菊池まりな
異世界恋愛ロマファン
2024年12月30日
公開日
1.4万字
完結済
ルークスはグレートマカトニア王国に住む青年で、現実世界の観察員。ある日、ルークスは大型トラックに跳ねられそうになった女子高生をなんとか助けたいと強く願うと、物凄い旋風が巻き起こり、時空の歪みからなんとか女子高生を助け出すことに成功する。ルークスはずっと彼女のことを思っていたのだが、女子高生、真理はわけのわからない世界に連れてこられて困惑してしまう。しかし、王国で過ごすうちにルークスに惹かれていく。王国のしきたりで、現実世界と行き来出来ないことや、現実世界の人を連れてきたりしては駄目なことは分かっていたルークスだが…。一方、真理も現実世界に戻らなきゃ!でも、ルークスと別れるのはつらいと思うように。甘く切ない異世界純愛ストーリー
第1話
僕の住む世界と君の住む現実世界
「風のささやきが聴こえたら、君はまた、僕のことを思い出してくれるだろうか?」
僕たちは、春風で桜舞い散る季節に出会った。君はまだ高校2年生になったばかりで、将来への不安と希望でいろんなことを考えていただろう。僕は知っている。君のことをずっと見てきたから。
もしも、再び君と出会うことが出来たなら、その時は、永遠に愛を誓うよ。永遠なんて、ないって思っているだろう。確かに現実世界では、永遠という言葉はあるが、必ず終わりがあり、いつも誰かが悲しむ結末だ。でも、僕が存在している世界では、永遠に生きることが出来るため、無償の愛を注ぎ続けることも可能なのだ。永遠に生きること、それはある人にとっては天国かもしれないし、またある人にとっては、地獄なのかもしれない。僕が生きるこの世界では、皆が二十歳くらいの年齢で、それ以上歳を重ねることはない。病気もしないため、病院なんて存在しない。しかし、現実世界では、過度のストレスや食生活の乱れ、その他病原菌などから様々な病気になりうるため、多くの病院が存在している。
僕は知っている。君は強がっているけれど、本当は弱いことを。毎日の生活に疲れて、作り笑いをしながら心では泣いていることも。そんな君を見ているのがつらくなったから、僕はこちらの世界へ君を招いたんだ。
僕の名前はルークス。この世界に生まれて64年になる。現実世界では、年寄り扱いになるんだろうな、きっと。しかし、見た目は20歳くらいと若いから、この世界では年齢なんて関係ない。父親は112年生きていて、見た目が僕と変わらないのだから、想像出来ないだろう?母親も、いつまでも美しい姿のままだ。子どもはどうやって生まれてくるのかって?僕の住む世界では、顕微授精によって出来た受精卵を、人工的に作られた子宮装置に入れて、誕生まで待つんだ。装置内は、現実世界で女性が妊娠した時のように、羊水で満たされ、胎盤の役割をするものまである。赤ちゃんへの栄養も、システム起動により送り続けることが可能なのだ。未来では、現実世界でもこうした子宮装置が開発されるのではないか、僕の住む世界に少しずつ近付いてくるのではないか、と思っている。この世界では、食事という概念はなく、ただ、カプセルを一日三回に分けて飲むだけだ。それだけで一日に必要な栄養素、必要な摂取カロリーを補うことが出来るんだ。カプセルは一応、子ども用、大人用がある。現実世界で言うと、サプリメントみたいなものだろうか?
この世界に生まれた人は皆、特殊な能力を持っている。魔術が使えたり、人の心を読むことが出来たり、僕みたいに、現実世界を見ることが出来たり。仕事は個々の能力を最大限に発揮出来る仕事に就くことが出来る。現実世界みたいに、「時間」というものに縛られることなく、好きな時に好きなだけ働いて、適度に休んで、友達と遊んだりもする。友達の中には、異性と結婚した者もいるが、僕の心の中には、いつも君がいたから、なかなか結婚出来ずにいた。この世界では、現実世界を見ることは出来ても、現実世界とこの世界を自由に行き来出来ない。それはこの世界の法律なのだから、仕方ないだろう。でも、あの時は仕方なかったんだ。ああするしか、君を助ける方法が思い付かなかったんだ。