◇◆ Gaël ◆◇
大学の別棟があんなことになってしまったので、レミ先生と別れた後俺は避難誘導され、そのまま大学を後にした。
本当は大聖堂へ行きたかったんだけど、テロの可能性もあって危険だから直帰するように、とのことだった。
ちぇ、ノアとも話をしたかったのにさ。
だけど大学から寮へ帰ってポストを見て驚いた。中にはなんと、フレデリックからの手紙が入っていたんだ!
さっきレミ先生もフレデリックを見たって言ってたし、なんだよお前……生きてたんじゃないか……
今、どこにいてなにしてるんだよ……なんで、突然いなくなって……連絡くらいよこせよ……って思ったけど、この手紙がその連絡なのか、と思ったりした。
真っ白な封筒に書かれたフレデリックの直筆を見て、じーんとしてしまった。
天に召されたのは、誤報だったんだ……
フレデリックからの手紙。破けないように丁寧に封を切る。手紙を開ける手が汗ばむ。
封を開けて出てきたのは、2枚の手紙だった。
安堵したのも束の間、手紙を読んで俺は真実を知ることとなる。
「……なんだよ……なんだよこれ……嘘……え……っ、どうしよう……」
その手紙に書かれた内容に驚きを隠せない。
……狭い学生寮に一人暮らしだから隠す相手なんかいないけど。
誰か……誰か、相談できる人……
真っ先に浮かんだのが、先ほどフレデリックについて話をしたレミ先生だった。
「れ、れみ、れみ先生……っ」
俺は慌てた気持ちが落ち着かないままに先生に連絡を入れたら、その日の夜遅くに返事が来た。あれからずっと仕事だったらしい。
お疲れ様ですよ……先生……
そうして翌日の早朝、会う約束を取り付けた。
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- 冥界 -
◇◆ Frédéric ◆◇
ヘクター様……ヘクター様こそ、ここ《冥界》を支配する神だ。
ヘクター様へ直接謁見する機会はないから、いつも伝令してくれるのはジルさんだ。現界では《共同魔法研究所》の室長で有名だが、彼女は普段は冥界にいてヘクター様との伝令役をしている。
「……ご苦労。エリックくん、初めての任務はどうだった」
「……」
「おや……ずいぶん嫌われてしまったようだな」
エリックとジルさんの間で何があったのかは知らないが、エリックは何も言わずに俺の後ろに隠れてしまった。
俺たちの任務。マティスの魂を断罪し、冥界へ連れ去ること。あとはそれをジルさんに引き渡したら俺たちの仕事は終わり。そこから先はどうなるのか、詳しいことは知らされていないがここは冥界……待ち受けるのは永遠の地獄だ。
……。
この先を思うと少しだけ、気の毒な気もしてきた。
いや、だけど気を強く持たなくては……悪いやつなんか、いらないと。
これで、よかったと。リラとリスは、守られた。俺はこの先 《悪魔》として生きることを決めたから、もう元には戻れない。
どうか、彼女たちが幸せに過ごせますように。
それから、俺は先ほど現界で一人の男性と
「ジルさん、聞きたいことがあるんですが、現界に俺たち《冥界魔術師》が見える人間って死者以外にもいるんですか?」
「……何かあったか」
「先ほど現界へ行ったときに、一人の非魔術師と目が合ったんです。たまたまこちらを眺めてたというより、確実に俺たちを見ていたような、そんな感じがして」
「相手はどんな人物だった」
「こげ茶の髪にヘーゼル色の瞳をしていました。白衣を着ていたので医療者かと。N大学病院の」
「……」
ジルさんはそのまま黙ってしまった。話していいのか迷っている様子だった。
……だけど少し間があって、ジルさんは話をしてくれた。
「おそらくそれはレミ・コストという医者だろう。彼は、
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