「フランツ、あけましておめでとうございます」
「あけましておめでとうございます」
浴衣に身を包んだフランツが、丁寧に挨拶を返してくれる。
中世ヨーロッパ風の世界の人物なので、正座をして……ということはなかったが。
「フランツ、今年の抱負って何かあるかな?」
「抱負? ビジョンみたいなものでしょうか」
「そうだね。今年、こんなことがしたいみたいなことだね」
私の言葉に、フランツは真剣な表情をして考える。
「そうですね……本当はタカヒロさんともっと仲良くなりたいです」
顔を赤らめながらも真剣な表情のままフランツが答える。
「私もフランツともっと仲良くなりたいよ。めったにない機会だし、ハグしようか」
「え? ……はい。ありがとうございます」
一瞬驚いたような表情を浮かべたフランツだったが、すぐに頷く。
タカヒロはそんなフランツを優しく抱きしめてやる。
最近は添い寝をすることも多いが、こうして起きている時に抱きしめるというのはまた違った感覚を二人は感じていた。
「後は、新春初足裏マッサージかな」
「いつもありがとうございます」
タカヒロの言葉に、嬉しそうに答えるフランツ。
昔のように抵抗感はなくなったらしい。
そこでタカヒロは早速、フランツの足裏をマッサージすることにした。
最近はマッサージオイルを使うことが多かったが、直にフランツの足裏の感触を味わいたかったので素手で行う。
タカヒロがオイルでマッサージを続けていた甲斐があったのか、皮膚は以前より柔らかくなっており、触り心地がすごく良くなっていた。
「タカヒロさん……気持ちいいです」
「そう? それなら良かった」
思わず漏らすフランツの言葉にタカヒロも顔を綻ばせる。
まだ十五歳の健康優良児なので特に内臓が悪いということもなく、ただマッサージが気持ちいいらしい。
そのまましばらくマッサージを続けていると、気持ち良さと足裏が温まることでフランツの目がトロンと眠たそうになってくる。
ここで声を掛けると頑張って起きてしまうのがフランツなので、何も言わずにマッサージを続けるタカヒロ。
しばらく続けていると、やがて小さな寝息が聴こえてくる。
「すぅー、すぅー」
タカヒロはマッサージの手を止めると、眠っているフランツの顔を覗き込む。
普段からアイドル系の顔立ちではあるものの、眠っているとさらにあどけなくて愛らしい。
優しく髪を撫でてやると、幸せそうに笑みを浮かべる。
「タカヒロさん……大好き……」
「私も大好きだよ」
フランツのつぶやきに、タカヒロも小さな声で答えるのだった。