ここで無限カズラの葉っぱを燃やし尽くしてしまうと、あのウメボシ婆あのソイソスがオレ達のソイソスたんに若返る術を失ってしまう。
それは間違いなく世界の損失だ!
この世界の半分はソイソスたんの可愛さで出来ている。
いや、これは嘘ではない、何故なら……オレは見てしまったのだ!
親父の部屋にあった昔のコミックマルシェのパンフのドラゴンズ・スターⅥのブースの大半がソイソスたんの薄い本で半分以上が埋まっていた事を!
今でもちょっとエッチいお絵描きサイトではソイソスたんの絵は需要があるらしく、結構見つかる。
コレって今から数十年前のゲームだってのに、どれだけの人気っぷりなんだよ。
そう、ソイソスたんが若返らないというのはそれだけこの世界の損失なんだ!!
だから無限カズラの葉っぱとオリテアオの卵の殻は絶対に失ってはいけない宝なんだ!!
「おい、冷蔵庫。そこの無限カズラの葉っぱ、腐らないようにしまっておけよ」
「そんな、アタシは冷蔵庫じゃなくって……チルド・ブルッチョ」
「オイ、今くだらない名前の話をするならこの炎剣スルトでお前の髪の毛を炙ってつるっぱげにしても良いんだぞ」
「ひいいぃーそれは止めて下さーい、女は髪の命なんですぅのぉ」
あららら、コイツ、恐怖のあまり台詞を間違えてやんの。
まあいいや、オレの中ではソイソスたん>>>>>>冷蔵庫ってとこだからな。
早くソイソスたんの所に戻って若返り薬を完成してもらおう。
待っててくれー、オレのソイソスたーん。
オレはウキウキしながら現ウメボシ婆あのソイソス婆さんの所に向かった。
「おーい、ソイソス婆さん、薬の材料を持って来たぞー」
「……」
だが返事がない。
まさか、ただの屍になってるんじゃないだろうな!?
「クークー……」
ズコーッ!!
婆さん、単に寝てただけかよ、心臓に悪いぜ。
しかし下手に老人を起こすのも良くないな、それに今はまだ偏屈婆あなので、もし若返った時にこの記憶を持ったままだったとしたらオレが邪険にした事を覚えていてオレの言う事を聞いてくれないかもしれない。
仕方ない、ここは婆さんのワガママに付き合ってやるか。
オレは冷蔵庫と一緒に婆さんが起きるまで待つ事にした。
まあその間は冷蔵庫でもいじめて時間つぶしをしておくかな。
まあいじめると言っても、炎剣スルトをもってアイツの後ろを歩いてやるだけだけどな。
直接アイツの事をを攻撃するんじゃないから、まあ紳士的なもんだろう。
それに、あくまでも炎剣スルトは何のために掲げているかといえば、モンスターをここに呼び寄せない為だ。
そういう事だから炎剣スルトをむき出しのままで持っているって事だ。
いくらソイソスたんが最強魔法使いと言っても、今はロートルのウメボシ婆あだ。
寝ているところをモンスターに襲われたら簡単にあの世逝きになってしまう。
だからオレが護衛してやるしかないだろう。
しかし暇だ、どうやらソイソス婆さんを狙ってくるモンスターもいなそうなので外でレベル上げでもやってくるか。
え? 何のために冷蔵庫を前にしているかだって? そんなの簡単な事だ、一応アイツ、フリーズバリアという便利なスキルを持ってるからな。
このフリーズバリア、このゲームでもレアスキルらしく、本来なら最強クラスのボスだけが持つ能力で、触れた敵を氷で無効化する事が出来るチートスキルみたいなんだよな。
しかし何でこんなポンコツ魔族がそんなレアスキルを持っているのやら?
