私たちは、焔を支えながらなんとか客間まで辿り着いた。普段は真面目でキビキビしている彼がここまで酔っぱらうなんて珍しい。
「…財前、なかなか侮れないね」
ヤトが
「焔さん、大丈夫ですか?」
「ああ。すまない。少し休めば大丈夫だ」
焔は目を閉じながら静かに答える。その声にはいつもの鋭さはなく、疲れが滲んでいる。どうやら、相当飲み過ぎたようだ。
「凪、もう日付が変わってるよ!あっという間だね~」
ヤトが壁の時計を見ながらぽつりと呟く、私も針を追うと、時刻は零時ニ十分。普段の私にしては夜更かしだ。するとヤトが大きなあくびをする。
「もう寝よう?疲れたよ、俺」
「そうだね。お布団敷こうか」
私が立ち上がろうとすると、ヤトが突然ピトッと抱きついてきた。
「ヤト?どうしたの?」
「今日は凪と一緒に寝る!」
思わぬひと言に私は目を丸くする。
え?ええ??
ヤトを見ると、無邪気にキラキラとした眼差しをこちらに向けている。まるで子どもみたいな純粋な瞳。その様子を見て思い出すのは数日前のこと。ミレニアの襲撃でヤトが大けがした時、心配で彼を抱きかかえながら眠りについたのだ。
あの時はヤトのことが心配だったからなんだけど…。
迷っている私の心の声を察したのか、ヤトがすかさずこう口を開く。
「いいじゃん!この前もさ、俺と一緒に寝てくれたもん!」
ヤトが甘えた声で訴える。その様子はいつも通り素直で可愛い。だけど、やっぱり甘やかしちゃいけない。年上のお姉さんとして、しっかり伝えなければ…!私は心を決めて、ヤトにキッと鋭い眼差しを向ける。
「コラ!甘えちゃダメでしょ!今日はひとりで寝ること!」
そう言い切った瞬間、ヤトは大きな瞳を潤ませた。今まで見たことがないような上目遣いで、まるで小動物のように私を見つめる。そして、信じられないほど可愛らしい声で、こう呟いた。
「ダメぇ?凪ぃ?」
う…。か、可愛い…。
全力で甘えてくるヤトに、私の心は一瞬で揺らぐ、
どうしよう…。さっき焔さんから「ヤトを甘やかすな」って言われたばかりだしなあ…。
私はヤトをじっと見る。キラキラとしたつぶらな瞳が、真っすぐ私に向けられている。
このクリクリおめめ…。今の私には逸らせない…。
数秒後、根気負けした私は天井を仰ぎながらふーっと息を吐く。
「…仕方ないなあ~今日だけだよ」
すると、ヤトはパッと羽を広げ、喜びを露わにする。
「やったあ!凪、大好きぃ!」
ヤトが再びピトッと私に抱きつく。可愛いなあ、もう。
私は苦笑いを浮かべながら、ヤトの頭をそっと撫でた。すると、突然廊下から大声が響く。
「ちょいと待ったァ!」
私とヤトは体をハッとして廊下の方を見る。そこには花丸と、彼に支えられる形で財前が立っていた。