「で、婆さん何をオレに頼みたいってんだよ」
「実はの、ワシは魔導を極める為にここで研究を続けておったんじゃが、もう体の方が限界でな、それで不老不死の薬を作ろうとしておったのじゃ」
「不老不死だって!?」
そうか、そういう事だったのか!!
オレが知っている大賢者ソイソスが舌足らずのロリババアだったのは、その不老不死の薬を飲んだ後の姿だったって事か!!
という事は、オレがその不老不死の薬を作る手伝いをしてやれば、彼女はオレの事を見直してくれるに違いない!
よっしゃー! こりゃあテンション上がって来たぞ!
もしオレが不老不死の薬の材料を用意して願いを叶えてやったら、オレに素直に従ってくれるロリババアの誕生だ! オレの事をおにいちゃんと呼ばせるのも悪くない!!
「何ニヤニヤしておるんじゃ、このたわけ。ワシの話を聞いておるんか?」
「え、ええ、はい。も、もちろんです、ソイソスたん」
「なんじゃ、馴れ馴れしくて気持ち悪い奴じゃな、まあええわい、ワシのとってきてほしいものがあっての、それをお前さん達に持ってきてほしいんじゃ」
「それって、不老不死の薬の材料ですか?」
オレが質問をすると、ソイソス婆さんは何かの絵をペンで描き、オレ達に手渡した。
なんじゃこの子供の落書きみたいなシュールでド下手な絵は??
オレは思わず笑いそうになったが、どうにか我慢した。
その隣で絵を見て笑っているチルド、コイツ……空気を読むってのを知らんのか。
「な、なんじゃ、そ、そんなに笑う事は無かろう、ワシは絵を描くのは苦手なんじゃ」
あ、このシチュエーション見た覚えある。
確かドラゴンズ・スターⅥ本編で幻の薬草を捜してほしいっていう最初の依頼の時にソイソスたんが頑張って描いた絵があまりにも幼児の落書きで、全員に大賢者ではなく孫がお使いを頼まれていると勘違いされた時の絵と同じだ。
そうかー、ソイソスの絵の下手さって、婆さんの時から変わらなかったんだな。
「な、何を笑っておるんじゃ、このあほぅ!」
ソイソスがあほぅという時は、なにか自分に後ろめたい事がある時だったな。
って事は、この絵の下手さ、これを追及されるのがかーなりイヤって事だ。
「い、いえ。随分と先鋭的な絵だなと、それで、これは何を伝える絵なんですか?」
「こ、これは、怪鳥オリテアオの卵の殻じゃ、千年樹の根っことシーサーペントの血、古代竜の骨、それと、無限カズラの葉をすり潰して煮込む事で不老不死の薬となるのじゃ」
またどれも難易度の高い素材ばかりだな。
でもどうやら今そろっているのは千年樹の根とシーサーペントの血、古代竜の骨があって、無限カズラと怪鳥オリテアオの卵の殻はまだ揃っていないみたいだ。
無限カズラはこの山の近くで見つかるし、怪鳥オリテアオの卵の殻ならこの少し行った場所にある。
というか、どちらもドラゴンズ・スターⅥのボスを倒して手に入るアイテムだ。
だからどこにいるかもわかっているし、大体の強さも把握済み。
無限カズラは倒しても倒しても仲間を呼び続けるので、炎で全体攻撃して燃やし尽くすか氷で全体攻撃して一気に凍らせるようなやり方でないと倒せない。
また、オリテアオは最初のボスだが、空を飛ぶモンスターなので、空中にいる間はダメージが与えられない。
だーがー、どちらもオレの敵じゃない。
オレの持つ炎剣スルトは遠距離攻撃も出来る魔剣だ。
このスルトがあれば道具として使っても炎の魔法を使う事が出来る。
まずは少し遠い場所にいるオリテアオを倒す事から始めるか。
オレはチルドを連れ、ドラゴンズ・スターⅥのゲームスタート地点から少し離れた崖の抜け道に向かった。
本来ならこの崖の抜け道、この怪鳥オリテアオから逃れる為に主人公達が選んだ最初のダンジョンマップという事になるが、まあシナリオの都合上、反対にオリテアオの玉子を手に入れてしまった主人公達が追いかけまわされて最初のボスバトルという事になる。
でも、この時点ではまだソイソスが仲間になっていないのに、何故この卵の殻をここで手に入れ鵜r必要があったのだろう?
