ゴブリン達の巣食う部屋に入ると、リカードの報告通り八体のゴブリンが右斜に三体、左斜奥に五体ずつ居た。
何をしているというわけでもなさそうだったが、こちらの姿を確認して持っていた武器を構える。
現代日本人の私が魔物と戦えるのか心配だったが、ゴブリンはわりとわかりやすく「魔物」という感じだった。
人型の魔物と戦うのはもっと抵抗感があるかと思ったのだが。
あるいは臭いをコントロールできたように、ゴブリンに対する感覚もコントロールできているのかもしれない。
戦闘が始まるとリカードが予定通りに左斜奥の五体のゴブリンに突っ込む。
「ワイドアタック!」
そして、両手に構えたダガーで回転するように次々とゴブリンを斬りつけていった。
当然、ゴブリン達の悲鳴が上がる。
さすがに一撃で倒すとまではいかないものの、それなりのダメージは与えたようだった。
だが、そこからゴブリンの逆襲が始まった。
一人突出したリカードに対してゴブリンが集中攻撃をする。
しかし、それらの攻撃を紙一重で避けていくリカード。
五体からの攻撃を見事に避けていく姿は、まさに目にも止まらぬ速さだった。
それを横目に見ていた手前のゴブリン達は、まだ入り口にいる私達のほうへ迫ってくる。
しかし、それはフランツが巧みに回避、あるいは盾を使って防ぐ。
こうして、ゴブリンからの攻撃をノーダメージで防ぐことに成功する。
「エアリアルスラッシュ!」
そんなゴブリンに対し、レイが風の魔法をぶつける。
さすがは魔法攻撃、ゴブリンに大ダメージを与えて一撃で一体を倒してしまう。
続けてフランツも別のゴブリンを攻撃し、大きなダメージを与える。
三人の流れるような連携に驚嘆する私だったが、ただ驚いているわけにはいかない。
リカードの近くにはまだ五体のゴブリンがいる。
ボスモンスターもいない以上、強化すべきは範囲攻撃ができるリカードだろう。
「ホーリーウェポン!」
続けて五体のゴブリンを追撃しようと準備するリカードの武器に神聖な力を与える。
先程と同じようにゴブリン達に範囲攻撃を見舞うリカードの短剣は、多くのゴブリンを倒していく。
しかし、窮鼠猫を噛むと言おうか、ゴブリン達の逆襲も苛烈を極めた。
さすがに避けきれなかったリカードの身体にゴブリンの短剣が迫る。
「プロテクション!」
しかし、それは当然私がバリアを張って防ぐ。
完全に防ぐことは叶わなかったが、それでもかすり傷程度まで減衰できた。
戦力が半減したゴブリン達は、そのまま三人の猛攻に耐えることができず、ついに全滅したのであった。