御神体が光り輝いて、不思議な力が私に宿ったんだ」
嘘を付くのが苦手な私は『邪神』の部分を『神』に変えて話すことにした。
辻褄を合わせるために、多少の作り話はしているけれど。
「何とかその力でアコライト魔族を倒すことができて、回復魔法もいつもとは比べ物にならない威力が出て、みんなの命を救うことができたんだ。反動で私は気絶しちゃったんだけど」
「すごいね。神様の力を借りるなんて、すごーくレベルが高くないとできないことでしょ?」
「神の力とは言え、相当タカヒロさんの身体に負荷をかけてしまったようですね」
「ちょっと出来すぎな気もするけど、実際それくらいの奇跡が起きないとオレ達は生きてないか……」
私の作り話にリカードは素直に感心し、フランツは反省する。
冷静なレイは違和感を感じていたようだけど、無理やり納得させているようだった。
「にーちゃんはもしかして、ものすごく強くなっちゃったの?」
「あの時に感じた神力はもう感じないから、もう元の強さに戻っていると思うよ」
「そのほうが良いと思います。いきなり強力な力を持ってしまっては、タカヒロさんの身体が持たないかもしれません」
リカードの言葉に私は頭を振る。
フランツはなかなか鋭く、邪神が言っていたことと同じようなことを言ってくる。
レベルに見合わない力は身を滅ぼすんだろうな。
「これで、オレ達はタカヒロに二度も命を救われたことになるね」
「そーだね。おいら達、にーちゃんに助けられてばかりだよ」
「本当に。タカヒロさんに迷惑ばかりかけてしまって、本当にすみませんっ」
三人が私に感謝の言葉を告げてくる。
私としては三人を助けるためにこの世界に来たわけなので役に立っているのは嬉しいのだが、いくらなんでも序盤の冒険で命の危険が起きすぎているのは少し気になった。