適当な魔法陣が、夜の農村の片隅に出現。五人の人影を吐き出して消えた。
四郎とリインカとオタクとクルスとメアリアンだ。太田はテンプレ異世界なら一番詳しいのではないかということで、クルスは自由気ままに同行してきた。
「さあ、今日こそは転界が取り戻した平和な世界をご覧――」
そこでリインカは叫ぶ。
「あれぇーーーー?!」
第五の異世界ダイゴノでも最も平和な村、ハジマリノ村のように星を挟んで魔王城があった地点の反対に位置するところに転移すると事前に聞かされていた。
とある山の頂付近、崖と森に挟まれた村落だ。ほとんどが木造家屋と藁葺き屋根からなる家屋が建ち並んでいる。
燃えながら。
就寝中にいきなりの夜襲だったのか、村民はほとんど見当たらない。どうにか逃げたらしき男たちが僅かに倒れている。
一人の農夫は馬鍬で戦っていたが、自分の半分もない大きさの敵十体に囲まれたちまち袋叩きにされた。
「〝アルクビエレ・ドライブ〟!」
即座にエネルギーをぶつけ、その十体のみを塵と化す四郎。
「オタク、襲撃者の情報は?」
「エ、〝
驚き固まる女性陣たちの中、やや遅れて太田は反応。ユニークスキルを発動した。
「ゴブリンですな。これまたご都合主義的にもハジマリノと全く同じのが数百体!」
そう、松明や斧や剣や槍で村を襲撃しているのは
腰簑だけを身につけ、小さな角を生やし、尖った耳と裂けた口、手足の指に爪を備えたクルスより小柄などす黒い怪物。
「生存者は?」
矢継ぎ早な四郎の問いに、太田も精一杯答える。
「残念ながら、男子は四郎氏が救った人が気絶してるのみです。女子は……うおぉおーー!?」
そこで彼は鼻血を噴出し、鼻を押さえながら言及する。
「数十人、全員が最奥の一番大きな納屋に集められ、服を破かれたり脱がされたりしております。一人戦士らしき腹筋の割れたビキニアーマーの方がおられますが、『くっ、殺せ!』とか言っていてピンチです。エロ同人みたいなことをされる寸前かと!」
ゴブリンには雄しかいない。
代わりに
ための横暴だろう。
「ゴブリンの位置情報を脳裏に浮かべろ。クルス、オタクの思考を読んでわたしの技の軌道を操れ! 狙いは適度でいい、母親のミトコンドリアDNAがない連中にしか効かん!!」
即座に指示して、言うが早いか四郎は唱える。
「〝アルクビエレ・ドライブ〟!」
「もう、命令しないでよねおじさん♥ ――〝
不満げながら、太田に続いてクルスも従った。
錬金術師の両手から放たれた光線を、指揮者のような手振りでぐにゃぐにゃ操作するホムンクローン。
光は屋内にも壁を破って突入。正確無比に、ゴブリンだけを貫いて蒸発させた。
突然救われ、呆然とする村民たち。
「……な」
ここでようやく、衝撃から立ち直ってリインカが言及する。
「なんなのよこれ、転界神が直々に勇者として魔王を倒したって事前情報だったのに!」
「し、しかもゴブリンですわよ!」遅れてメアリアンも、悲鳴に似た声を上げる。「ダイイチノ同様ゴブリンは魔王の創造物だから消えているはずですし、ダイゴノでは最弱モンスターで知能も低いはずですのに、どうしてこんなにいるんですの!?」
「ゴブリンこそが真の王だからだ」
唐突に聞こえた新たな声音は、村の一面をなす森林からのものだった。
四人が目を向けると、炎に照らされる木々を背にした誰かがいた。
なんてことはない、ただ一匹のゴブリンだった。そいつが、態度だけは偉そうにしゃべっている。
「遅かったな勇者一行、貴様らが倒したのは影武者の魔王に過ぎん!」
「な、何言ってるのよただのゴブリンが!」戦慄したのはリインカだ。「体長1km、腕と足が計千本で顔が十個、百メートルのイチモツを持っていたあの魔王が影武者なわけないでしょ!?」
「うぇ~、キモぉ~い♥」
「とても嫌ですなそれは」
ストレートな感想を洩らすクルスと太田だった。
「ゴブリンにしては言葉遣いが流暢過ぎますわ。あなたは何者なんですの!?」
気を取り直すように訊いたメアリアンに、ゴブリンは腰に手を当て胸を張って優雅に名乗る。
「
またしても、名が体を表していた。