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ep.6-12 Espoir 《希望》

◇◆ Liam ◆◇


今まで、ロンと将来の話をするのは、辛かった。

将来の話をするのは……将来の夢を聞くのは可哀そうだと、そう思っていた。

ロンには使命があるのだと。18までしか、生きられないと……叶わない、夢なのだと…………、それが、現実なのだと。悲観的になる私がいた。



……私が諦めてどうする



《マリア》であったとしても、刻印がタイムリミットだったとしても、ロンならば、叶えられるんじゃないかと……もっと、希望をもってもいいんじゃないかと、そう思った。



父の愛。《マリア》がしたこと。

目の前にいる、息子の思い。



私はロンの優しさに救われたのに



……それなのに私は、目に見えるものしか信じてこなかったのかもしれない。

感情を排除した現実的な思考しかできないのは、AIと一緒。

目には見えない現実があるのだと

そこに、想いを賭けても良いのだと。



私は……ロンに救われたあの日から、ちゃんと、人間なのだと。



……



私はロンを、神の審判による義務だけで育ててきたわけじゃない。

ロンを、心から愛している。

息子として、人として、何よりも大切なものとして。これはあの子が教えてくれた、紛れもない、感情だ。



心は、もうとっくに生き返っていたはずなのに。

ロンの優しさに涙したのは。

辛いと思うのは、愛おしいと思うのは、そこに感情があるからだ。

それなのに、それを表せずにいたのは……きっと、私の心の問題だった。

前を、向かなくては。



………


……未来を……あの子の将来を願えたら、自然と、笑みが零れていた



あの子が笑っている未来

全てを包み込む、マリアのような温かいあの子の優しさが、ずっと先まで続く未来


そんな未来こそ、現実にしてみせようじゃないか



…… 考えろ、まだ時間は、ある。



絶対に、希望はある。あの子が生きる未来は。私がやらなくてはいけないことは。

どんな小さな糸口からでも、この現実を、タイムリミットを、打破してやる。



……Ave Maria

貴方の未来に、たくさんの希望と、祝福を。











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