オレがこのドラゴンズ・スターⅥの世界を征服する上で絶対に必要な物がある。
それは……飛空船だ!
そう、飛空船とは、文字通り空を飛ぶ船。
現代社会のジェットで空を飛ぶ飛行機とは違ったロマンの塊ともいえる空飛ぶ大型船の事だ。
この飛空船、ドラゴンズ・スターシリーズのⅠから登場しているもので、これが手に入る=物語後半ともいえるようなロマンの塊だ。
当然にそれだけ手に入れるには大変な苦労をするわけで、Ⅰでは砂漠から見つける為に古代人の塔の奥深くに入ってそこから永久の歯車なるアイテムを見つけ出してから強敵の固定モンスター×9を倒し、ようやく塔の外に抜けてから砂漠で永久の歯車を使う事で眠っていた古代の船を呼び起こす。
Ⅱでは飛空船乗りの男に金を払って乗せてもらうが、後半でその町が破壊され、飛空船も使えなくなり、その後に持ち主の男から譲ってもらい修理してから自分達の物になる。
Ⅲでは序盤で出てくるが大国同士の戦闘に巻き込まれて大破脱出、その後に中盤で手に入れるのが最速飛空船ホーネットで、コレがなんと驚異の8倍速!!
操縦が難しいのに空中で敵が出るのでエンカウントしまくる難物だった。
さらに後半になるとそれを上回る古代の飛行戦艦ビスマルクが登場、コレを手に入れる為には古代の洞窟で分裂しまくる闇の敵を倒さないといけないんだが、この闇の敵ってのが数は増えるわ仲間は呼ぶわ、さらに魔法吸収するから魔法を使わない特技持ちのジョブでないと倒せないがそのジョブってのがどれもこれも微妙に弱いのばかり、だからって逃げると通常の数倍ダメージでさらに逃げてもミスる確率が高いという鬼仕様だった。
Ⅳになると地底戦艦ゴウテンなる飛空船が出てきたが、コレがどう見ても大昔の特撮からそのまま持ってきましたと言わんばかりのデザインで、しかもこのゴウテンを使ってバビロンの巨神像の頭部に風穴を開けて内部に侵入するという何とも豪快なシナリオ。
その後ゴウテンは仲間が巨神像崩壊前に動かしてくれたので脱出に成功するが、今度は月に行く事になるのでゴウテンでは無理という事で月の船を見つける為にまた探索する事になる。
そして月の船が実は敵の将軍の本拠地として使われていると聞き、そこに乗り込んで防衛用システムを破壊、敵将軍を倒してみたらなんとそれが月の民である主人公の生き別れの兄ときたもんだ。
その後月の民の船を動かせるのは月の民だけだと言って主人公の兄の闇将軍が船を動かしてくれてどうにか月に向かって最終決戦。
Ⅴはそれほど変なシナリオってとこも無かったが、飛空船を発進させようとしたら下に張り付いていたのがデシュリンプという巨大エビのバケモノ、これが出オチなくらいに弱くてネタにされたくらいか。
だが実はこのデシュリンプ、操ってラーニングスキルを使えばラスボスを瞬殺出来るスキルの持ち主なので、ここで無理して飛空船を取らず、先のシナリオでジョブを取得してからここに戻ってくるのがRTAの定番ネタになっている。
Ⅶではゲームが3Dになったので乗りこなすのが難しかったが、飛空船での風船割りミニゲームとかが楽しめた。
Ⅷに出てきたヤツは、メチャクチャカッコよくてドラゴンのような姿の宇宙船だったが、爽快な音楽に反してスピードが遅すぎるのがデフォで、ネットの玩具にされていたな……。
そして、肝心のⅥ、これに出て来た飛空船の技師がミ・ソ。彼は元帝国軍技術士官で中佐の位に居た。
だが、彼は帝国の非人道な絨毯爆撃や蹂躙に心を痛め、技術士官を辞め、反乱軍に加勢する事になる。
その後、本来の主人公であるダッシュ達の説得により、飛空船を賭けた勝負に負け、仲間になる。
ミ・ソは見た目がゴリラのような大男で、髭面に体中傷だらけの職人といった見た目だ。
