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第10話 圧倒的な力

「招かれざる客か。だが、少し遅かったな。儀式はすでに完了した」


 目の前まで迫ってきた私達に対し、アコライト魔族は不敵な笑みを浮かべてそう宣言した。


 その宣言通り、御神体からは禍々しいエネルギーが溢れ始めている。


「さあ、私を依り代して今こそ復活するがいい!」


 アコライト魔族が恍惚とした表情でそう叫ぶと、溢れ出したエネルギーが空中で形作り始める。


 だが……。


「エアリアルスラッシュ!」


 レイが問答無用でアコライト魔族に風の魔法をぶつけた。


 短剣や槍はともかく、レイの魔法なら十分届く距離である。


 しかし、空中で形作り始めたエネルギーがアコライト魔族の身体を覆い、レイの魔法を弾いてしまう。


「愚かなり。我が神が降臨すれば、貴様ら虫けらなど一瞬で滅びるのだ!」


 そう叫びながらアコライト魔族が手を前に突き出すと、衝撃波によって私達は吹っ飛ばされた。 


「もはや貴様らに抵抗する術なし。まずは生意気なエルフの小僧をくびり殺すか」




「させるもんかっ」


 アコライト魔族がゆっくりと歩きながら、レイのほうへと向かう。


 しかし、いち早く立ち上がったリカードが攻撃を仕掛ける。


 だが……。


「無駄なあがきよ」


「ごほっ!」


 両手の短剣で斬りつけるが、また謎のエネルギーで塞がれてしまう。


 そのまま、腹を蹴り上げられて空中に飛ばされる。


 刹那、一瞬でリカードより高い位置に飛んでいたアコライト魔族は吹っ飛んできたリカードをかかと落としの要領で地面に蹴りつける。


「うわあぁぁぁ……」


 勢いよく頭から地面に叩きつけられたリカードは、上半身を地面に埋まらせる。


 両足がまるで地面から生えているような状態だ。


「リカード!」


「うっ……あっ……」


 私は慌ててリカードのもとに駆け寄る。


 なんとか地面からリカードを引き抜き、ヒールの魔法をかける。


 プロテクションの魔法もかけていたはずなのに、リカードのダメージは甚大だった。




「くっ……エアリアルスラッシュ!」


「無駄な抵抗をするな」


 レイが近づけさせまいと風の魔法を放つが、全く意に介さず歩みを進めるアコライト魔族。


 やがてレイのもとにたどり着くと、おもむろにその首を掴む。


「ぐっ……あっ……」


 レイは苦しげに呻きながら、脚をバタつかせる。


 だが、アコライト魔族の手は緩まることなく、そのままレイの首を絞め続ける。


 やがて、レイの身体から力が抜け落ちてしまった。


「つまらん。もっと苦しめてやるべきだったか」


 脱力したレイを放り投げると、心底つまらなそうな表情で振り返る。




 だが、その瞬間……。


「ギガテンペスト!」


 背後から近づいていたフランツが、必殺の一撃を放つ。


 毛むくじゃらの魔物の胸を刺し貫いた一撃が、油断したアコライト魔族の胸に直撃する。


 周囲の空気を渦状にしてまとった強力な一撃は、アコライト魔族を吹っ飛ばす。


 おそらく、すぐにレイを助けに行かずに渾身の力を込めて敵を倒すことに集中したのだろう。


 フランツが非情に徹した一撃によって、圧倒的な力量差による蹂躙はなんとか止まるのだった。

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