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ep.2-11 ◇ Préoccupation 《懸念》

◇◆ Liam ◆◇


ロンを家に送ったあと、私はN大学付属病院へ向かった。


ロンとはもう少しゆっくり話したかったが、急患は《脳幹部魔導基部壊死》疑いの魔術師だ。この疾患は時間経過とともに予後が悪くなる。

……また、きちんと話をしなくては……



この疾患はヘクター様……冥界を支配する神の強大な魔力にあてられることが原因で発症することが多いため、時期を同じくして一度に多くの者が罹患する。……そのため魔術師の医師不足は深刻な問題でもある。

せめて誰にでも治療できる疾患ならよいのだが、魔力は非魔術師には見えない上に魔導基部は特殊な部位故に仕方がない。



魔術師と、非魔術師

この二者は、とりわけ対立関係にあるわけではない。



だが我々魔術師は、数が少ない割に特別な保護はなにもない。

魔術師は非魔術師に攻撃できない決まりがあるが、その逆の決まりはない。



だから魔術師は小さな頃からこう教えられて育つ

『非魔術師には気をつけろ』と



その教育方針が間違っているとは思わない。

だが、この差異はなんなのだろう。



勿論、悪い者ばかりではないことは分かっている。

私も非魔術師に助けてもらったことがあるし感謝もしている。



だが、最近少し気になっていることもある。

非魔術師の間で行われていると噂されている『魔術師の人体実験』……詳しいことはわからないが、最近『魔術師の失踪』が増えているのも、なんだか薄気味悪い気がする。

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