◇◆ Liam ◆◇
今まで、ロンと将来の話をするのは、辛かった。
将来の話をするのは……将来の夢を聞くのは可哀そうだと、そう思っていた。
ロンには使命があるのだと。18までしか、生きられないと……叶わない、夢なのだと…………、それが、現実なのだと。悲観的になる私がいた。
……私が諦めてどうする
《マリア》であったとしても、刻印がタイムリミットだったとしても、ロンならば、叶えられるんじゃないかと……もっと、希望をもってもいいんじゃないかと、そう思った。
父の愛。《マリア》がしたこと。
目の前にいる、息子の思い。
私はロンの優しさに救われたのに
……それなのに私は、目に見えるものしか信じてこなかったのかもしれない。
感情を排除した現実的な思考しかできないのは、AIと一緒。
目には見えない現実があるのだと
そこに、想いを賭けても良いのだと。
私は……ロンに救われたあの日から、ちゃんと、人間なのだと。
……
私はロンを、神の審判による義務だけで育ててきたわけじゃない。
ロンを、心から愛している。
息子として、人として、何よりも大切なものとして。これはあの子が教えてくれた、紛れもない、感情だ。
心は、もうとっくに生き返っていたはずなのに。
ロンの優しさに涙したのは。
辛いと思うのは、愛おしいと思うのは、そこに感情があるからだ。
それなのに、それを表せずにいたのは……きっと、私の心の問題だった。
前を、向かなくては。
………
……未来を……あの子の将来を願えたら、自然と、笑みが零れていた
あの子が笑っている未来
全てを包み込む、マリアのような温かいあの子の優しさが、ずっと先まで続く未来
そんな未来こそ、現実にしてみせようじゃないか
…… 考えろ、まだ時間は、ある。
絶対に、希望はある。あの子が生きる未来は。私がやらなくてはいけないことは。
どんな小さな糸口からでも、この現実を、タイムリミットを、打破してやる。
……Ave Maria
貴方の未来に、たくさんの希望と、祝福を。