タッグを組む相方を探すために、スペースポートのコネを総動員して北海道や大分にも連絡を取った。でも、返ってくる返事は決まって同じ。
「地元の選手をサポートするのが最優先なんでね。」
そりゃそうだよな。俺だって逆の立場なら同じことを言うだろう。アヤカもオンラインコミュニティで高専仲間に声をかけてくれたけど、結果は空振り。
「ルナドライブなんて持ってる人、学生にいるわけないじゃない。あれ、いくらすると思ってんのよ。」
八方塞がり。スペースポートのジャンクヤードも何度も探したけど、そんな奇跡みたいな話が起きるわけもない。俺たちはただ、じわじわと無力感に押しつぶされていった。
「もう無理か…」
そんな言葉が思わず漏れそうになった、そのとき――
「あっついわ~!ほんま日差し強すぎやろ!」
突然聞こえてきた陽気な声。振り返ると、そこにはユイが立っていた。決勝戦で俺たちと戦った、あのシラハマ三号のパイロットだ。真っ青な髪は相変わらず太陽を反射して眩しいし、関西弁も健在。いや、なんでここに?
「…なんだよ、決勝戦のクレームでも言いに来たのか?」
俺は半分疲れながらつぶやいた。すると、ユイは俺の予想をあっさり裏切る笑顔を見せた。
「ちょっとええ話があんねん。そんなんちゃうで!」
その表情は、何かとびきり面白い提案でも持ってきたかのような期待感が漂っていた。でも、まさかタッグを組むために来たなんてあり得ないよな――と思ってたら、案の定だった。
「タッグ組んでくれるんちゃうか?なんて夢見とるかもしれんけど、あんたらにキツくやられたせいで、機体の修理が間に合わへんねん。」
「ルナドライブだけ貸せや、っていうのももちろん無理や。地元の中小企業がみんなで出資して手に入れたもんやからな。」
まあ、だろうな。そんな簡単にいくわけがない。俺は小さくため息をついた。
「じゃあ、何しに来たんだよ?」
眉をひそめて聞くと、ユイはニヤリと笑った。
「パワーアップや!」
「…は?」
予想外の返答に、思わず固まる俺。
「県代表やろ?お前ら、和歌山の名前を関西に知らしめてこいや!近畿のおまけとか、みかんと海しかないとか言わせんな!」
その勢いに押されて、俺はつい背筋を伸ばしてしまった。なんだよこの説得力。
「でもさ、その『パワーアップ』って具体的にどうするんだよ?何か用意がいるのか?」
「なんや!金のこと気にしとんのか?成功報酬でええっちゅうねん!ウチは中小企業でスポンサーする余裕なんかあらへんけどな、関西大会で優勝したら、そのときに分け前くれたらそれで十分や。」
ユイの顔は真剣そのものだった。
「…なるほど。面白そうじゃん。」
自然と口元が緩むのを感じた。ユイの熱意が伝わり、胸の奥でくすぶっていた何かが再び燃え上がる。俺たちはまだ戦える。いや、もっと強くなれるんだ。