スペースポートの片隅にある使われていないコンテナ置き場。そこを作業スペースに借りて、俺はロードラストの修理に取りかかった。意気揚々と始めたものの、現実は厳しい。工具の使い方もままならない俺には、失敗の連続だった。溶接ひとつまともにできないし、継ぎ目はガタガタ。作業は遅々として進まない。それでも、このジャンクを動かしてやりたいという想いだけが俺を支えていた。

　けれど、ひとりじゃどうにもならないと悟った俺は、幼馴染のアヤカを頼ることにした。同じスペースポートでバイトしているけど、あいつは俺とは違って高専に通う本格的なメカ好きだ。そんな彼女なら、何か打開策を見つけてくれるはずだと思った。

　アヤカはロードラストを一瞥し、呆れたように眉をひそめた。 「これさ…どう見ても動くわけないじゃん。まあ、どうしてもやりたいなら手伝ってあげてもいいけど？」

　上から目線のその言葉にイラッときたが、助かったのも事実だった。

　その日から俺たち二人の作業が始まった。放課後やバイトの隙間を見つけては集まり、ロードラストの復活に向けて没頭する日々。最初は失敗ばかりだった俺の溶接も少しずつマシになっていった。火花が散る瞬間、アヤカの茶髪のショートが一瞬きらめく。ロードラストが形を取り戻していくたび、胸の奥から湧き上がる高揚感を抑えきれなかった。

　気づけば、あの春休みの頃から三カ月が過ぎていた。季節はすっかり夏。ついにロードラストを初めて起動させる日がやってきた。テストの場所に選んだのは、誰もいない砂浜。もし暴走したら、最悪の場合、海に沈めればいい。それが俺たちの結論だった。

　アヤカがトレーラーを運転し、ロードラストを砂浜に運び込む。

「ほんと、助かったわ。俺一人じゃ絶対無理だった。」

「でしょ？あんたみたいなヘタレには、私みたいなのが必要なのよ。」

　ムカつく言い方だが、否定はできない。俺はハシゴをかけ、ロードラストの操縦席へ滑り込んだ。震える手をスイッチにかけ、祈るような気持ちで押し込むと、「ブーン…」という低い振動が機体全体を伝い始めた。ロードラストが、目を覚まそうとしている。