無限カズラも後で持っていく事になるが、オレが知っている限りは、もうソイソスはゲームの中ではすでにのじゃロリ幼女になっていた。
ん? 時系列バラバラじゃないのか?
オレが知る限り、ソイソスがのじゃロリ幼女として出てくるのはこの数年後、だが今の時点でのソイソスはしわくちゃの婆さんだ。
そしてそのソイソスが若返る為の薬は、もう飲んでいるはず。
だが、ソイソスが主人公達の仲間になる際に必要だったアイテムが、無限カズラの葉と怪鳥オリテアオの卵の殻。
ひょっとすると、まだ主人公があった際には不老不死の薬は完成していなかったのか?
その薬が未完成のままだったとするなら、その薬の完成に必要だった素材を完成させたのが主人公達だったのでソイソスがその恩を感じて仲間入りしたとすると……そうか、わかったぞ!
――つまり、外に出るのが難しいほど体が老化してしまったソイソスは、今揃っている材料だけでどうにか若返りの薬を作ったが、素材が足りず、本来の魔力や能力を覚醒させる事が出来ず、ただの少女になってしまっていた。
だから主人公達の持ってきた無限カズラの葉とオリテアオの卵の殻を使い、不老不死の薬の効力を完全な物にする事が出来たって事。
よっしゃー、そうとわかればのじゃロリ幼女がオレの仲間になるのも時間の問題だー!!
行くぞ、ボスをさっさと倒してソイソスの所に戻るんだ!
オレはチルドと二人でオリテアオを見つけ、瞬殺した。
今のオレの強さからすれば最初のボスなんて雑魚も雑魚、空飛んでいるのを挑発させる為にチルドに卵を持たせて追いかけさせれば簡単に地面に呼び寄せる事が出来た。
地面に降りて来た鳥なんて炎剣スルトで羽を焼いてしまえばもう空に飛べない、後はフルボッコにして焼き鳥の完成だ。
せっかくなので完成した焼き鳥はチルドに凍らさせて旅の食料にしてやった。
ビバ現地調達。
さて、次は道順的に迷い続ける森ってとこか、ここのボスが無限カズラ、何度も自己再生するうっとうしい食人植物だ。
まあ迷い続ける森といっても、燃やしながら進めばどこまでも突き進める。
もし森が火事になりそうになったらチルドに氷で消火をさせればいいので大惨事にはならない。
マジで便利な能力だな、冷蔵庫じゃなくて消火器に名前を変えても良いかもしれないな。
まあいい、このルートをショートカットしたらいるはずだぞ……ほら出て来た無限カズラ。
無限カズラはどこまでもツルを伸ばしてオレ達を取り込もうとしている。
ここでわざとチルドを助けないってのもありだよな、まるで触手のように体に食い込んで、これがなんともエロく見えるだから。
オレだって微妙な年ごろだ、エッチなシチュエーションが見れるならそりゃあ喜んでみるもんだ。
まあこんな雑魚にやられるわけも無いから、少し無限カズラにいじめられるチルドを眺めるとするかな。
あーあ、空中に変な縛られ方して絡みつかれて何ともいい光景だこと。
「見てないで助けてほしいですのー!!」
「あ、わりいわりい、ついつい忘れてた」
「ひどい―、この人でなし、鬼、外道!! 許さないですのー!!」
まあずっと恨まれるのも良くないから、そろそろ助けてやるかな。
「燃えろ、炎剣スルト! 敵を薙ぎ払え!!」
オレの放った炎剣スルトは無限カズラを焼き払い、ツルの焼き斬れたチルドは下に落ちてしまった。
「ぎゃうっ!」
あーあ、美少女の出しちゃいけない声を出しちゃってるよ。
まあいい、オレ様の強さを見せてやろう。
オレは炎剣スルトで無限カズラの球根をぶった切り、あっという間に倒した。
余裕余裕……って、燃やしちゃいけないんだった!! 無限カズラの葉っぱを手に入れないと!!
「チルド、氷の魔法で無限カズラの火を消せ!!」
「は、はい。わかりましたです」
危ない危ない、肝心の葉っぱを燃やし尽くしてしまうところだった……。