ゴーグルがトレードマークで、このゴーグルはドット絵になった際に爆弾を全身に巻いた特攻からの生還の際にも全身真っ黒なのにこのゴーグル部分だけが白抜きになっていた。
……まあ、空中で帝国軍の空挺部隊に襲われた際、自爆した時には全身に巻いていたのがチェーンマイン、つまり鎖にグルグル巻きにした爆弾を一気に解き、敵に向かって投げつけたので彼は無傷とは言わずとも致命傷にならなかったんだけどな。
オレが今から会おうとしているのが、その技術士官ミ・ソだ。
まだ帝国は飛空船を手に入れてない、帝国が非人道な爆撃や蹂躙を開始するのはこの数年後、古代遺跡から飛空船が見つかってからだ。
だーかーらー、オレは今のうちに宰相ヴィーガンを出し抜き、飛空船を手に入れてしまって非人道な蹂躙爆撃をさせない事でミ・ソの離脱を食い止めようというのだ。
オレがバーべ宮殿から造船ドックに向かうと、そこには技術士官のミ・ソがいた。
「おお、殿下。一体何の用ですぞい?」
「ミ・ソ。実は頼みがある、お前にしか作れないモノがあるんだ」
「はて、ワイにしか作れんモノ、それは一体なんですぞい?」
「そうだな、船だ!」
オレはミ・ソに船を造ってほしいと頼んだ。
「しかし殿下、船といいましても、この帝国の海軍力は世界最強のはず。これ以上デカい船を作れと言われましても、資源も時間も限界ですぞい……」
あらら、どうやらデカい船を作れと勘違いされたみたいだ。
ここはきちんと説明しておかないと。
「違う違う、オレが作ってほしい船はこんな感じの船なんだ」
オレが紙を用意させて描いた船は、後ろの部分に大きな倉庫をつけた中型船だった。
この倉庫はあの冷蔵庫に凍らせた食材を放り込んでおく場所だ。
「おや? この船は随分と変わった造りをしておりますぞい。いったいこの船は何の為の船なんですぞい?」
「これは……空を飛ぶ船だ! オレがオマエに作ってほしいのは空を飛ぶ船なんだ」
この説明に流石のミ・ソもゴーグルをずらして唖然としたようだ。
「ででで、殿下?? 本気ですか? 空を飛ぶ船なんてどうやって造れと言うのですぞい??」
「お前なら出来るはずだ、帝国最高の技術士官、ミ・ソ、お前にも空飛ぶ船を造るのは無理だと言うのか?」
「そりゃあどう考えても、船を空中に浮かすだけの動力を作り出す事が無理としか……」
「もし、その動力炉をオレが見つけてきたら?」
「殿下……どういう事ですぞい?」
オレはこの世界が今後どうなるかを知っている。
この数年後、遺跡を発掘していた帝国兵が見つけたのが浮遊回路と呼ばれる古代のオーパーツだ。
この浮遊回路、魔力を与える事でその魔力に応じた物体を空中に浮かす事の出来るアイテムで、今後の飛空船技術のキモともいえるものだ。
一度見つかった物体は廉価版ながら帝国の技術力で再現可能、それが出来る技術者というのがミ・ソという事だ。
「オレは密かに部下に命じ、古代遺跡の調査をさせておいたのだ。そして、部下からの報告で、古代遺跡には空を飛ぶ古代技術のオーパーツがあったというのだ」
「グリル様ー、いったいいつそんな調査をさせておいたのですのー?」
「やかましい!」
オレはチルドを剣の柄でどついた。
いらん事言うな、そんな調査させてないんだ、実際はゲームのシナリオで知ってるから遺跡のどこに何があるが分かってるだけなんだっての。
「いったーい、何でどつくんですの?」
「お前がいらない事を言うからだ、どこで誰が聞いているか分からないんだぞ」
「ふむ、確かにそうじゃな。ここはグリルの言っている事の方が正しい、どこに敵がおるかわからんからのう」
「う、うむ。わかったぞい。もし殿下が本当に古代の空飛ぶ船のパーツを見つけてきたらワイが最高の船を作って見せますぞい」
さて、それじゃあ本当に古代遺跡に向かって浮遊回路を見つけてきますか。