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第225話 自分で解決

 フードコートにて。

 ダメ元で行ってみたところ、なんと数席分は空きが残っていた。

「試しに行ってよかったじゃん」

 との安達の談とともにさっさと席を確保し、まずは話に入る前に個々で料理を注文することにした。


 少しの時間の後、自分の注文した料理をテーブルに運び終えて同じく料理を取りに行った安達を待っていた。

「お待たせー。あ、ラーメンにしたんだね」

「ああ」

 安達がトレイを両手に持って現れた。

 トレイの上にはスパゲティとサラダがセットになって置かれていた。両方麺類とは妙な偶然だな。


「いただきまーす」

 と安達は麺をフォークで巻き取る。

 対する俺は箸で麺を引っ掴んでズルズルとすする。

「そっち食べるの楽そうだね」

「まあな」

「私もラーメンにすればよかったかなー」

「追加で頼めばいいんじゃないか」

「全然意味ないよ。あとパスタの後でラーメン食べられるほど大食いじゃないし」

「え⁉」

「その驚きがどういうことなのか問い質したいけど、その前にこれいい?」

 安達が掌を上げてこちらに見せてくる。あれ、ジャンケンかな。でも全く違う気するな。一瞬安達の手がパーの形に見えたけどよくよく注目するとビンタするときの手の形って表現した方がしっくり来るな。

 嫌な予感がしてきたからとりあえず話題を変えることにしよっと。


「それより、さっき話したいことあるとか言ってなかったか」

「あ、うん……」

 安達が手を引っ込めて急に大人しくなる。よかった、なぜかわからんが危機が去った気配がする。

 さっきもこんな調子で消極的だったが、一体何を話したいんだろうか。

「そう……だね……リ……」

「リ……何だ? リヴァプールの件か?」

「違う」

「あー、リンゴか? そのままかじると歯茎から血が出るとかか」

「そうじゃない」

「じゃあ何だ。もう心当たりなんて全くないぞ」

「むしろ何でそれらが心当たりとして出てきたのさ……」

 何でって言われても出てきたもんは仕方ないじゃないか。


「リンちゃんとサッちゃんのことなんだけど……」

 改めて安達からそんな話が出てきた。

「アイツらがどうかしたのか?」

「それが……」

 安達はそのまま続く言葉をなくしたように黙った。

 目をあっちこっちに泳がしながら顔を下に傾ける姿からどう説明すべきか考えているように見えたが、俺は安達がなぜいきなり春野と日高の話題を切り出したのかよくわからなかった。


「……うん、やっぱいいや」

「へ?」

 おいおい、どうしたんだ。

「いや何のことかサッパリ読めないぞ」

「ゴメン、黒山君。自分で解決するから、さっき言ったことはとりあえず忘れて」

 いや何を?

 そんなこと言われても全く理解が追い付かなないぞ。

 まあ本人が勝手に満足してるようならそれでいいか。

 変に掘り下げて面倒なことに巻き込まれたくないのだから、様子見が一番だ。


「ところで黒山君」

「ん?」

「パスタ一口欲しい?」

 安達が綺麗に巻き取ったスパゲティを口に入れるでもなく、皿の上で止めている。

「いや別に」

 あんまり自分からスパゲティを食うことはない。啜れないのは俺にとって食いづらい。

「アハハ、葵ちゃんのときと一緒だ」

 ん、どういうことだ?

 と思うのも一瞬で、すぐに先日のお見舞いで葵がお粥を食べさせようとしたことに照らし合わせているのだとわかった。


「カップルでもそんなマネするのって珍しいんじゃないか」

 ラブコメの世界ではあまりにもありふれたシーンだが、現実世界の恋人同士でそんな露骨なイチャイチャぶりを人目も気にせず繰り広げることなんてあるんだろうか。今の御時世なら写真を取られてネットでネタにされそう。

 春野との植物園? あんなの日高悪いお友達に吹き込まれただけだろ。


「まーそうだろね」

 安達が皿の上に置いたフォークを口へ運び、巻き取っていたスパゲティを咀嚼した。

「特に黒山君がそういうマネするの想像できないな」

「ほう」

 よくわかったな。繰り返すが植物園でのことなんてカップルじゃないんだからノーカンだノーカン。



 飯を食べ終わり、フードコートを出たところ。

「いやー、次どこ行こっか?」

「え?」

 いやお前、こっから帰るんじゃないの?

「話は終わったんだろ。ならもう用事は終わったんじゃないのか」

「話の他に黒山君と久しぶりに遊ぼうって言ったでしょ」

 あー。


「それはまた今度な」

「信用できない言葉の典型じゃん」

「何日とか決めれば文句ないだろ」

「その日を狙って何か変な用事とか仮病とか使いそうだよね」

「はは、何をバカな。そんなことしてもどうせお前らは家に来るだろ」

 今日まさにそれをやったところだろ。

「その日に限って遠出とか黒山君ならやりそうなんだけど」

 う。

「そんな交通費出せるほど俺は余裕ないぞ」

「そー? まあ黒山君は健脚だろうからなー」

 両手を背中に組みながら軽快に歩く安達。その姿が妙にサマになっていた。


「とりあえず、近くのゲームコーナー行こ」

「え、結局まだ遊ぶの?」

「そりゃそーだよ!」

 何だろうこのコ、こんなに体力あるタイプだったかしら。


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