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第11話 意外な一面

 宴会場に戻ると、村人達に囲まれた中でぐったりとテーブルに突っ伏しているフランツがいた。


 横の席に座って観察すると、いつもは小麦色の肌をしているフランツが、今は全身真っ赤になっている。


「フランツ? フランツ? 大丈夫?」


「タキャヒィリョしゃん?」


 ぐったりしているフランツに声をかけると、とろんとした目でこちらを見つめてくる。


 泥酔して口も回っておらず、もはや誰だかわからないような名前で呼ばれる。


「さすがにもう限界だね。部屋に戻って休もうか」


「あい……」


 私の言葉に、フランツは小さく同意する。


 おぶって行こうかと思ったが、小柄とはいえ筋肉質なことと泥酔して身体に力が入っていないので重い。


 まあ、残念ながらインドアな私の筋力不足もあるが。




 身長差があって肩を貸しづらかったが、なんとふらつく足取りでフランツの充てがわれた部屋へと入る。


 そのままベッドの上に寝転がらせると、フランツは辛そうに荒い呼吸をしていた。


「あちゅい……」


 肩で息をしながら相変わらず舌っ足らずな口調で呟くフランツ。


 額に手を当てると体温も非常に高くなっていることもあり、私は服を脱がせることにした。


 フランツを寝かせたベッドに自分も上がり込むと、まずは上半身のシャツを脱がせてやる。


 幸い、宴会前に防具の類は外していたので、裾を持って上に上げていくだけで脱がすことができた。


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 もっとも、服をめくりあげるたびに引き締まった割れた腹筋、しっかりと鍛え上げられた胸筋、成人している割に全然毛の生えていない脇などが視界に入り、それだけでイケナイコトをしている気分になってしまったが。


 今も服を脱がせた関係で少し大の字のように横たわって荒い呼吸をしているフランツが、あまりにも情欲的でヤバい。


 また、顔だけじゃなく身体全体が赤くなってしまっているのも普段とは違う色気を醸し出していた。


「おっと」


 思わずフランツの半裸に見とれてしまっていたが、ベッドに寝かせているのに靴を脱がせるのを忘れていた。


 上半身を意識しないためにも、足元へと移動して靴を脱がせてやる。だが、脱がせた靴から出てきた足はしっとりと濡れており、また足裏まで真っ赤に染まっている姿もやはり情欲的であった。


「ごめんね」


 少年の裸足好きとしてはこんな状態の足裏を触らないわけにはいかない。


 小さく謝罪の言葉を口にし、フランツの赤く染まった足裏に触れる。


 濡れた足裏は触り心地が良いが、レイに比べるとやはりがっしりしているようにも感じる。


 それでいて現代日本人の感覚からすると標準より小さい足裏は、まだ子どもっぽさを感じさせた。


「うっ……んっ……」


 思わずフランツの足裏に夢中になっていると、小さくフランツが声を上げる。


 私は慌てて足裏を触るのを止め、ベッドから降りて部屋を後にすることにする。


 だが、そんな私の腕をフランツの手が掴んだ。


「タカヒロしゃん、いかないで?」


 相変わらずとろんとした目をしたまま、弱々しく声をかけてくる。


 こころなしか、泣き声になっているような気もする。


 思わず振り返り、フランツの頭を撫でてやる。


「そばにいて? いっしょに……ねよう?」


 フランツらしからぬ発言に驚く。


 だが、身体を真っ赤にして弱々しく懇願してくる姿はいつも以上にかわいらしく、断るという選択肢は思考の中には浮かばなかった。


 私も靴を脱ぎ、フランツの横で添い寝する。


 フランツはそんな私に身体を寄せてくる。


 そして、そのまま私の胸に顔を埋め、腰に抱きついてきた。


「ちょっ、フランツ!?」


 思わず、驚いて声を上げてしまう。だが、フランツは腰に回した手の力を緩めることはなかった。


「だいすきだよ……」


 小さく呟いた言葉は幼子のようで……。酔っ払って私を親だと感じているのかもしれない。


 幸せそうに私の胸に顔を埋めて眠るフランツの普段とは違う表情を眺めていると、すごく庇護欲が溢れてくる。


「私も大好きだよ」


 思わずそう呟きながら、フランツの頭を撫でてやる。


 幸せそうな表情を浮かべたフランツは、やがて穏やかな寝息を立て始めるのであった。




********************




ーー数時間後、深夜。


「寒い……」


 小さな呟きと自分の身体にしがみつく気配で目が醒めた。


 明かりを消して真っ暗に近いのだが、フランツがしっかりと私に抱きついて震えているようである。


 フランツの体温は明らかに寝る前とは変化しており、おそらく酒が抜けて体温が低下して寒くなったのだろう。


 起きて服を着せてやろうと身体を動かすが、フランツにしっかりと抱きしめられて身動きが取れない。


 小柄なフランツだがウォーリアなのでしっかりと鍛えられているし、寒さと寝ぼけていることで余計に力が強くなっているようだった。


「仕方ないなぁ……」


 私は小さく呟き、自分からもしっかりとフランツを抱きしめ返した。


 服を着せられないなら、自分の体温で温めてやるしかないだろう。


 少しでも暖かくなるように手で背中を擦ってやると、さわり心地の良い肌がほんのり暖かくなるような気がする。


 この世界では成人しているとはいえ、まだ十五歳。


 そんな半裸の美少年に抱きしめられ、抱きしめ返して背中を擦る。


 興奮してこちらの体温が急上昇していそうな気がするが、初めての冒険で疲れていたのか、やがて眠りに落ちてしまった。

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