安達がシャワーを浴びて間もなく俺達は家を出て、電車に乗り、アルコことショッピングセンターに着いた。
「人多いね」
「案の定な」
せっかく人が忠告したのに聞きやしないんだもん、嫌になっちゃう。
大方の予想通り、ショッピングセンターは前回来たときよりも人口密度が高く、時折人の渋滞が発生していた。
時間も時間だからか食べ物屋、とりわけアイスクリームを出している店は長蛇の列を成し、今から並ぶと20~30分は待たされるんじゃないかという勢いだった。
「よし、帰るか」
「帰らないよ?」
お、安達が笑顔なのに声にしっかり圧力が掛かってる。こんな安達見るの何か懐かしいな。
「そうは言ったってどこ回るんだ? これじゃどこも窮屈だぞ」
「うーん……」
その場で立ち止まり腕を組む安達。帰らないとか言っておいてどこ行くか決めてないとかそれはちょっと無責任じゃないですかね。
「おい、こんな往来で止まるな。通行する人に迷惑だろ」
「あ、ゴメン」
今も人が行き交う道の真ん中で突っ立ったままの安達を、人の流れに乗りつつ隅の方へ誘導する。ああ、少し落ち着く。何なら俺は今日この隅の方でスマホの中のマンガを読むだけでいいと思う。
「なあ、今日はもうこの隅で涼んでかないか。スマホ見れば結構な時間潰れるぞ」
「わざわざここ来てやることがそれってどうなの」
「そうは言ってもお前だって特にやること決めてないんだろ」
「いやあるよ。あるにはあるんだけど……」
おい何で急に歯切れ悪くなるんだ。
「あるならさっさと済ませようぜ。それとも俺が関わっちゃマズいことなのか」
それなら大喜びで俺だけ失礼しますけど。
「そういうのじゃなくって……例えば、落ち着いて話せる場所があればと思うんだけど」
ん?
「話せる場所? 俺との話がメインなのか?」
「まあ……」
「それなら俺の家でさっさと済ませりゃよかったのでは? いやそれ以前にスマホの通話で済んでただろ」
「話だけならそれでもよかったんだけど、黒山君と最近そんな遊んでないなー、て思ってたからさ」
そうだったっけ? つい先日でもお前見舞いに来たよな。
「まあ話だけなら、ここでもいいと思うぞ」
今俺達がいる道の片隅は比較的人が寄らず、立ち止まったままでも通行をさほど邪魔するものではない。
立ち話するには特に支障もない。
「できれば座りたいかな」
「わがまま言うな。今はどこのベンチも人で埋まってるぞ」
「いやー、探せばあるかもよ?」
「それで徒労に終わってムダに体力消耗するリスクは考えないのか?」
「大丈夫じゃない?」
安達さん、何スかそのポジティブっぷり。
「とにかく座れる場所探そうよ。ほら、いい運動になるって」
「別に運動不足に悩んでないが」
「じゃ、行こ!」
「もしもし安達さん?」
こんな風に俺の話をよそに俺を巻き込んで行動する安達も懐かしい気分になった。この子他の友達に対してはここまで押し強くないんだけどね。おっと、加賀見には結構厳しく当たってたか。いいぞもっとやれ。
ショッピングセンターを見て回ること数分。
「やっぱどこも埋まってるね」
「案の定な」
今日で2回目のセリフをこぼす。
「地べたでいいならどこでも座れるけどな」
「絶対ヤダ」
「家具のコーナーにある椅子とか」
「自由に座ってお話ししていい場所ではないと思うよ、決して」
「そうだ。ショッピングカートを横に倒せば座るのにちょうどいいんじゃないか?」
「警察呼ばれたいの?」
おや、安達の態度が見る見る冷たくなっていく。暑い時期にはピッタリでいいですね。
「じゃあ何ならいいんだ。アレもコレも嫌だなんてワガママばっかじゃ何も決まらないぞ」
「非常識なことにツッコむのってワガママの範疇なのかな」
「他に座れる場所なんて今のところ見つかってないだろ」
「それはそうなんだけどさあ……」
安達がまだ諦めず周辺をキョロキョロしている。
「ならお前の家でも行くか?」
もういっそそれでもいい気がしてきた。
俺の家はあまり気が進まないが、女子四人とともに行くことの多い安達家なら別に問題ない。
「そうしよっかな……」
安達もさすがに疲れてきたのか選択肢として受け入れるようだ。
そこに安達が一つアイデアを出してきた。
「そうだ、フードコートとかどう?」
「それこそ混んでるだろ」
今昼時だぞ。
「あそこ席多いしまだ空いてる席あると思うよ」
「嫌な予感しかしないな」
フラグというやつが立ってる気がしてならない。楽観的なこと言ってたら得てして期待を裏切られるパターンみたいな。
「行くだけ行こ。それでもダメなら諦めるよ」
ホントだろうな。
「そう言っといてやっぱ諦めないなんてベタな展開ゴメンだぞ」
「アハハ、私がそんなことしたことある?」
これといった記憶はないがお前なら充分しそうだよ。
あの加賀見の親友だしな。