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第06話 洞窟探索

 昼になり、旅の準備を整えた四人は再度依頼に挑戦するため、神殿を後にした。


 今度は例の魔物と遭遇することなく、無事に洞窟へとたどり着いた。


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「良かったんだけど、なんだか拍子抜けな気もするね」


 リカードは罠がないかを確認するため、一番前を歩きながら気楽に話す。


 緊張感が足りないような気もするが、シーフであるリカードからすれば日常茶飯事なことで緊張するほどのことではないのかもしれない。


「帰りに遭遇しないとも限らないんじゃないの?」


「レイ、怖いことを言わないでくれ」


 レイとフランツもさほど緊張している感じはない。


 むしろ最年長の私が一番緊張している。


 なにせ現代日本人は洞窟に入ることすら滅多にはないのだから。


 現代日本人といえば、なぜか懐中電灯を持っていたのでそれを使って洞窟を照らしていた。


 松明のようになにかの拍子に消える心配も少ない。


「ちょっと待って!」


 しばらく歩いていると、めずらしくリカードが鋭い声を上げる。


 私達が黙って従うと、すぐに地面を調べてトラップを発見した。


 簡単な落とし穴になっていたらしい。


「そんなに大した作りじゃないから、ゴブリンが作ったのかな?」


「ゴブリンでもそのくらいの落とし穴なら作れるでしょ。でも、道の真ん中に落とし穴を作ったら邪魔だから、そっちの道は違うんじゃない?」


 リカードとレイのやり取りを聞きながら、私は周囲を懐中電灯の光で照らし出す。


 なるほど、横穴があるようだ。




 その後も複数の落とし穴が設置されていたり、角を曲がると石弓が飛んできたりする。


「ちょっと、罠多すぎだよ~」


「あまり知性は高くないはずだけど、これくらいの罠なら設置できるってことだろうね」


 一番前を歩いてすべての罠に対応しているリカードが愚痴をこぼすが、レイは冷静に分析する。


「あっ! この落とし穴、中に箱が入ってるよ!」


 罠をチェックしていたリカードが喜びの声を上げる。


「頑張ったおいらへのご褒美だね~」


 嬉しそうに箱を開けるリカード。


 だが次の瞬間、箱の中から毒針が発射される。


「うわっ!」


 反射的に毒針を避けるリカード。


 さすがの反射神経でばっちり避けるものの、その目からは涙がにじんでいる。


「なんで~。ご褒美欲しいよ~」


 その場で地団太を踏むリカードの頭をよしよしと撫でてやる。


「ガキだね」


 そんなリカードにレイが辛らつな言葉を投げかけるが、リカードは無視して私に抱き着く。


「ガキだも~ん。にーちゃんに慰めてもらうんだも~ん」


 そう言いながら、私の胸元に額をこすりつける。


「リカード、いつゴブリンが出てくるかわからないんだから、もう少し緊張感を持ってくれ」


 今度はフランツが困ったように声をかける。


 それでも離れないリカードの頭を何度か撫でてやると、やっと満足したらしく、私から離れて真面目な顔になる。


 それを見て、フランツが全員に向かって話し始めた。


「そろそろ、本格的に戦闘準備もしておいたほうが良さそうだ。前衛は僕とリカード、後衛がレイとタカヒロさんで問題ないかな?」


「この状況なら背後から襲われることもないだろうから、問題ないんじゃない?」


 フランツとレイが慣れた調子で隊列を確認する。


 ウォーリア、シーフが前衛、メイジとアコライトが後衛というのは鉄板か。


 私がいわゆる殴りアコならまた違うんだろうけど。




 隊列を組みながら進んでいくと、前方から何やら話し声が聞こえてくる。


 何を言っているのかはわからないが、おそらくゴブリンの話し声なのだろう。


「おいらが確認してくるね」


 言うやいなや、リカードが忍び足で洞窟の奥へ進んで中を確認する。


 そして、こちらに対して指を三本示し、いったん閉じて再度五本示す。


「八体……ゴブリンなら余裕でしょうか」


「二グループみたいだし、五体の方はリカードのワイドアタック、三体のほうをフランツとオレで集中攻撃すれば簡単でしょ」


 フランツとレイが簡単に打ち合わせをする。私は攻撃手段がないので三人が危険な目に遭いそうなときに防ぐ準備をしておこう。


 私達も静かにリカードに追いつくと、一斉に洞窟の中へと踏み込んだ。

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