オレが次に向かうべきは古代の遺跡だ。
古代遺跡は、かつての人類と亜人種による召喚戦争の時代のモノで、今ではもう作る事が出来ないと言われている。
そこにあるのは古代の浮遊回路と呼ばれるオーパーツで、これは魔力を流し込む事で一定の物体を空中に浮かす事の出来る技術といえる。
つまり、飛空船を飛ばす方法は、空中に物体を浮かす事で、プロペラは向きを変えて前や斜めに移動させるためのものと考えればいいだろう。
だからヘリコプターのようにとんでもない巨大な出力が必要でも無ければ、飛行機のようにジェットで一気に進むのでもない。
もっと言えば、ヘリウムや水素で浮く飛行船の水素やヘリウムを使う部分が魔法で浮遊力を発動させるようにしたものだと考えればいいだろう。
その浮遊力を生み出すオーパーツは素材としては現在でも手に入る物で再現可能ではある、だが……それを作れるのはこの世界では飛行船技師になるミ・ソ一人だけだ。
だからオレは古代遺跡からこの飛空船用のアイテムとして浮遊回路を手に入れて来なくてはいけない。
ドラゴンズ・スターⅥ本編では北の遺跡に行くと最初から空っぽの宝箱があった。
これは演出上のもので、この宝箱から浮遊回路が見つかったので、オーブレンジ帝国は世界侵略に乗り出したと説明されている。
だーかーらー、オレは今からその本編開始前の北の古代遺跡で浮遊回路を手に入れてミ・ソに渡そうと考えている。
ついでにこの遺跡には後々仲間になる古代のロボット兵ポン―Z(ズー)のパーツも見つかる。
ポン―Zは古代文明によって作られたロボット兵の欠陥品だ。
プレイアブルキャラの一人で、古代遺跡で見つかったパーツを組み合わせていく事で機械のスキルを使い、様々な攻撃が可能になる。
最初はパンチだけしか使えないが、これがパーツ次第で火炎放射器、全体攻撃のオートボウガン、一撃必殺武器のチェーンソー、機械でも生命体でもダメージを与えれるバイオブラスター、一定ダメージ確定のドリル、防御力無視のパイルバンカー等が使えるようになる。
また、入手方法は難しいが、ビームセイバー、最強装備の荷電粒子砲、隠し武器のブラックホールバスターにマジックキャンセラーまで入れるとほぼチートキャラそのものの強さになる。
オレは大体このポン―Zをパーティーメンバーに入れていた。
実は隠し技で、店で普通に買えるオートボウガンは何個も装備が出来る。
これで装備枠を全部埋めてしまうと攻撃力が199を超えるのだ。
但し本来の強さは全部の武器の攻撃力を合わせた255になる。
だがこれは隠しダンジョンの武器まで全部合わせた場合のもので、本編クリアまでの寄り道無しだと125が関の山だ。
ここで必要なのが装備枠を一枠だけ残し、戦闘中に装備を入れ替える方法だ。
コレを使うと攻撃力200以上でありながらその武器の能力を最大限に使った攻撃が出来るので、火炎放射器で炎に弱いモンスターだった場合は9999ダメージを与える事が出来る。
また、オートボウガンは全体にダメージを分散する攻撃だが、ここで乱れ撃ちアビリティの装備をつけておくと全体3000越えのダメージを16回与える事が出来るので大抵の雑魚はこれで倒せる。
また、一撃必殺のチェーンソーは攻撃力が敵の守備力より勝った場合に発動するので、五ケタHPの恐竜や巨大モンスターでも200以上有れば大抵一撃で倒せる。
このようにポン―Zは上級者向けのキャラだと言えるだろう。
ポン―Z自体が仲間になるのは中盤以降だが、北の古代遺跡で見つかるのはそのチェーンソーだ。
だから今のうちにこのチェーンソーを確保しておけば後々楽になる。
そういうワケで、オレは今から北の遺跡に向かおうと考えているのだ。
とりあえずは、部下を連れて行きたいところなんだが、あまり多い数を連れて行っても意味がない。
なぜならこの遺跡、崩れやすくて三人以上で入ろうとしても入口で三人じゃないと入れないという強制移動でパーティーを三人に調整させられる場所だからだ。
それなので下手に兵士を連れて行くわけにもいかない。
だからパーティーメンバーはオレ、冷蔵庫ことチルド、それにソイソスたんの三人という事になる。
本当ならミ・ソを連れて行きたいんだが、彼にはオレの用意した設計図の船を作ってもらっているのでそれを優先してもらう事にした。
ここから北の遺跡は数日って距離か。
途中で食い物とかを調達するのも何なので、ここは冷蔵庫に凍らせておいた食料を持っていく事にしよう。
「ソイソスたん、ちょっと頼みがあるんだが」
「何じゃ? ワシに何をさせようというんじゃ?」
「ソイソスたんって空飛ぶ絨毯持ってたよな、それちょっと貸してもらえないかな」
ソイソスたんの持っているアイテムの一つ空飛ぶ絨毯。
これは本来渓谷を超える際に貸してもらうアイテムの一つだ。
だが、オレはそれをあえて別の使い方することにした。
「ななな……何を考えとるじゃお前は!?」
「何って……とりあえず絨毯の上に食料載せさせてもらったんだけど」
「ワシの絨毯がー! キサマ、何をしたか分かっとるのか!!」
「絨毯なんて洗えば元に戻るんだろ。それとも洗ったら空飛べなくなるのか?」
オレの言葉にソイソスたんは返答できなかったようだ、勝った!
