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第12話 邪神

(素晴らしいな。貴様の身体は我の神力がよく馴染むようだ)


 私の頭の中に邪神の声が響く。


(だが、先程のアコライトよりもさらにレベルが低いようだな。我の力を行使し過ぎれば、すぐにその命が尽きるぞ)


 邪神はなぜか親切にもそう忠告してくる。


(宿主のお前が死ねば、我もこの世界に干渉できなくなるからな)


 邪神が心を読んだようで、私の疑問に答える。




(今、絶望されては我の影響力が強まりすぎて死に至るから教えてやろう。貴様とともにいた小僧共、このまま放置すれば死ぬぞ)


 邪神の言葉に慌ててリカードのもとへ近づく。


 回復魔法の手を止めたので、死にかけているのかもしれない。


(そもそも、我の力で傷つけられた者は簡単には回復しない。だが、すぐには死なないから一箇所に集めろ)


 邪神の言葉に従い、ボロボロになったリカードをフランツの側に寝かせる。


 その際にフランツの様子を確認すると、想像以上にやけどの状態が悪かったのか、額に大粒の汗をかきながら苦しんでいる。


 慌ててレイの側にも行く。


 レイも口から泡を吹いて痙攣している状態で、かなり危ない状態であることが想像できた。


 慌ててフランツの側に寝かせる。




(小僧共を助けるためには、お前の眷属にするしかないな)


 眷属……吸血鬼が血を吸って吸血鬼を増やすようなものか?


(察しが良いな。貴様は我を宿し、神の力を得た。血を吸う必要はないが、その力を小僧共に流し込むことで繋がりが生じ、小僧共も我の力の一端を借り受けることができる)


 私の……というより、邪神の眷属になるということか。


 当然、何かしらの代償があるのだろうが。


(もちろんだ。だが、そうしなければ小僧共は死ぬ。ひとまず、貴様の命が無事ならば小僧共が死ぬことがないことは約束してやろう)


 随分とうまい話な気がする。


 だが、それしか方法がないことも事実なのだろう。




(話が早いな。まだ我の力を操ることはできないだろうから、小僧共を物理的に抱きしめろ)


 私は邪神の言った通りにする。


 まず、フランツを抱きしめると自分の周りにあった禍々しいエネルギーがフランツに流れ込む。


 続けてレイ、リカードも同じように抱きしめることでエネルギーが流れ込んだ。


 結果、私と三人は禍々しいエネルギーによって繋がる。


(上出来だ。もう一度言うが、貴様の命が無事なら小僧共が死ぬことはない。逆に貴様が死ねば小僧共も死ぬ。せいぜい、自分の命を大切にすることだ)


 邪神の言葉に背筋が冷たくなる。


 フランツ達の生死を自分が握っているようなものなのか。


 これでは、恐ろしくて冒険など続けられない。


(レベルを上げて我の力を引き出さぬのなら、我は別の者に乗り移るだけだ。そうなれば、貴様はともかく小僧共は我の力を失ってすぐに死ぬぞ)


 邪神の言葉にさらに背筋が冷たくなる。


 つまり、冒険者を続けてレベルを上げるという選択肢しか残されていないということだ。


(貴様は元々そのつもりだったのではないのか?)


 言われてみれば邪神の言う通りではある。


 むしろ、本来ならば全滅していたところを助けられたと考えるべきなのか。


(邪神である我は人助けなどせぬ。たまたま貴様が宿主として優秀であっただけだ。我に見限られぬように、せいぜい励むのだな)


 その言葉を最後に、邪神の声が途切れる。


 だが、邪神をその身に宿した反動なのか私の気力もそこで尽きてしまい、意識は闇の中へと落ちていった。

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