◇◆ Ron ◆◇
「……お父さん…」
いっぱい、いっぱい言いたいことはあったけど、声が震えてうまくしゃべれない。
……お父さんは、感情は分かりにくいけど、凄く優しいんだ
それは言葉の端々からも、行動からも、分かる
知らないことを知ることは怖いこともあるけれど話してくれて、嬉しかった。
ずっと、お父さんと、お父さんの約束に、僕は守られていたんだ
淡々としているけれど、緊張していたのが伝わった。
それだけ、僕を大事に、守ってきてくれてたんだね……
僕は、先生がお父さんでよかったと、心から思う。
たとえ血の繋がりがなかったとしても
僕の、とてもとても、大切な人
「……お父さん、ありがとう」
僕は涙を押し込もうと、顔をごしごしと拭いてから「もう大丈夫」を装った言葉を探す
「お父さんの……朝ごはん、冷めちゃった」
「大丈夫。もうお昼だからロンの分も作って一緒に食べようか」
そんな何気ない会話に、優しさを感じながら
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◇◆ Liam ◆◇
8年前
保護された当時の私は、赤子と離されてはいけないと、誰もいない早朝に赤子を連れて帰った。
赤子には、私の尊敬するケヴィン先生のモチーフとされる《ケイロン》様から名前を頂いて「ロン」と名付けた。
……私に自分の名前を思い出させてくれたのも、先生だった。
だが全身の傷で、毎日眠れないほどの激痛が私を襲った。
目を閉じると、激痛と共に3ヶ月の拷問の日々が思い起こされては魘され、私は眠るのが怖かった。
気絶したように眠っては、痛みとロンの泣き声で起きる……その繰り返し
神による拷問の跡は、一般の医療技術でも自分の特殊魔法でも、どうすることもできなかった。
この状況のまま、この子を育てていけるのか絶望に近い不安が過ぎった……
だが、やらなくては……ロンの特殊魔法が発動したのはその時だった。
まだ新生児だったはずなのに、ロンは私の傷を全て癒した。それが、『
私の全ての傷が癒えると、ロンは笑ったように見えた。……「新生児微笑」と呼ばれるものかもしれないが、これは、素直にこの子の優しさなのだと感じた。
……気がついたら、涙が私の頬を伝っていた
感情など、死んだはずだったのに
ずっと、どこにいても孤独だった私へのこの子の無償の愛が、たまらなく、温かかった。
この時のことを忘れはしない
私はこの子を一生かけて育て、守り抜くと堅く誓った
"Ave Maria"
この子に、光を。
私の生きる希望で、何よりも大切なもの
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