「……はあ……はあ。レイ! 大丈夫か!」
必殺の一撃を放った疲労感からか肩で息をした後、すぐにレイのもとに駆け寄ろうとする。
しかし、そんなフランツの上半身を高熱を帯びた閃光が直撃する。
「うわあああぁぁぁ!」
堪らず、絶叫を上げながら吹っ飛ばされるフランツ。
ヘビーレザーアーマーを吹き飛ばし、上半身にやけどを負って仰向けに倒れてしまう。
「不意打ちとはなかなかだが、それでも今の私には通用しない」
あれだけの攻撃を受けたアコライト魔族だが全くダメージを受けた様子はなく、今度はフランツのもとへと歩み寄る。
「うっ……あっ……」
苦しげに呻くフランツの身体をしげしげと見つめるアコライト魔族。
「たまにはガキ相手も面白いか……」
「なっ……何を……」
アコライト魔族は痛みで動けなくなったフランツの下半身に手をかける。
「くっ……殺せ……」
これから行われることを予期したフランツは、絶望から弱気なセリフを吐く。
三人ともやられてしまい、今動けるのは私だけ。
だが、回復の手を緩めるとリカードは死んでしまいそうな状態だった。
かと言って、このままフランツが犯されるのを放置するわけにはいかない。
私の中でドロリとした暗い感情が芽生える。
やつを倒す力がほしい。
異世界に転移してもチート能力を得られなかった私だが、今こそチート能力に目覚めたい。
私がそんな淡い願いをしている最中も、フランツはアコライト魔族にズボンを脱がされ、今にも犯されそうになっている。
私の中の暗い感情はさらに高まり、倒したいという気持ちから殺したいという憎しみにまで発展する。
その時、頭の中でなにか声が響いた。
(良い感情だ。貴様のほうが我の力を扱う器としてふさわしい)
アコライト魔族の周りに生じていた禍々しいエネルギーが私の身体を包み込む。
なんとも言えない万能感を感じ、逆に恐ろしくなる。
「なっ! どういうことだ!」
フランツに意識を集中させていたアコライト魔族は、突然自らのエネルギーが私のほうに移動したことに驚きの声を上げる。
慌てて私のほうに手をかざし、フランツをやけどさせた光熱を帯びた閃光を私に向かって放つ。
だが、それは私の身体に届く前に掻き消えた。
「なぜだ! なぜ貴様にまで神の力が!」
驚いて狼狽するアコライト魔族。
私はそんなアコライト魔族に向かって手をかざすと、逆に光熱を帯びた閃光をアコライト魔族に放つ。
その閃光はアコライト魔族の放ったものよりも明らかに強力で、一瞬にして相手を焼き尽くした。