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第06話 小さな嫉妬

「タカヒロさん、おはようございます」


 ところが、登り坂の上にある村を訪れるのに思いのほか疲れていたのかぐっすり眠ってしまっており、フランツに起こされてしまった。


 ちょっと恥ずかしい。


 でも、朝から金髪美少年に起こされるというのは、かなり贅沢なシチュエーションである。


 騎士の家の出ということもあるのか、いわゆる王子様的な雰囲気のあるフランツなので、まるで乙女ゲームのキャラクターに起こされたような感覚になる。 




「裏に小さな川がありますから、そこで顔を洗いましょう」


 フランツに案内されて外に出ると2mもないくらいの小さな川がある。


 しかし、川で顔を洗うとはさすが異世界、中世ファンタジーである。


 それはそうと、まだ寝巻き姿のフランツは細身ながらも引き締まった身体つきだった。


 ウォーリアということなので、しっかりと身体を鍛えているのだろう。


 袖なしのシャツを着ているので、腕のしっかりと筋肉がついていることがわかる。


 それでもまだ成人男性に比べると骨格が出来上がっていないので、ショタコンとしては絶妙な感じに美しいプロポーションだった。




「あの……リカードのこと、迷惑じゃないですか?」


 そんなフランツの肉体美を眺めながら顔を洗っていると、フランツが少し戸惑いながら声をかけてくる。


 昨日、毛布に入り込んできたことを言っているのだろう。


 このパーティーのリーダーであるフランツは、メンバー全体のことをしっかりと考えている。


「別に迷惑じゃないよ。あそこまで素直に甘えられると、逆に嬉しい」


「素直に甘える……」


 私の言葉に、フランツは少し思案顔になる。


 そして何を思ったのか、一歩近づくと私の肩に頭を当ててきた。


「フランツ?」


「僕はリカードのようにはできませんが、それでも……」


 少し顔を赤らめながら、恥ずかしそうに見上げてくるフランツ。


 私は思わず、フランツの頭を優しくなでてしまう。


「あ……」


 フランツは小さな声を上げるが、私の手から逃れようとはしない。


 驚いたように目を大きく見開いているものの、ほんのりと顔を紅潮させながらもされるがままになっていた。


「フランツの髪は柔らかいね」


「……そうでしょうか」


 リカードのように素直に抱きついてくることはできないようだったが、恥ずかしがりながらも嬉しそうな表情を見せてくれている。


 酔ったときはあんなに甘えん坊だったのにと思ったりもしたが全然記憶がないらしい。


 シラフの状態でもいつかはもっと素直に甘えてもらえるように、これから距離を縮めていきたいものである。


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