実際のドラゴンズ・スターⅥではこのフリーズバリアを持っていたのは超レアモンスターのフリーズゴーレムと隠しダンジョンのフリーズドラゴンだけだったからな。
このフリーズドラゴン、下手すればラスボスよりも強い初見殺しと言われていて、フリーズバリアの対処法が無いとまず勝ち目がない相手だった。
その対処法の一つがこの炎剣スルトって事だ。
攻撃力は後半のインフレに付いていけなくなるが、この剣の特殊能力は凍結無効。
これはゲーム中でもかなりのレアスキルで、このスキルに気が付かなければフリーズドラゴン相手に勝つのは難しい。
だからフリーズバリアに対しての対策としては手放せないって事。
おかげで雑魚モンスターは冷蔵庫に触れた瞬間凍結、コイツ実はメチャクチャ強いのか?
「ひえええ、モンスター怖い、助けてくださいですのぉー」
やっぱりそんなわけないか。
オレはソイソス婆さんが目覚めるまでの間、冷蔵庫と雑魚狩りを続けてレベルアップと金策をしていた。
これだけ溜まれば十分かな。
オレ達がソイソス婆さんの小屋に戻ると、婆さんは起きて何かの薬を煮ていた。
「お、お前達か、よく戻って来たのじゃ。それで、薬の材料はあったのか?」
「コレを見てくれ、コレがあれば薬が完成するんだろ」
「おお、これこそ無限カズラの葉っぱと怪鳥オリテアオの卵の殻、間違いない、これで薬が完成するわい」
やった、オレも嬉しいぜ。
なんせこの薬のおかげでみんな大好きなのじゃロリ幼女のソイソスたんが爆誕するんだから。
ソイソス婆さんは薬の材料をオレ達から受け取り、煮込んだ鍋の中に無限カズラの葉っぱとオリテアオの卵の殻を放り込んだ。
「これで、練れば練るほど色が変わって……よし、完成じゃ!!」
やったー! これでソイソスたんに会える! 苦労した甲斐があったぜ。
ソイソス婆さんは完成した薬を舐めて一言呟いた。
「う……うぐっ!!」
ま、まさか……薬が失敗か!?
「ま、不味い。もう一杯!」
なんじゃそりゃ!!
まあ、薬はどうにか完成したらしく、ソイソス婆さんが一気に薬を飲み干した。
すると、ソイソス婆さんの身体が光り出し、身体の周りを何色ものオーラが包み出した。
やった、ついに……ついにオレ達の待ちに待ったソイソスたんが!
「う、うわあああっ!!」
ゲームでは画面の何度もの点滅で表現されていたが、実際の光景は本人の方がピカピカ光っている。
そして、オレの見ている前でどんどんソイソス婆さんの身体が縮み出した、やった今度こそ成功だ!!
「う、ううう……ワシはどうなったのじゃ?」
「きゃあっ、前、前を隠して下さいですのっ!!」
こいつ、いらないこと言いやがって。
せっかくのラッキースケベチャンスをわざわざ潰すんじゃない!
オレは炎剣スルトの柄で冷蔵庫の後頭部をどついた。
「痛いですのー、何をするんですか!」
「やかましいっ、いらない事をしやがって」
あーあ、オレが見逃した間にソイソスたんはしっかりローブで体を覆ってしまったじゃないか。
だが、流石に婆さんだった時の服はぶかぶかだったらしく、服のサイズが全く合っていない。
「ぬ、ワシはどうなったのじゃ?」
「ソ、ソイソスたん。間違いない、ソイソスたんだ」
オレが見たのは、ゲームの時の姿そのものののじゃロリ最強幼女、賢者ソイソスたんの姿だった。
「何じゃ、貴様、ずいぶんと気持ち悪いな。それで、ワシはどうなったのじゃ?」
「ソイソスたん、実験成功ですよ、しっかり若返ってます」
「そ、そうか。ワシがびゅーてぃほーな美貌を保っておった若かりし姿に……ってなんじゃこりゃああー!!」
鏡を見たソイソスたんが自分の姿を見て驚いていた。
「な、何故じゃ……ワシはもっと美貌にあふれた若い頃の姿に戻れるはずじゃったのに、なぜこんなチンチクリンの子供にまで戻っておるんじゃー!!」
ありゃ、コレって狙って子どもの姿に戻っていたんじゃなくて、実験の失敗で若返りすぎた姿だったって事なのか。
まあいいや、オレには関係ないし、それよりもソイソスたんに今後の計画の事を話さないと。