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ep.2-12 ◇ Médecin(non-magicien)《医者(非魔術師)》

- N大学付属病院 -

― 非魔術師サイド


◇◆ Rémiレミ ◆◇


患者は「OlivieオリヴィエGuyotギヨ」。



突然の頭痛から、ろれつがうまく回らなくなり、めまいと吐き気の症状、複視の出現、平衡感覚障害が出現し救急車にて緊急搬送された。


通常これらの症状だと脳卒中等の脳疾患が考えられる。……が、CTを撮るも、何も異常が見当たらなかった。



だが、この人は魔術師。

これが魔術師特有の《脳幹部魔導基部壊死》なのかもしれない。医師になって4年目だが、実際には初めて見る。



この疾患は、魔術師特有の器官である《魔導基部》という組織が壊死し、そこからの魔力が漏れて腫瘍を形成することが原因とされているが、我々非魔術師には魔力の形成する腫瘍らしいものは目に見えない。


いっそ魔力が非魔術師にも可視化できるものがあれば良いのに……。


時間がない。セオリーは頭に入っている。

脳外科医であり魔術師に関する研究を専門としているエルヴェ・マティス教授に指示を仰ぐと、緊急減圧開頭が適応だと言われた。

手順は、通常と変わらない。



早急に準備をし手術室へ入る。マティス先生が助手として入ってくれるらしい。



「患者はオリヴィエ・ギヨ、35歳、女性、魔術師。執刀レミ・コスト、助手エルヴェ・マティス先生。《脳幹部魔導基部壊死》疑いのため、緊急減圧開頭術を行う。」



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◇◆ Hervéエルヴェ ◆◇


魔術師の脳幹には、非魔術師にはない【魔導基部】と呼ばれる器官があることは、医師の間では当然基礎知識として知っている話だ。

これが、魔法を司っている部分。

しかしそれに関してはわからないことが多すぎる。



「……レミ先生、これだ」

「これが【魔導基部】ですか」

「現物を見るのは初めてか?ここが壊死して魔力が漏出することで脳幹出血や脳幹圧迫と同様の症状を呈するらしい。しかし脳幹出血とは異なり、除圧することで症状は軽快する。厳密に言えば魔導基部は脳幹から少し離れたところにあるからだろうな。不思議なものだ…魔導基部に関しては謎が多い。ドップラー。このあたりだな……メッツェンと滅菌生食瓶。」


見えないが、ここに必ずがあるはずだ


「……何をしているのですか」

「我々には漏出した魔力の塊は見えないし触れない……が、確実にここにある。ここだ……ここを境に、血流が途切れているのがわかる」

「あ……ほんとですね……」

「魔導基部は壊死部もすべて保存が基本だ。だが漏出した魔力はとりわけ特記がない。魔力の塊をどうにかして可視化したい……そうすれば、我々非魔術師が魔術師を救うことも可能になるかもしれない。だからこうして無駄かもしれないがサンプリングしている。……これでいい。あとは出血を確認したら閉頭せずにICUへ。術後経過観察を怠らないように。」



この魔力が可視化できれば……我々にももっとできることが増えるかもしれない。さらには魔導基部の解明を……



魔導基部には多くの秘密が隠されている。私は【魔導基部】についてずっと研究を続けてきた。

だがあと少しで、私は神の領域を見るかもしれない。


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