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ep.3-3 Relation 《関係》

◇◆ Ronロン ◆◇


リアム先生がこの前言ってた特殊魔法の元となる神様……ギリシャ神話に出てくる《アスクレピオス》と《パナケイア》は、親子なんだ。

だけど僕たちの間には血のつながりは、ない



……8年前の大災害で、僕は両親を失ったと聞く。

僕みたいな子供は少なくない。そんな子の多くは、この教会で過ごしている。


でも、身寄りのなかった僕を育ててくれたのは、教会のシスターさんたちと、リアム先生だった。先生は仕事以外の時間の殆どを、僕に費やしてくれていたらしい。

僕は本当のお父さんを見たことがないから、お父さんって言ったらリアム先生の方かもしれない。



ノアやエリックと出会ったのも、ここでだった。

ここへ来るのはみんな様々な理由があるけど、ここで出会った子たちは少しずつ里親さんの元で暮らしたり、新しい生活を始めている子もいる。




僕は、今も昔も、ずっと先生が大好きだ

先生がいてくれると、凄く心強くて、ほっとするんだ。




幼稚園の時にぽろっと先生の話をしたら、ここのお兄ちゃんに「でも本当のお父さんじゃない」って言われて、むきになって怒った。

そうして、けんかになった。……ちびだったから投げ飛ばされて怪我をしたけど、そんなの関係なかった。

「おとうさんだもん!」って、しまいには泣きわめいてたけど、僕が、勝った。

今思えばその子も身寄りがなかったから、うらやましかったのかもしれない。



だけど喧嘩したのをここの先生がリアム先生に連絡しちゃったから、リアム先生に「喧嘩はだめ」って言われた。そうして、「外では先生と呼んでいい」って……そう言った。


僕は「お父さん」って呼びたかったけど、「わかった」って、言っちゃったんだ


……


でもね、先生はまだ26歳なんだ。僕はもうすぐ8歳になるから、僕が生まれた時って先生は……

……どんな経緯で先生が僕の面倒を見てくれるようになったのかは分からない。

だけど僕と先生の関係は、特殊魔法でつながっている以上に何かあると思うんだ。



8年前にあったことを、僕はあまりよく知らない。


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◇◆ Liamリアム ◆◇


今日は久しぶりに非番だった。……もう大晦日だ。

極端な魔術師専門の医師不足で病院に泊まり込みの日が多いが、今日は帰ってもいいらしい。


……今日は、特別な日でもある。


昨夜から続く急患のオペが朝方終わり、カルテをまとめて帰って来たあと2時間ほど仮眠を取ったところだった。まだ少し頭がぼんやりしている。

もう昼近くだが、遅い朝食を摂る。砂糖とミルクをたっぷり入れたカフェオレとバケットを目の前に、考え事をしていた。


その時「あ……おとうさん、おはよう!」と、ロンがやって来た。


「おはよう、ロン。」

「あのね、お昼ご飯食べたらノアが遊びに来るって!いいかなぁ」

「それは良いな。学校は楽しいか」

「うん、楽しいよ。……ねぇお父さん」


ロンは遠慮がちに話かける。


「なんだ」

「この間の話の続き、聞かせて、ほしくて」

「そうだな……私も、話をしたいと思っていた。特殊魔法とマリアの話。それから、8年前に起きた話も、一緒に。」

「……8年前」


8年前の話。

……この話は、かなり複雑な話だ。


「……話を、しよう」


そう言って私は、仕事用の連絡回線を全てオフにした。




……この話は誰にもしたことがない。

問われても、全て黙秘してきたことだ。


どこから話そうか……


少し緊張したような表情のロンを見る。

私はあの日のことを後悔したことなど、一度もない。



話す決意を固める



「まずは先日の続きだ。特殊魔法にはギリシャ神話の神の力が隠されていると話したが、ロンの《パナケイア》と私の《アスクレピオス》は、親子だ。だがロン……私とお前に、血のつながりは、ない。」


わかっていた、というような、だけど、悲しそうな顔をした。

私は続ける。


「血のつながりはなくても、お前は大切な子だよ……安心しなさい。だが、特殊魔法でつながりがある理由……それはすべて8年前の出来事にさかのぼる。

 8年前の大災害で、あの町での生き残りは全部で7人いる。そのうち5人は翌日保護されたが、が、ロン、赤子だったお前だ。そしてその時、私はお前と一緒にいた」


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