「そ、そんな事は無いんじゃが、何故ワシの絨毯がそんな扱いにされるんじゃ?」
ソイソスたんはかなり不機嫌なようだ。
まあそれもそうだろうな、自分のお気に入りのコレクションの一つを本来と違ったワケ分からない使い方されたらそりゃあ怒りたくもなるだろう。
「オレ、これに食料を載せて動かしたら誰も重い物持たずに移動できるんじゃないんかと思ってさ、それにせっかく冷凍で食べ物が保存できるなら持って行った方が美味しいもの食べれるだろ」
「な、何じゃと!? その発想は無かったわい」
まあ、こんなアホな発想普通は思いつかんよな。
でも数日分の食料を運びながら北の遺跡に向かうとすれば、下手にソイソスたんに魔法で運んでくれともいえないし、あのアホ冷蔵庫は触ったもの全て凍らせてしまってまともに歩けなくなる可能性もある。
だからってオレがこんなもん運びたくない、だから空飛ぶ絨毯の上に食料を置いたんだ。
最初は渋っていたソイソスたんだったが、新鮮な食材で料理が出来ると聞いて渋々受け入れたみたいだな。
さあ、それじゃあ北の遺跡に向かうとしよう。
目的の浮遊回路を手に入れるんだ。
あれ……何か忘れているような気がする。
確かー……北の遺跡って、モノを手に入れるのが目的ではあったが、何か無茶苦茶強い敵がいたような気がするんだが、どんなヤツだったっけ。
まあいいか、行ってみて出て来なきゃ問題は無い!
どうせこの世界は本編より六年前の世界、あの北の遺跡で強いボスが出ると言っても、序盤では無く中盤以降にもう一度行った場合の隠し通路の先だったから、そこに行かなきゃ何の問題も無い。
どうせまた行く事になるが、その時にはポン―Zが仲間になってる状態で行くのでさっきの方法で強化チートを使えばボスですら瞬殺可能。
目指すは北の遺跡、手に入れるのは浮遊回路だ。
オレ達は数日間歩き続け、無事北の遺跡に到着した。
さて、ここで三人までの重さで遺跡に入れば遺跡の最初の宝箱に浮遊回路があるのでこれを手に入れたらすぐに移動だ。
オレは祭壇の上の宝箱を開き、中から浮遊回路を手に入れた!!
なんだかとても豪華なファンファーレでも流したいとこだが、ごまだれー! とかテッテレー! と流れるわけでも無いからなぁ。
まあいい、このアイテムを持ってさっさと帰ろう。
「ご主人様―、お腹すきましたですのー、何か食べ物用意していいですかー?」
「バッ!! バカッ!! お前、いったい何をしたんだ!」
「え? 何って、食べ物を空飛ぶ絨毯から降ろしたんですのー」
「お前は馬鹿かー!!」
地面がきしみ出した! ここの遺跡、三人以上で奥に行くなっていうのは、四人以上の重さを感知すると、遺跡の入口の床がひび割れて……下に落ちてしまうからだ!!
そう、これが中盤以降でないと、この遺跡の中に入れないという理由だったのだ!
だが、このアホ冷蔵庫、序盤でいきなりその展開にしてくれやがった!!
いったいどうするんだよー!! オレ達は遺跡の下に真っ逆さまに落下してしまった!!