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2025年正月 レイ

「レイ、あけましておめでとうございます」


「ああ、おめでとう」


 浴衣に身を包んだレイが、そっけない態度ながらもタカヒロに挨拶を返す。


 リラックスできているのか、少し浴衣も着崩れている。


「レイ、今年の抱負ってあるかな?」


「抱負? ビジョンみたいなもの?」


「そうだね。今年、こんなことがしたいみたいなことだね」


 私の言葉に、レイは遠くを見るような目をする。


「そうだね……もう少し、タカヒロと仲良くなってあげるよ」


 ほんのり顔を赤らめながらいうその言葉に、タカヒロは思わずドキッとしてしまう。


 気崩れた浴衣から覗く生脚にも思わず目がいってしまっていた。


「何? 触りたいの?」


「いや、そんなことは……」


 レイの挑発的な言葉に、思わず動揺するタカヒロだった。


「良いんだよ。人に触られることに慣れたいし、慣れるならタカヒロが良い」


 そう言いながら、タカヒロに抱きつくレイ。


 父親からの性的虐待という悲しい過去のあるレイにとって、スキンシップは恐怖の対象だった。


 しかし、タカヒロとの出会いによって少しずつそれを克服しようと努力している。


「私で役に立てるなら嬉しいよ」


 タカヒロもそう言いながらレイを抱きしめ返す。


 生意気な態度をしがちなレイだが、抱きしめるとその線の細さに頼りなさを感じる。


 身長こそパーティーの少年達の中では高いほうだが、体重は下手をすれば一番小柄なリカードより軽いかもしれない。


「タカヒロ、今年も足裏マッサージしてくれる?」


 上目遣いで少し甘えるように言うレイ。


 こういう態度はリカードの専売特許だと思っていたが、随分とタカヒロに心を許したものである。


「もちろんだよ。さあ、足を出して」


 最近はマッサージオイルを使うことが多かったが、直にレイの足裏の感触を味わいたかったので素手で行う。


 前衛職ではないからか細くて柔らかいレイの足裏は、オイルを塗っていなくてもすべすべしている。


「気持ちいいよ、タカヒロ」


「そう? それなら良かった」


 思わず漏らすレイの言葉にタカヒロも顔を綻ばせる。


 これもスキンシップの一種だと思うのだが、素直に気持ち良いと言えるほど安心感があるということか。


 そのまましばらくマッサージを続けていると、気持ち良さと足裏が温まることでレイの目がトロンと眠たそうになってくる。


 このまま寝かしてしまおうと、何も言わずにマッサージを続けるタカヒロ。


 しばらく続けていると、やがて小さな寝息が聴こえてくる。


「すぅー、すぅー」


 タカヒロはマッサージの手を止めると、眠っているレイの顔を覗き込む。


 中性的で美しい顔立ちのレイが閉じたまぶたはまつ毛が長かった。


 優しく髪を撫でてやると、穏やかな笑みを浮かべる。


「タカヒロ……」


「レイ……」


 レイのつぶやきに、タカヒロも小さな声で答えるのだった。

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